ラベンダーは園芸で大人気で紫色の花を咲かせる種類として知られており、薬用としても名高いです。しかし、その区別について適切に書いている記事は少数です。ラベンダーの見た目の違いは「品種」の違いというわけではなく、全くの別種です。代表的な3種イングリッシュラベンダー・フレンチラベンダー・デンタータラベンダーは葉と花序の形をよく確認することで区別できます。他の種類も同様です。ラベンダーの種類ごとの利用方法の違いには違いが有り、イングリッシュラベンダーが最も重宝され、観賞用としては勿論、精油(エッセンシャルオイル)の生産に商業的に重要です。次点で安価なラバンジンです。精油は様々な用途に使われてきましたが、不安、不穏、不眠、うつ症状、精神不安定の効果については科学的にも証明されつつあります。そんなラベンダーですが、その花にはどのような昆虫が訪れ、受粉するかご存知でしょうか?原産地の地中海ではセイヨウミツバチが主に訪れています。一見普通にも思えますが、セイヨウミツバチに特化するために様々な工夫を行っています。また、ラベンダーの花序には花に混じって蕾がありますが、これはミツバチに自家受粉などの無駄な花粉の消費を嫌った結果であることが分かりつつあります。フレンチラベンダーでは花序の上部の花弁状苞(ひらひら)が目立ちますが、これを切除したものと比較した実験により、ミツバチに遠くから見えるようにするための信号として発達したと考えられています。果実は基本的には自動散布ですが、フレンチラベンダーでは驚くべきことにヒツジが運んでいるという例があります。本記事ではラベンダー類の分類・用途・文化・送粉生態・種子散布について解説していきます。
園芸で大人気で紫色の花を咲かせるラベンダー3種
レベンダー Lavandula angustifolia は別名コモンラベンダー、イングリッシュラベンダー、クンイソウ(薫衣草)。ヨーロッパ(イタリア、フランス、スペイン、アンドラ)原産で、別名はイングリッシュラベンダーであるものの、イギリスには分布しません。以下は最もよく使用されているのでイングリッシュラベンダーと呼びますが、くれぐれも誤解しないでください。最も信頼できる和名学名対応をまとめた『Ylist』では「ラベンダー」を標準和名としています。常緑低木。日本では観賞用に園芸で栽培されます。
フレンチラベンダー Lavandula stoechas は別名ストエカスラベンダー。ヨーロッパ(イタリア、ポルトガル、フランス)、アフリカ(アルジェリア、エジプト、リビア、モロッコ、チュニジア、スーダン)に分布します。常緑低木。日本では観賞用に園芸で栽培されます。
キレハラベンダー Lavandula dentata は別名フリンジドラベンダー、フリンジラベンダー(こう呼ぶのは日本だけです)、デンタータラベンダー。スペイン、バレアレス諸島(スペイン領有の西地中海に浮かぶ島)、アルジェリア、エリトリア、エチオピア、モロッコ、パレスチナ、サウジアラビア、イエメン原産で、地中海や大西洋の島々、アラビア半島に分布します。原産地では低木に囲まれた石灰岩の基質がある低い丘に生息します(Brickell & Kindersley, 2008)。常緑低木。日本では観賞用に園芸で栽培されます。以下は最もよく使用されているのでデンタータラベンダーと呼びますが、最も信頼できる和名学名対応をまとめた『Ylist』では「キレハラベンダー」を標準和名としています。また、Lavandula dentata も海外ではおもにフレンチラベンダーと呼ぶことがありますが、絶対におすすめできません。Lavandula stoechas と呼び方が被ってしまうからです。
いずれもシソ科ラベンダー属に含まれ、やはりハーブとしてや精油として有名で、日本では観賞用に園芸で栽培されるのをよく見かけます。人気が高いグループですが、その種類について適切な解説がなされているのは非常に少ないです。
ラベンダーの見た目の違いは「品種」の違いではない!
