マキ科 Podocarpaceae は常緑高木または低木。葉は偏平な線形~卵形、ときに鱗片状、らせん状に互生ときに対生。雌雄異株。雄花は多数の雄しべが花軸にらせん状につきます。雌花は花托の先に1個の胚珠をつけます。多くは雌花の鱗片が肉質に肥厚して種子を包み、種子は核果状になります。熱帯から暖帯にかけて19属約180種が知られています。日本には2属3種が分布しています。
本記事ではマキ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
No.0032 ラカンマキ Podocarpus macrophyllus var. macrophyllus
イヌマキの園芸品種で、葉がイヌマキの半分くらいの長さで、細くやや上向きにつき、円錐状の雄花は短く、イヌマキほど目立ちません。樹姿がイヌマキは荒々しさがあり暴れ気味になるのに対し、ラカンマキはまとまりがあるため庭園に植えられます。自生地は不明で、中国から渡来したとされていますが、中国樹木志編纂委員会編の『中国樹木志1』では原産地が日本になっています。古い時代の日本庭園には古木が残っており、日本で庭木として選別されものが広まったと考えられています。
No.0033 イヌマキ Podocarpus macrophyllus ver. spontaneus
常緑高木。別名クサマキ。枝葉は水平かやや下垂します。葉は広線形で全縁、長さ10~20cm、幅7~10mm、やや革質。花は5~6月。雄花は多数の雄しべが集まって円柱状になり、数個が葉腋に束生し、葉より上に突き出るものが多いです。雌花は前年枝の葉腋に約1cmの花柄をつけて単生します。種子は10月ごろに熟し、肉質に肥厚した白緑色の鱗片に包まれ、直径8~10mm。花托は暗紅色に肥厚し甘みがあって食べられます。本州(関東地方以西の太平洋側)、四国、九州、琉球;台湾、中国に分布。沿海地の丘陵や山地に自生します。公園や個人の庭や生垣などに広く植栽されており、これらから発生したものもあると考えられています。
No.0034 ナギ Nageia nagi
常緑高木。樹皮は平滑で黒褐色~灰褐色、薄く鱗片状に剥がれます。葉は卵形~長楕円状披針形で、長さ4~8cm、幅1~3cm、多数の平行脈があります。花は5~6月。種子は10月に熟し、球形で直径10~15mm、白緑色に肥厚した鱗片に包まれます。本州(和歌山県、山口県)、四国、九州、琉球;台湾に分布。神社に植栽されていることが多く、稀に神社周辺の山林に幼木が見られますが、世代更新はしていないとされています。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726