アカメガシワ・オオバベニガシワ・カシワの違いは?似た種類の見分け方を解説!花と果実の構造は?

植物
Mallotus japonicus

アカメガシワとオオバベニガシワはいずれもトウダイグサ科に含まれる落葉樹であり、葉の基部には花外蜜腺があるという点で共通しています。そのため、区別に迷うことがあるかもしれません。また「アカメガシワ」という和名には「カシワ」が入っており、カシワとの関係が気になるかもしれません。しかし、カシワはブナ科の全く異なる種類なので利用方法が同じだったという共通点しかありません。アカメガシワとオオバベニガシワに関しても星状毛の有無を代表に、葉の様々な部分の形や色が異なるので明確に区別できます。花には花弁がなく雄花は白色です。果実は蒴果です。本記事ではアカメガシワとオオバベニガシワの分類・形態について解説していきます。

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アカメガシワ・オオバベニガシワとは?

アカメガシワ(赤芽槲・赤芽柏) Mallotus japonicus は日本の本州(秋田県以南)、四国、九州、琉球;中国に分布し、伐採跡地や崩壊地、林縁などの明るいところに生える落葉高木です(茂木ら,2000;神奈川県植物誌調査会,2018)。

オオバベニガシワ(大葉紅槲・大葉紅柏) Alchornea davidii は中国に分布し、谷、小川や川の斜面、落葉樹林に生える落葉低木です(Wu et al., 2008)。日本では発芽時の若葉が美しいため、庭木や公園樹としてやや稀に栽培され、荒れ地などに稀に野生化し群生します(林,2019)。

いずれもトウダイグサ科に含まれる落葉樹であり、葉の基部には「花外蜜腺」があるという点で共通しています。

花外蜜腺は花とは異なる部分にある蜜を分泌する腺のことで、普通は餌として蜜を分泌し、アリを惹き寄せて、体につく寄生虫(ここでは植食性昆虫)を追い払う役割があります(山尾・波田,2014)。アカメガシワではテントウムシが訪れている様子もよく確認できます。

この他、葉の形も全縁の場合よく似ているので判断に迷う場合があるかもしれません。

アカメガシワとカシワの違いは?

「アカメガシワ」と名前がついているので、「カシワ(柏・槲・檞)」との関係が気になる人がいるかもしれません。

アカメガシワという和名は新芽が赤いことと、カシワの葉と同様に葉の上に食べ物を盛ったり包んだりするのに利用されていたことに由来するとされます。

しかし、アカメガシワとカシワは全く別の種類です。

カシワ Quercus dentata はブナ科コナラ属で上述のようにアカメガシワ科のアカメガシワとは全く異なります。

また、カシワは果実が堅果の一種である「どんぐり」になりますが、アカメガシワの果実はそのようにはなっていません。

その上、カシワは丘陵地から山地ブナ帯といった高標高に好んで生息するので、中々見かける機会が少ないのに対して、アカメガシワは平地で頻繁に見かけることができます。

カシワの葉
カシワの樹皮

アカメガシワとオオバベニガシワの違いは?

アカメガシワとオオバベニガシワの間には多くの違いを確認することができます。

まず、アカメガシワはアカメガシワ属に含まれますが、オオバベニガシワはアミガサギリ属に含まれているので、形態的に大きな違いがあることが予想されるでしょう。

具体的にはアカメガシワでは若枝や葉に星状毛(トリコーム)があるのに対して、オオバベニガシワでは毛はあるものの若枝や葉に星状毛はないという違いがあります。少し分かりにくいですがアカメガシワの葉脈や葉柄の茶色い毛が星状毛に当たります。

なおこのアカメガシワの表面の毛(トリコーム)は植食性昆虫に対する物理的防御形質であると考えられており、葉の下面では更に二次代謝産物を含む腺点と呼ばれるカプセル状の構造物があり、こちらは化学的防御形質として機能していることが知られています(山尾・波田,2014)。