これらのラベンダーは別名が多く非常に混同されています。
その上、インターネット上などの園芸専門サイトでは「デンタータ系」などとして、「品種」のような扱いがなされていることがあります。
しかし、「品種」という言葉は生物学的には同じ種類の中で自然条件の差異や、人為選択によって見た目に違いあることを指すものです。
ラベンダーの場合は種類が全く異なっており、自然条件下でお互いに交配することは普通はなく、あっても定着は稀で、「品種」と呼ぶのは適切ではありません。
まずはこの点をしっかり押さえましょう。
勿論、それぞれの種類から品種改良された個体は存在します。
イングリッシュラベンダー・フレンチラベンダー・デンタータラベンダーの違いは?
代表的な3種イングリッシュラベンダー・フレンチラベンダー・デンタータラベンダーの違いについて考えてみます。
ラベンダーの区別方法は日本のインターネットではほとんど発見できませんが、オーストラリアの園芸図鑑に検索表が掲載されています(Spencer et al., 2002)。和文では『ラベンダーブック』も参考になります(小松・小松,2008)。
まず、花の違いから見てみます。
ラベンダーの花序には苞(苞葉)という1~5個の花を包むとても小さな葉が存在しています。
この苞が上部では大きく発達し、ひらひらした部分(花弁状苞)を形成することがあります。
イングリッシュラベンダーでは穂状花序の上部にはなにもありませんが、フレンチラベンダーとデンタータラベンダーでは穂状花序の上部に花弁状苞があります。
また、フレンチラベンダーとデンタータラベンダーに関しては、フレンチラベンダーでは穂状花序の上部の花弁状苞が明るい紫色で普通4枚から構成され、頂部に全てつき、10~50mmと長く大きく目立つのに対して、デンタータラベンダーでは穂状花序の上部の花弁状苞が紫青色で8~10枚から構成され、頂部にかけて2枚ずつ交互につき、フレンチラベンダーほど目立たないという違いがあります。
最も簡単に言うと、イングリッシュラベンダーではひらひらはなく、デンタータラベンダーではひらひらが短く、フレンチラベンダーが長いということになります。
葉に関しては、イングリッシュラベンダー・フレンチラベンダーとデンタータラベンダーの間には明確な違いがあります。
イングリッシュラベンダーとフレンチラベンダーでは全縁であるのに対して、デンタータラベンダーではデンタータがラテン語で「歯のような」を意味するように、縁が切れ込み(円鋸歯状の歯状~羽状中裂)があります。
イングリッシュラベンダーとフレンチラベンダーの間で葉の違いは確認できませんでした。またフレンチラベンダーは冬葉ではまた形が異なるのでかなり難しいと思います。
他に似た種類はいる?
この他にもラベンダー属には複数の種類が知られ、日本でも栽培されます(Spencer et al., 2002)。。
ヒロハラベンダー(スパイクラベンダー) Lavandula latifolia は花序の上部の発達した苞がなく、花茎が3つに分かれ、花数がイングリッシュラベンダーより少ないです。
ラバンジン Lavandula x intermedia はイングリッシュラベンダーとスパイクラベンダーの交雑種です。苞が幅より長く、小苞がはっきりしていることからイングリッシュラベンダーから区別されます。
レースラベンダー(ムルチフィダラベンダー) Lavandula multifida は花序の上部の発達した苞がなく、下部の葉が茎葉より大きく、2回羽状深裂し、やや白っぽい緑色です。
近縁種としてマデイラ諸島南部とカナリア諸島に自生するピナータラベンダー Lavandula pinnata も知られ、レースラベンダーとそっくりですが、こちらは葉が1回羽状深裂で、ほとんど白色です。そっくりなので「ピナータラベンダー」という名前で「レースラベンダー」が販売されていることもあります。
ラベンダーの種類ごとの利用方法の違いは?
