【種子植物図鑑 #007】マツ科の種類は?写真一覧

種子植物図鑑
Pinus thunbergii

マツ科 Pinaceae は常緑ときに落葉の高木または低木。葉は針形または線形。花は単性で雌雄同株。雄花は多数の雄しべがらせん状につきます。雌花はらせん状に並んだ多数の鱗片からなります。鱗片は外側の苞鱗と内側の種鱗が組になり、その基部は合着し、種鱗の向軸側基部に2個の胚珠がつきます。花時には苞鱗が大きく、種鱗は小さいです。花後、種子の成熟とともに種鱗は大きくなり、俗に「松ぼっくり」と呼ばれる球果となります。苞鱗は花後に発達せず、種鱗の外側の付属物のようになります。種子は種鱗の向軸側に2個ずつつき、多くは片側に翼があります。主として北半球に11属225種が知られています。日本には6属約23種が自生しています。

本記事ではマツ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

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No.0004 エゾマツ Picea jezoensis var. jezoensis

別名クロエゾマツ。樹皮は灰色を帯びた黒褐色で、不規則な鱗片状にはがれます。枝がやや垂れ下がる。若い枝は明るい褐色でやや光沢があります。葉は長さ10~20mm、球果は長さ4~8cmの長楕円体。北海道、南千島;サハリン、カムチャッカ、東シベリア、朝鮮、中国東北部に分布。公園などにときに植栽されています。

エゾマツの葉
エゾマツの葉
エゾマツの樹皮
エゾマツの樹皮

No.0005.a ドイツトウヒ Picea abies

別名ヨーロッパトウヒ、オウシュウトウヒ。樹皮は褐色~灰褐色で、不規則な鱗片状にはがれます。葉は長さ20mmほどで、少し弓状に曲がります。球果は長さ10~20cmの円柱状で、熟すと明るい褐色になり目立ちます。ヨーロッパ原産で明治中期に渡来しています。多くの園芸品種があり、公園や個人庭などに広く植栽されています。

ドイツトウヒの葉
ドイツトウヒの葉
ドイツトウヒの樹皮
ドイツトウヒの樹皮

No.0006 ハリモミ Picea torano

別名バラモミ。樹皮は灰褐色~灰黒色で厚い鱗片状にはがれます。若枝は淡黄色~淡黄褐色で無毛。葉は長さ15~25mmでやや湾曲し、横断面は4角形、先端は鋭く尖り触ると痛い。球果は長卵状形で長さ5~10cm、熟すと褐色になります。種鱗は倒卵形で苞鱗はきわめて小さいです。本州(福島県以南)、四国、九州に分布しています。ハリモミのヤニを集めて灯火に使用されたことがあります。

ハリモミの葉
ハリモミの葉
ハリモミの樹皮

No.0009 アカエゾマツ Picea glehnii

別名シンコマツ。樹皮は赤褐色で、不規則な鱗片状にはがれます。若い枝は赤褐色で、細毛を密生しますが、球果をつける枝はほとんど無毛。葉枕は突出します。球果は5~9cmの長楕円体で、熟すと褐色になります。北海道、本州(早池峰山)以北に分布しています。公園などにときに植栽されています。

アカエゾマツの葉
アカエゾマツの葉
アカエゾマツの樹皮
アカエゾマツの樹皮
アカエゾマツの樹形
アカエゾマツの樹形

No.0009.a コロラドトウヒ(グロボーサ) Picea pungens ‘Globosa’

別名プンゲンストウヒ、青トウヒ。緑トウヒ。常緑樹。野生のものは、全長20mを超えて成長、公園や庭園に植えると5~15m程度の大きさに留まります。樹形は円柱-円錐形を基本とし、水平に枝を分枝します。枝が黄褐色、幹は灰色のうろこ状の樹皮で覆われます。葉は長さ3cm程度の針状で、枝に対して全周性~放射状に付き、表面に青い粉上のワックスを伴っています。球果は淡褐色で長さは10cmのものを付けます。原産地はアメリカのコロラド州からワイオミング州一帯のロッキー山脈です。写真は品種 ‘Globosa’。

コロラドトウヒの葉
コロラドトウヒの葉

No.0010 ツガ Tsuga sieboldii

樹皮は灰赤褐色で深く縦裂して不揃いな鱗片状にはがれます。若枝は黄褐色でやや光沢があり無毛。葉は長さ10~20mm。花は4~5月、球果は10月ごろに成熟します。球果には屈曲した柄があり垂れ下がってつきます。種鱗は円形~倒卵形で、長さ幅ともに約1cm。本州(福島県八溝山以西)、四国、九州(屋久島まで);朝鮮(鬱陵島)に分布。沢筋の岩角地や土壌の発達の悪い急傾斜地などに生えます。

