シカクマメ(四角豆・うりずん豆)に似た種類は?栄養は?毒性は?原産地が不明って本当?花は自家受粉と他家受粉を巧みに使い分けていた!?(花の生態がわかる写真図鑑 5)

マメ科
Psophocarpus tetragonolobus

シカクマメは日本人には馴染みが薄いですが、高温多湿の赤道諸国で盛んに栽培され、沖縄や小笠原諸島でも見られます。シカクマメに似た種類はアフリカのみに分布し、日本国内では基本的に混同する種類はいません。食用が主な用途で、栄養素も豊富なことに加えて、全身食用可能であるという万能さを持つ植物です。毒性は今のところ知られていません。そんなシカクマメの原産地はアジア説とアフリカ説が拮抗しており、結論が出ていません。シカクマメの花は青く目立つにも関わらず、自家受粉で基本的には問題なく果実を作ります。しかし、ハナバチが訪れている例もいくつか確認されており、最低限の遺伝子の交換は行っているようです。本記事ではシカクマメの分類・分布・歴史・送粉生態・種子散布について解説していきます。

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シカクマメとは?

シカクマメ(四角豆) Psophocarpus tetragonolobus は諸説ありますがアジアまたはアフリカが原産地とする説が有力で、南アジア(インド、バングラデシュ、スリランカ)や東南アジア(インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、ミャンマー)、アフリカの高温多湿の赤道諸国で広く栽培されるつる性の多年生草本です(Lepcha et al., 2017)。ただし、栽培下では冬季に枯れるので一年草であることもあります。マメ科。野生個体は見つかっていません。

葉は三出複葉で、葉身は広く菱形です。

日本では少し馴染みが薄いですが、日本でも食用に沖縄や小笠原で栽培され(鬼頭ら,2016)、沖縄では「うりずん豆」などとも呼ばれます。

世界では主に水田の境界線、生け垣、またはフェンスに沿わせて栽培されます。

シカクマメに似た種類はいる?

シカクマメ属にはシカクマメを含め、10種類が知られていますが、残り9種はアフリカにのみ分布し日本で見ることはまずありません。

他のマメ科を考えても青色の花である点、果実に稜(平べったい部分)が4つ顕著に張り出している点はかなり独特で普通混同される種類はないと考えて良いでしょう。

シカクマメの葉
シカクマメの花
シカクマメの果実
STRONGlk7 – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=21474925による

シカクマメはなぜすごい?:全身食用可能で栄養豊富な熱帯地域の救世主

大豆の栽培が困難な世界の熱帯地域において栽培可能であることから、経済的・生態学的に重要な役割があります。

葉、花、根、豆の莢(さや)が生でも食べることができ、豆も調理すれば食用になり、アミノ酸、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム、鉄分も栄養素も豊富であることから多目的食用作物として注目されています(Lepcha et al., 2017)。品種によっては地下塊茎もでき、これも勿論食べられます。

莢の味については『Delish Kitchen(デリッシュキッチン)』では「苦味を感じますがくせがなく、さっぱりとした味わいです。食感はシャキシャキとしていて歯ごたえを楽しむことができます。」と紹介されています。

マメ科に含まれるため窒素固定細菌と共生していることから空気中の窒素を体内で固定を行います。そのため、肥沃ではない土地でも育ちますし、豆にはダイズに匹敵するタンパク質が豊富に含まれています。

このような多用途性から、海外では「1種だけのスーパーマーケット(one species supermarket)」、「茎の上のスーパーマーケット(supermarket on a stalk)」と呼ばれることもあります。少し日本人には分かりにくい例えですが、シカクマメ1種でスーパーマーケットを開けるほど、様々な目的に使える、ということが言いたいのでしょう。

このようなことから毒性については今のところ知られていません。

奇妙な分布:シカクマメの起源はアフリカ?アジア?