ラベンダーには様々な用途がありますが、その用途は種類によって異なります。
精油(エッセンシャルオイル)は主要な香気成分としては酢酸リナリルやリナロールが含まれており、香りを楽しむためや薬用に利用されます。匂いは果実の甘い香気をもつ芳香成分を多く含んでおり、ふんわりと温かみのある香りがするともされます。
精油として利用される種類は質の問題から、かなり限られており、商業的にはイングリッシュラベンダー、スパイクラベンダー、ラバンジンのみです(津呂ら,2011)。
また精油の用途も異なっています。イングリッシュラベンダーから得られる精油は、上品な香りがすることから香水香料としての質的評価が高く、需要は大きいです。一方で、精油の生産性および耐暑性が低いため、栽培地域が限られているというデメリットもあります。北海道の富良野のラベンダー畑は1937年(昭和12年)から曽田政治氏が本種を栽培したものです。第二次世界大戦を経て、1948年から本格的に生産を開始しました。
スパイクラベンダーから得られる精油はイングリッシュラベンダーと比較して、精油の生産性および耐暑性が高く、栽培が容易であるというメリットがありますが、精油に1,8-シネオール、カンファーあるいはボルネオールなどの樟脳臭を呈する化合物が多く含まれるため、香料としての質的評価が低く、精油は主として昆虫忌避剤の原料として用いられています。
ラバンジンは耐暑性が高く、精油成分は両親種の中間型を示すことから、精油は香水用香料および石鹸用香料と用途が広いです。さらに、雑種強勢により旺盛な生育と精油の生産性を示すことから商業用として栽培されることが多く、フランスではラベンダーオイルの95%以上がラバンジンから採取されたものとなっています。しかし、やはりラバンジンの精油にも1,8-シネオール、カンファー、ボルネオールが一定量含まれることから、香料としての質的評価はイングリッシュラベンダーより低く、精油成分比の改良が求められています。
精油は以上3種を総合して、不安、不穏、不眠、うつ症状、精神不安定、鎮痛、胃のむかつき、脱毛、防虫・殺菌などに効果があるとされ、民間療法または伝統療法で使われてきました。
これらが科学的に本当に効果があるかは様々な研究が行われてきましたが、ヒトを対象とした研究では睡眠の強化、ポジティブな精神薬理学的効果、認知症患者の過剰な運動行動の抑制が示されています(Woronuk et al., 2011)。健康な成人に対しての効果も示されていますが、プラセボ効果も出てしまうので、その程度についてはまだ議論がなされています。
しかし、ラベンダーがどのように化学的に体内で影響するのかは実はあまり良く分かっていません。ラベンダーオイルを経皮的に塗布すると、被験者の血液サンプル中にモノテルペノイドであるリナロールと酢酸リナリルが蓄積することが示されており、このことが関係している可能性はあります。このような物質はすぐに代謝され、排泄されるようです。
リラックス効果には科学的なお墨付きが付きつつあると言えそうですが、一方でアレルギーなども報告されており、体調をよく見ながら利用していく必要がありそうです。
その他の種類は商業的には花の観賞用に園芸で栽培されます。しかし、やはり民間療法または伝統療法で利用されてきたことがあり、例えばフレンチラベンダーでも抗炎症効果、抗酸化効果、鎮痙および鎮静効果、抗菌活性、殺虫活性、薬用の細胞傷害活性が知られています(Ez zoubi et al., 2020)。
花や葉は食用され、食欲増進のハーブとして料理や菓子の風味付けに用いられたこともあります。調味料としてサラダやドレッシングに利用されています。
ラベンダーの花の形は?