ツガの葉
ツガの葉
ツガの樹皮
ツガの樹皮

No.0013 モミ Abies firma

樹皮は黄味を帯びた灰色で、やや小さな鱗片状に剥がれます。若木では葉は先が鋭く2裂し、成木では先はやや凹頭になります。花期は5月。雌花は黄緑色。球果は円柱形で灰色を帯びた緑色~黄褐色。種鱗は扇形で長さ約2cm。苞鱗の先端は尖り、種鱗の合わせ目から長くまっすぐに突き出ます。本州(秋田県・岩手県以南)、四国、九州(屋久島まで)に分布しています。

モミの葉
モミの葉

No.0014 ウラジロモミ Abies homolepis

常緑高木。樹皮は灰色を帯びた褐色でやや粗い鱗片状に剥がれます。葉は下面の気孔帯が白く目立ち、先は鈍頭からやや凹頭になります。花期は5~6月。雌花は赤紫色。球果は円柱形で黒紫色に熟し、長さ7~12cm、幅3~4cm。種鱗は扇形で基部はくさび形、長さ2~2.5cm。苞鱗は種鱗の約半分の長さで、先端は円みがあります。本州(福島県~中部地方・紀伊半島)、四国の標高1,000~2,000mに分布しています。

ウラジロモミの葉上面
ウラジロモミの葉上面
ウラジロモミの葉下面
ウラジロモミの葉下面

No.0022 ヒマラヤスギ Cedrus deodara

別名ヒマラヤシーダ。常緑高木。葉は針形で長さ3~5cm。雄花は長さ3~5cmの長楕円体で、短枝の先端につきます。球果は長さ6~13cmの卵形で、熟すと種鱗が落ち、軸だけが枝に残ります。ヒマラヤ西部からアフガニスタンに分布。各地の学校や公園はもとより個人庭にまで広く植栽されています。日本へは明治の初期に英国人の John Henry Brooke(1826~1902)が横浜へ最初に持ち込んだとされ、彼の墓が横浜市中区山手町の外人墓地にあります。種子は多数できますが発芽率は悪く、逸出は少ないと思われます。

ヒマラヤスギの葉上面
ヒマラヤスギの葉上面
ヒマラヤスギの葉下面
ヒマラヤスギの葉下面
ヒマラヤスギの樹皮
ヒマラヤスギの樹皮
ヒマラヤスギの雄花

No.0022.a レバノンスギ Cedrus libani

常緑大高木。樹高40m。樹皮は灰黒色、縦裂します。枝は水平に出ます。葉は暗緑色、短枝に30~40束生します。種子は三角状卵形。レバノン、シリア、トルコに分布。日本で植栽されます。

レバノンスギの樹形
レバノンスギの樹形
レバノンスギの葉
レバノンスギの葉
レバノンスギの樹皮
レバノンスギの樹皮

No.0023 アカマツ Pinus densiflora

別名メマツ。常緑高木。針状葉は長さ7~10cm、幅約1mm(標本では約0.7mm)。先端は尖るが触ってもさほど痛くありません。花期は4~5月。球果は卵形で長さ4~5cm、翌年秋に成熟します。種鱗はくさび型で先端の露出部は不整形な4~5角形をしており、中央に刺のような短い嘴があります。苞鱗はごく小型で種鱗の基部につきます。北海道(南部)、本州、四国、九州(屋久島まで);朝鮮、中国(東北部)に分布しています。乾燥気味の土地に広く分布しますが海岸地帯にはやや少ないです。尾根の岩角地、渓谷斜面、伐採跡地などに自然生のものが生じますが、尾根上や台地上ではかつて植林されたものが残存していることも多く、本来の自生のものかどうかの判断は難しいです。アカマツ林の減少は著しく、1本まれに数本で生えていることが多いです。また、マツノザイセンチュウによる松枯れも目立つちます。園芸品種に幹の根本近くで株立ち状に枝分かれするタギョウショウ(ウツクシマツ) ‘Umbraculifera’ があり、まれに公園などに植栽されています。

アカマツの葉序
アカマツの葉序
アカマツの葉脈
アカマツの葉脈
アカマツの樹皮
アカマツの樹皮
アカマツの雄花
アカマツの雄花
アカマツの新梢
アカマツの新梢

No.0025 クロマツ Pinus thunbergii

別名オマツ。常緑高木。針状葉は長さ10~15cm、幅1.5~2mm(標本では1~1.5mm)、先端が尖り触ると痛いです。花期は4~5月。球果は卵形で長さ4~6cm、翌年秋に成熟します。種鱗はくさび型で先端の露出部は不整形な5角形をしており、中央に刺のような短い嘴があります。苞鱗は小型で種鱗の基部につきます。本州、四国、九州、琉球(トカラ列島まで);朝鮮(南部)に分布。海岸から内陸部までシイ・カシ帯に広く分布しますが、海岸岩場などの一部を除いて、植栽されたものが多いとされています。かつては台地上や丘陵斜面上部などに植林されましたが、すでに枯れて消失してしまったところが多いです。