シカクマメはアフリカとアジアという離れた地域で栽培されています。なぜこのような奇妙な分布を持っているのでしょうか?そもそもシカクマメの野生下ではどこに分布していたのでしょうか?このことは最近まで諸説ありました。

1つ目はインド・マレーシア起源説です。これはインドの東部アッサム地方での長い栽培の歴史を踏まえたものです。

2つ目はアジア起源説で、現在では絶滅したPsophocarpus属の祖先から、シカクマメが家畜化されたと推測します。現在アジアではPsophocarpus属の植物はシカクマメを除いて存在しません。

3つ目はパプアニューギニア起源説で、そこで見られる大きな遺伝子変異に基づきます。

4つ目はアフリカ起源説で、アフリカの種である Psophocarpus grandiflorus という同じ属の植物の形態がシカクマメに酷似しているという観察に基づきます。また、同じPsophocarpus属の種はアフリカにのみ9種分布しています。

2017年の結論としてはこれらのうち、4つ目のアフリカ起源説がもっとも有力とされており、細胞学的および植物病理学的な証拠もこれを支持しているとしていました(Lepcha et al., 2017)。

その後、2018年にシカクマメとアフリカのPsophocarpus属との特定の遺伝子の類似度を調べた研究(分子系統解析)が発表されました。もし結果が、「シカクマメとアフリカのPsophocarpus属のある一種類が分岐した」ということになれば、それはシカクマメがアフリカで進化した、という証明になるでしょう。

ところが結果は「シカクマメと他のアフリカのPsophocarpus属の全ての祖先が一番最初に分岐した」、という結果であったためなんとも言えないものでした(Yang et al., 2018)。アフリカのPsophocarpus属の祖先からシカクマメが進化した、とも解釈できますし、アフリカからずっと前に分岐し絶滅したアジアのPsophocarpus属の祖先が、更にシカクマメに進化したとも解釈できるからです。

これらを踏まえて2019年の研究ではやはり原産地アジアともアフリカともどちらとも言えない、という中立的な記述となっています(Tanzi et al., 2019)。

インターネット上ではアジア原産と断定する記述も多いですが、アフリカ原産である可能性も高いことも頭に入れておいた方が良いでしょう。

もしアフリカが原産だとすれば、シカクマメはアジアにどのように広まったのでしょうか?

これにも2つ説があり(Lepcha et al., 2017)、まず一つは、インド洋のアフリカ側で発生したシカクマメの祖先が、野生植物として東に運ばれ、人間の栽培によって変化したという説があります。

もう一つの説としては、元々シカクマメはより広い地理的分布を持ち、インド中心部または東南アジアやメラネシアの島で最初に栽培化が始まったというものです。アジアでの栽培の歴史は古いこともその根拠です。

非常に多岐に渡る説があり、どれが正しいかは分かりませんが、このような非連続的な分布は珍しく、謎に満ちていて興味深いものです。

シカクマメの利用方法は?

このように最近注目を浴び始めたシカクマメですが、何世紀にもわたってアジアやアフリカの多様な民族ではマイナーな食物として知られる程度でした。

しかしその活用方法は地域によって様々に分化しています。

インドでは未熟な莢を生野菜として食べたり、漬物にして、未熟な種子はスープやカレーに使われ、成熟した種子はローストしてピーナッツのように食べられ、花は食べたり料理の彩りに使われています。

ガーナ、ビルマ、パプアニューギニアでは塊茎が様々な料理で調理され、使われています。

インドネシアでは伝統的な嗜好品であるテンペ・ケシピール(ダイズなどをテンペ菌で発酵させた醗酵食品、ここではシカクマメ)の原料になったり、タイではスナックの調理に用いられています。

マレーシアでは、根は目眩の治療に湿布として使用され、葉は天然痘の治療に使用されてきました。

ニューギニアでは、莢と塊茎は強壮剤とみなされ、莢の抽出物は腫れ物や潰瘍の治療に使用されています。

この用途の多様性もシカクマメ固有で、まさに1種だけでスーパーマーケットが開けそうです。

シカクマメの花は自家受粉可能、しかしハナバチがやってくることも…?