イングリッシュラベンダーは花期は5~6月。輪散花序は花が6~10個、密集して多数つき、長さ3(~5)cmの間隔の開くまたは連続する穂状花序になります。花序柄は穂状花序の長さの約3倍。苞は乾くとさび色、菱状卵形または尖鋭形の錐形。上位に花弁状苞がありません。花冠は青色長さ8~10mm、上唇は真っすぐ、裂片は円形でわずかに重なります。下唇は広がります。
フレンチラベンダーは花期は5~7月。花序は円筒形に近い穂状花序、長さ1.5~4.7cm×幅0.8~1.9cm、輪散花序8~16個によって形成され、各輪散花序に花が6~14個、密につき、苞は広楕円形~円形、基部はときに楔形、先は鋭形または尖鋭形、花弁状苞は長さ10~50mm×幅2~10mm、帯青色~紫色。花冠は長さ4~5.5mm、帯青色または紫色、先は非常に暗く、帯黒色。花冠裂片は上唇の2裂片は下唇の3裂片よりやや長いです。
デンタータラベンダーは花期は6~9月。花茎は細く、灰色、長さ2.5~5cmの穂状花序を頂生します。花は濃紫色~淡紫青色。花弁状苞は紙質、紫青色の房状に先につきます。
基本構造は同じで、穂状花序が形成され、そこに苞が多数つきます。苞によって1~5個の花を包まれています。種類によっては穂状花序の上部に花弁状苞を作ります。
ラベンダーの花にはミツバチが主に訪れる
まさにラベンダー色をしていて、世界中でとても人気が高いですが、原産地である地中海ではこの花には本来どのような昆虫が訪れていたのでしょうか?
デンタータラベンダーについてはインターネット上ではこの花はチョウやガもやってくるとされ、実際そのようなこともあるようですが、サウジアラビアの研究によるとミツバチが主な花粉の運び手になることが分かっています(Nuru et al., 2015)。論文では明言されていませんが、おそらくサウジアラビアに自然分布するセイヨウミツバチ Apis mellifera のことだと思われます。
ミツバチに訪れて貰うためにデンタータラベンダーは様々な工夫を行っています。
初夏に咲きますが、これは丁度ミツバチの活動時期と重なっています。また、花の形も管になっていてミツバチの口の長さに適していると考えられています。更に、蜜の分泌も時間で調整していることが分かっているのです。
また、フレンチラベンダーへの訪花昆虫についても、スペイン南部での研究によるとドニャーナではセイヨウミツバチがほぼ90%を占めました。一方、アスナルカサルではセイヨウミツバチのほかに様々な単独性ハナバチが見られました(Herrera, 1997)。
おそらく多くのラベンダーにセイヨウミツバチが訪れるのだと思われます。セイヨウミツバチもまた世界中で利用され、原産地での生活が分かりにくくなってしまった昆虫ですが、このような対応を見ると、お互いの自然下での生態を垣間見ることができます。
花の中に蕾が交じるのはなぜ?
ところで、この花序をよく見ると、蕾と花が中途半端に入り混じっているなと思いませんか?これはなぜなのでしょうか?
これも戦略のようです。一度に花を沢山つけると一見沢山ミツバチがやってきてくれるように思えますが、ミツバチが同じ花穂の花全てに訪れると、自分の花粉で、自分の雌しべが覆われてしまうのです(隣花受粉による柱頭被覆)。
つまり自家受粉を防いでいるということです。
他にもミツバチが毛づくろいで、花粉を落としてしまうなど、花粉を無駄にしてしまうことがあります。このような現象を総称して、「花粉減価(pollen discounting)」と呼びます(Biernaskie & Cartar, 2004;石井,2008)。
そこで、ラベンダーは少しずつ咲かせることでハチの興味を引きつつ、花粉を作る量を節約しています。日本で見ているだけだと気づけない、ラベンダーの賢い一面と言えるでしょう。
花序の上部の花弁状苞はなんのため?
フレンチラベンダーは近縁種の中でも特別に大きな花弁状苞(ひらひら)をもっています。これはなぜなのでしょうか?そもそも花弁状苞にはどのような役割があるのでしょうか?
