本記事では以下の雑誌にて公表した「大阪府堺市におけるクロモンシタバの記録」の報文の下書きを掲載します。
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引用方法:池田健一. 2019. 大阪府堺市におけるクロモンシタバの記録. 誘蛾燈 237: 92. [Ikeda, K. 2019. A record of Ophiusa tirhaca (Cramer) (Nocmidae) in Sakai-city, Osaka Prefecture. Yugato 237: 92.] ISSN: 0387-5695
注目されている北上中の種、クロモンシタバの大阪府38年ぶりの記録を想定して執筆したものです。
微細な表現などに変更が加わっている可能性はありますが、引用文献などは同様です。より正確なものをお求めな場合は雑誌よりご参照ください。
クロモンシタバの国内分布状況
Ophiusa tirhaca (Cramer) クロモンシタバは国内では本州,伊豆諸島御蔵島,小笠原諸島,四国,九州,吐噶喇列島,沖縄,石垣島で分布が報告されているが,本土においての記録は散発的で,偶産とされている種である(岸田ら, 2011).3月,8-11月に記録があり年多数回発生する.幼虫の食草は岸田ら(2011)には未知とあるが,坪田(2016)はバンジロウとヌルデとしている.関西では近年,兵庫県で複数記録があるものの(松尾,2010;高尾,2010;坪田,2016;松田,2017),大阪府では大阪市内での古い記録が見られる程度である(園田,1982).
大阪府での筆者の記録
筆者は2016年11月11日10時半頃に大阪府堺市東区白鷺町白鷺駅付近のマンションの廊下で,クロモンシタバを撮影したのでここに報告する.性別は後翅の黒紋から判別できるが(園田,1982;坪田,2016),採集されなかったため不明である.マンションは廊下が夜間点灯されており,この光に誘引されたものと思われる.白鷺駅付近は住宅地となっており,緑地は白鷺公園や大阪府立大学中百舌鳥キャンパスと車道沿いの植樹帯があるのみである.坪田(2016)は兵庫県神崎郡市川町での幼虫の食草の有無を検討しており,ヌルデの自生を確認している.本記録の白鷺駅付近では,バンジロウについては筆者は確認していないが,白鷺駅付近の車道沿いの植樹帯で,鳥に種子散布された後,発芽し成長したと思われるヌルデの若い個体は確認している.佐藤(2004)は本種が台風や偏西風に乗って飛来する可能性を指摘しているが,坪田(2016)は綺麗な雌雄2個体を確認したことから本種が市川町付近で発生したものと推察している.本個体が,飛来したものか,堺市内で発生したものかの推察は難しい.近年の兵庫県内での多数の報告は,本報告と関連する可能性もある.
引用文献
岸田泰則・柳田康浩・清野昭夫・石塚勝己,2011.ヤガ科シタバガ亜科.岸田泰則(編),日本産蛾類標準図鑑 3: 253. 学研教育出版.東京.
松田真平,2017. 兵庫県猪名川町でクロモンシタバを採集.大昆Crude 61: 18.
松尾隆人,2010.段ヶ峰における南方系蛾2種の記録.きべりはむし 33(1): 17. https://www.konchukan.net/pdf/kiberihamushi/Vol33_1/kiberihamushi_33_1_17.pdf
佐藤友香,2004.福井市でクロモンシタバ(Ophiusa tirhaca)を拾得.福井市自然史博物館研究報告 51: 67. http://www.nature.museum.city.fukui.fukui.jp/shuppan/kenpou/51/51-67-67.pdf
園田光市,1982. クロモンシタバが大阪で見つかる.Nature Study 28 (10): 10. http://www.omnh.net/ns_online/html/v28/28-10_005.html
坪田瑛,2016.兵庫県神崎郡市川町でクロモンシタバを採集.きべりはむし 39 (1): 24-25. https://www.konchukan.net/pdf/kiberihamushi/Vol39_1/kiberihamushi_39_1_24-25.pdf
高尾海星,2010.兵庫県加東市でクロモンシタバを採集.きべりはむし 33 (1): 18. https://www.konchukan.net/pdf/kiberihamushi/Vol33_1/kiberihamushi_33_1_18.pdf