花は日本では8月上旬に咲き、マメ科ではやや珍しい淡い青い花弁となっています(Lepcha et al., 2017)。構造はマメ科に典型的な「蝶形花」という特有の形になっています。

シカクマメの花

蝶形花は一番大きく目立つ「旗弁きべん」を持ち、多くのマメ科の種類は旗弁の根元には「蜜標」と呼ばれる昆虫に蜜の在り処を教えるマークがあり、シカクマメの場合は黄色が見られます。旗弁の下に突き出すようになっているのが「翼弁よくべん」と「竜骨弁りゅうこつべん舟弁しゅうべん)」で、2枚の翼弁は2枚の竜骨弁を覆っています。これらの中央に重なった花弁によって蜜腺が隠されています。

このような蝶形花は一般的にハナバチが中央の花弁をこじ開けて、蜜を吸います。

ただ、シカクマメでは自家受粉が可能なので、昆虫がやって来こなくても基本的にはそのまま果実(莢)が出来ます。だとすること花はヒトが食用にすることを除いてあまり意味がないようにも思えます。

しかし、低い頻度ではありますが、いくつかの研究で花にマルハナバチやクマバチが訪れることが報告されています(Klu, 1996)。なぜ自家受粉できるのにこのようなことを行っているのでしょうか?

これは他の個体の花粉を取り込み、「他家受粉」を行うことで、他の個体の遺伝子を少しだけ取り込み、環境の変異に強くなっていること考えられます。

一方、基本的にはクローンを作ることになり、安定的に莢を生産します。これはヒトにとっては非常に都合がよく、栽培植物としては合理的な受粉方法だと考えられます。

これはおそらく人間の手によって栽培化させられた結果得た特徴であり、逆に言うと、シカクマメがヒトに食べてもらうために自家受粉を発達させた、と言うこともできるでしょう。

なお、青色であることが訪れる昆虫に影響しているのか?というのは気になるところですが、残念ながらまだ研究されていないようです。

シカクマメの莢(果実)が4方向に張り出しているのはなぜ?

莢(マメ科の果実)は6〜30cm以上の正方形で、縦に稜(平べったい部分)があります。これが、4方向に張り出していることが、「シカクマメ(四角豆)」という和名の由来です。完全に熟すと、鞘は灰褐色に変わり、裂けて開いて種子(豆)を放出します。中に入っている豆は褐色と黒色が主体で、褐色と褐色の濃淡があるものが多いです。

この張り出している稜の生態学的な役割は私の調査でははっきりしませんでした。莢を風で飛ばすなどの意味があるのかもしれませんが、これはアフリカにいる近縁種なども含めて考察する必要がありそうです。

引用文献

鬼頭誠・名嘉眞健志・南雲不二男. 2016. シカクマメの沖縄各種土壌での生育およびリン栄養. 琉球大学農学部学術報告 63: 45-50. ISSN: 0370-4246, https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030911914

Klu, G. Y. P. 1996. Efforts to accelerate domestication of winged bean (Psophocarpus tetragonolobus (L.) DC.) by means of induced mutations and tissue culture. Wageningen University, Gelderland. 110pp. ISBN: 9789054856047, https://www.wur.nl/en/Publication-details.htm?publicationId=publication-way-3333393538

Lepcha, P., Egan, A. N., Doyle, J. J., & Sathyanarayana, N. 2017. A review on current status and future prospects of winged bean (Psophocarpus tetragonolobus) in tropical agriculture. Plant Foods for Human Nutrition 72(3): 225-235. ISSN: 0921-9668, https://doi.org/10.1007/s11130-017-0627-0

Tanzi, A. S., Eagleton, G. E., Ho, W. K., Wong, Q. N., Mayes, S., & Massawe, F. 2019. Winged bean (Psophocarpus tetragonolobus (L.) DC.) for food and nutritional security: synthesis of past research and future direction. Planta 250(3): 911-931. ISSN: 0032-0935, https://doi.org/10.1007/s00425-019-03141-2

Yang, S., Grall, A., & Chapman, M. A. 2018. Origin and diversification of winged bean (Psophocarpus tetragonolobus (L.) DC.), a multipurpose underutilized legume. American Journal of Botany 105(5): 888-897. ISSN: 0002-9122, https://doi.org/10.1002/ajb2.1093

出典元

本記事は以下書籍に収録されたものを大幅に加筆修正したものです。

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