カナメモチ・オオカナメモチ・レッドロビンはいずれもバラ科カナメモチ属に含まれ、日本に自生するほか、目隠しの庭木として頻繁に栽培されている様子を見かける極めて身近な樹木です。若葉は赤色になることが最大の特徴です。しかし、これら3種の区別がついていない人は多いでしょう。特にカナメモチとレッドロビンが同じものであると勘違いしている人は多いでしょう。これら3種は主に葉の大きさと鋸歯の状態を確認することで区別できます。本記事ではカナメモチ属の分類・形態について解説していきます。
カナメモチ・オオカナメモチ・レッドロビンとは?
カナメモチ(要黐) Photinia glabra は日本の本州(東海地方以西)・四国・九州;中国南部・東南アジアに分布し、丘陵~山地の乾いた林内や尾根に生える常緑小高木~低木です。園芸で観賞用に栽培されます。
オオカナメモチ(大要黐) Photinia serratifolia は日本の愛媛県・奄美群島;中国南東部に分布し、沿海の林内に生える小高木です。
ベニカナメモチ(レッドロビン) Photinia x fraseri ‘Red Robin’ はカナメモチとオオカナメモチの園芸雑種です。「ベニカナメモチ」という名前は厳密には雑種ではなくカナメモチの特に若葉が赤い個体を指すとする説もあります。
いずれもバラ科カナメモチ属に含まれ、日本に自生するほか、目隠しの庭木として頻繁に栽培されている様子を見かける極めて身近な樹木と言えるでしょう。若葉は赤色になり、「紅葉」のようになることが人気である大きな理由だと思います。
形態的には葉のかなり細かい鋸歯があり、葉脈は細かく3次元方向に飛び出ることは少ないため、平べったい印象を受けるでしょう。
しかし、3種ともこの特徴は共通しており、区別の仕方が分からない人がいるかもしれません。
カナメモチ・オオカナメモチ・レッドロビンの違いは?
これら3種のうち、カナメモチとオオカナメモチの違いははっきりしています(林,2019)。
まず和名の通り、カナメモチでは葉身の長さが6~12cmで、葉柄の長さが1~2cmであるのに対して、オオカナメモチでは葉身の長さが10~20cmで、葉柄の長さが1.5~4cmであるという違いがあります。
更に決定的な違いとして、カナメモチでは葉身にある細かい鋸歯が葉柄にまで延長して存在するのに対して、オオカナメモチでは葉柄に鋸歯がありません。これはとても分かりやすい違いだと思います。
問題はレッドロビンです。カナメモチとオオカナメモチの雑種であるため見分けが難しく、カナメモチと混同されていることが多いでしょう。
まず、名前の通り若葉が特に真っ赤になる点がカナメモチやオオカナメモチと異なります。これら2種でも赤くなりますがレッドロビンほどにはならないことが多いです。
しかし、葉は成熟するにつれ緑色になるので区別が難しい場合もあるでしょう。
もう一点はレッドロビンはオオカナメモチの特徴が混じっているので、オオカナメモチのように葉柄に鋸歯がありません。
そのため、葉が小さいにも関わらず、葉柄に鋸歯がない場合はレッドロビンである可能性が高いでしょう。レッドロビンは園芸雑種なので野生個体は普通は確認されないという点も抑えておいてください。
引用文献
林将之. 2019. 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類. 山と溪谷社, 東京. 824pp. ISBN: 9784635070447