クロマツの葉
クロマツの葉
クロマツの樹皮
クロマツの樹皮
クロマツの雄花
クロマツの雄花
クロマツの球果
クロマツの球果

No.0028 ヒメコマツ Pinus parviflora var. parviflora

別名ゴヨウコマツ。常緑高木。樹皮は暗灰色でやや細かな鱗片状に薄くはがれます。針状葉は長さ3~6cmで多少ねじれ白味を帯びます。花期は5月。球果は卵形で長さ5~8cm、翌年秋に成熟します。種鱗はくさび型で数はクロマツなどに比べ少なく先端が尖ります。苞鱗は小型で種鱗の基部につきます。北海道(南部)、本州、四国、九州に分布します。

ヒメコマツの葉
ヒメコマツの葉
ヒメコマツの樹皮
ヒメコマツの樹皮

No.0029 ヤクタネゴヨウ Pinus amamiana

常緑高木。胸高直径2m以上、樹高30m以上。針葉は長さ5~8cm、球果は長さ3~10cm、種子は長さ10~13mmで翼はありません。針葉および球果とも中国や台湾の近縁種より短い。花期は4月中旬~5月中旬であり、種子の散布時期は開花翌年の9月上旬~11月中旬です。屋久島と種子島にのみ自生する。自生地は、屋久島では西部林道沿い、破沙岳周辺および高平岳の3地域が確認されています。種子島では、西之表市から中種子町にいたる島中央部の山林に散在します。現在その生残個体数は、屋久島で2000、種子島で300ほどと推定されています。

ヤクタネゴヨウの葉
ヤクタネゴヨウの樹皮
ヤクタネゴヨウの樹皮

No.0030.a リュウキュウマツ Pinus luchuensis

常緑高木。高さ25m、直径1mになります。樹皮は灰黒色、冬芽は赤褐色。小枝は黄褐色で無毛、光沢あり。葉は短枝に2本束生し、線形で長さ10~20cm、幅1.2mm。葉の断面は半円形で、樹脂道は2~6個、下表皮に接するものと葉肉内のものがあります。果実(毬果)は翌々年の秋に成熟し、卵状円筒形で長さ3.5~6.5cm、幅2~2.5cm。種鱗は長さ1.8cm、種子は長さ4~5mm、翼は8~10mm。土壌の浅い痩せ地でも良く生育します。花期は3~4月。琉球列島(トカラ列島、奄美諸島、沖縄諸島、先島諸島)に分布します。小笠原諸島に緑化のため、および薪炭材として導入されています。

リュウキュウマツの樹形
リュウキュウマツの樹形

No.0031 ハイマツ Pinus pumila

雌雄同株の常緑低木。幹はよく分枝して横にはうように伸び、ところどころに根を下ろしながら風下に生長します。長さ8~15mに達し、高さは0.3~1m、風の弱いところでは立ち上がり、高さ2~3mになります。生長はきわめて遅く、幹が直径10cmになるのに百年かかると言われます。若枝には赤褐色の短毛が密生します。古い樹皮は黒褐色で薄く剥がれ落ちます。葉は長さ3~9cm、直径0.5~1mmの3稜のある針形で、短枝に5本が1束になって束生します。まばらな微鋸歯があり、側面に白い気孔帯があります。上面は深緑色、下面は帯白緑色。花は6~7月に開花します。果実は長さ3~5cmの卵状楕円形の球果で、初め緑色、翌年の夏~秋に成熟して暗緑色~褐色になって落ちます。熟しても種鱗は開きません。種鱗は広卵形で内側に2個のくぼみがあり、2個の黒い種子が並びます。種子は長さ0.8~1.2cmの倒卵形で翼はありません。シベリア東部、カムチャツカ、樺太、中国東北部、朝鮮半島、日本にかけての寒冷地に分布します。高山帯の乾燥した風衝地に群生する。

ハイマツの葉
ハイマツの葉

No.0031.a マケドニアマツ Pinus peuce

常緑高木。樹高は35~45m程度。葉は長さ6~10cm程度の針状で、5個が束生します。花期は4~5月、球果は長さ8~16cm程度の広円錐形で緑色を経て黄褐色に熟します。種子は長さ6~7mm程度で側面に長さ2cm程度の翼を持ちます。バルカン半島(ギリシャ・マケドニア・ブルガリア・アルバニア・モンテネグロ)に分布します。標高1000~2000mの高地の山地に自生します。日本で植栽されます。

マケドニアマツの葉
マケドニアマツの葉
マケドニアマツの樹皮
マケドニアマツの樹皮

引用文献

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

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