また、アカメガシワでは不分裂葉だけでなく分裂葉(切れ込みのある葉)があるのに対して、オオバベニガシワでは不分裂葉のみで分裂葉はありません。

葉身の基部はアカメガシワではくさび形~切形なのに対して、オオバベニガシワではハート形です。

葉柄はアカメガシワでは赤色ですが、オオバベニガシワでは緑色です。

花外蜜腺はどちらも葉身の基部に1対ありますが、アカメガシワでは全体が赤色で他に特別な構造は見当たりませんが、オオバベニガシワでは全体が緑色で蜜腺の下に線形の付属体が確認できます。

以上で確実に見分けることができるでしょう。

アカメガシワの幼木
アカメガシワの不分裂葉
アカメガシワの分裂葉上面
アカメガシワの分裂葉下面
アカメガシワの葉上面の花外蜜腺
アカメガシワの花外蜜腺に訪れるキイロシリアゲアリ
アカメガシワの雄花序
アカメガシワの雄花
アカメガシワの雌花序
アカメガシワの果実
オオバベニガシワの葉上面
オオバベニガシワの葉下面

花の構造は?

花はトウダイグサ科共通で小型で目立たず、花弁と萼の区別は不明瞭です。

アカメガシワは花期が6〜7月。雌雄異株。枝先に長さ7〜20cmの円錐花序を出します。花には花弁はありません。雄花は苞のわきに数個ずつつき、萼は淡黄色で3〜4裂します。雄しべは多数あり、花糸は長さ約3mm。雌花は苞のわきに1個ずつつき、萼は2〜3裂します。子房は刺状の突起があり、紅色の星状毛と白い腺点に覆われます。花柱は3〜4個で、乳頭状突起が密生します。乳頭状突起ははじめ紅色で、成熟すると黄色になります。

オオバベニガシワは花期が4~5月。雌雄異株。雄花序では葉のない節に1〜3個つき、枝分かれせず、尾状花序状で1.5〜3.5cm。雄花は苞葉1枚に3~5個、花柄は約2mm、蕾は球形で直径約2mm、光沢があり、萼片は3(または4)、雄しべは6~8本。雌花序では末生、枝分かれせず、4〜8cm、光沢があり、苞葉は三角形で、約3.5mm。雌花は花柄は約0.5mm、萼片は5個、三角形、2.5〜3mm、光沢があり、子房は亜球形、綿毛があり、花柱は3個、糸状、10〜12mm、1.5〜2mmで結合します。

果実の構造は?

果実はトウダイグサ科共通で蒴果です。

アカメガシワの蒴果は直径約8mmの扁球形で、刺状突起が密生し、9〜10月に褐色に熟します。熟すと3〜4裂し、3〜4個の種子を出します。種子は直径約4mmの扁球形で黒色します。

オオバベニガシワの蒴果は亜球形で3裂し、10~12mm、綿毛が密生します。種子は卵形で約6mm、褐色または灰色、結球状です。

引用文献

林将之. 2019. 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類. 山と溪谷社, 東京. 824pp. ISBN: 9784635070447

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

茂木透・太田和夫・勝山輝男・高橋秀男・城川四郎・吉山寛・石井英美・崎尾均 ・中川重年. 2000. 樹に咲く花 離弁花2 第2版. 山と溪谷社, 東京. 719pp. ISBN: 9784635070041

Wu, Z. Y., Raven, P. H., & Hong, D. Y. eds. 2008. Flora of China. Vol. 11 (Oxalidaceae through Aceraceae). Science Press, Beijing, and Missouri Botanical Garden Press, St. Louis. ISBN: 9781930723733

山尾僚・波田善夫. 2014. 法面における土壌養水分の不均一性に応じたアカメガシワの被食防御形質の変異と昆虫類による葉の利用. 昆蟲 ニューシリーズ 17(3): 111-118. https://doi.org/10.20848/kontyu.17.3_111

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