普通に考えれば、派手な装飾をつけることで、訪花昆虫の気を惹き、花にやってきて貰い易くするということが考えられるでしょう。
そこで、このことが正しいか、スペイン南部のドニャーナとアスナルカサルで研究が行われました(Herrera, 1997)。
花弁状苞を取り除いた個体と花弁状苞をそのままにした個体を作り出し、ハナバチの訪問率を比較する実験を行ったのです。
すると意外にも花弁状苞の有無はハナバチの訪問率に影響しなかったのです。これはどういうことなのでしょうか?花弁状苞はなんの意味もないものなのでしょうか?
この実験で訪問率に変化が見られなかったのは、花弁状苞以外の影響が出てしまったことが考えられます。ミツバチが装飾に関係なく、元々の花の位置を記憶している可能性がありました。また、隣接していた個体同士を実験に使用してしまったため、花弁状苞がある個体に惹かれたミツバチが、無い個体を発見して、そのまま流れていってしまった可能性がありました。
そこで、研究者はそのようなことを見越して別のやり方でも実験を行っています。先程の実験ではラベンダーの個体レベルで行いましたが、この実験ではラベンダーの個体群レベルで比較しました。言い換えると、花弁状苞を取り除いた複数の個体よって作られた林と、花弁状苞がある複数の個体よって作られた林を比較したのです。こうすることで、もっと大きなスケールになり、ミツバチの記憶や、単純に近いから、という影響は無くせるでしょう。
この実験の結果では、花弁状苞があるラベンダー林の方が、ハナバチの訪問率が高くなっていたのです。
これらの結果をまとめると、花弁状苞がある個体の中に、花弁状苞を取り除いた個体が少数ある程度では、花弁状苞の有無は影響しませんが、花弁状苞がある個体が集団を形成すると、その装飾が目立つようになり、効果が発揮されるということになります。
これはミツバチ側から見てみるとそんなに難しい話ではありません。花弁状苞が沢山集まり、目立っている場合には、これを遠くから目印にやってきて蜜を吸うのです。
この他にも、植物密度が極めて低く、孤独に生えているときには、やはりミツバチに発見してもらう目印になるでしょう。
少し回りくどくなりましたが、結局、花弁状苞にはミツバチを惹き寄せる効果があったと言えます。この効果が発揮されるのは沢山の集団でいる時か、孤独にいる時に発揮されるようです。
上述のように花を付けすぎると自家受粉のリスクが高まることを踏まえると、花弁状苞は花冠の代わりになっているということが考えられそうです。そう考えると、実は話は繋がっているのかもしれません。
果実は小堅果で自動散布と”ヒツジ散布”を行う!?
ラベンダー属は共通で果実は小堅果です。小堅果は2枚以上の心皮の子房が、成熟時に乾燥して堅い果皮となり、中に種子を含んでいるような果実で、ラベンダーでは平滑、光沢があり、基部の背側に小室があります。ラベンダーでは乾燥すると堅果が弾ける自動散布を行っていると考えられています。果実は夏に萼が開いて飛散するまでは萼の中に納まっています。
ラベンダー属のうち、フレンチラベンダーでは少し面白いことが分かっています。
自動散布は強力な散布能力を持つ代わりに、母樹の周辺に種子の大部分が集中し、最大散布距離が非常に短いという特徴を持つため、種子の大きな移動で出来ません。
フレンチラベンダーは劣化した土壌に生息し、特に放棄された作物や草原に生えることがあります。これはパイオニア種の典型的な特徴です。このような種類が効率の悪い自動散布だけを行っているとは考えにくいです。
そのような背景からスペインのイベリア半島中部に位置するグアダラマ山脈の南部ペドレスエラという場所で行われた研究によると、その長距離移動の担い手がヒツジであることがわかりました(Sánchez & Peco, 2002)。腸内を通っても73%が生存していました。また、単に移動するだけではなく、糞に含まれる栄養素も利用していたのです。
フレンチラベンダーの祖先の段階で、このような動物被食散布を行っていたのかは分かりませんが、現代のヒトが作り出した環境には驚くべき適応を遂げているようです。
引用文献
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出典元
本記事は以下書籍に収録されていたものを大幅に加筆したものです。