本記事では以下雑誌にて公開した「兵庫県におけるヤマフジハフクレフシの記録と国内分布文献記録」の本文を掲載します。冊子版およびpdf版をお求めの方は以下のリンクよりご購入下さい。同定・情報の間違いなどは次号以降で修正しますのでご報告下さい。
フジ類については別記事を御覧ください。
ヤマフジハフクレフシとは?国内の文献記録は?
ヤマフジハフクレフシは、フジ Wisteria floribunda (Willd.) またはヤマフジ W. brachybotrys Siebold et Zucc. の葉の両面に形成され、半球形で、表面は平滑で黄緑色~緑褐色を呈する虫こぶで、未同定のタマバエ科幼虫に形成されることが知られている(中渡瀬,1992;湯川・桝田,1996)。池田(投稿中)で当初兵庫県内の記録として報告する予定で文献を収集していたが、調査の過程で未報告虫こぶであることが判明し、ヤマフジハフクレフシの国内文献記録は含めないことにした。しかし、現在県ごとの本虫こぶの分布状況は公表されていないと思われるので、ここに報告しておく。湯川・桝田(1996)及び筆者が確認する限り、岩手県(門前,1929)、埼玉県(巣瀬,1986)、神奈川県(牛山ら,1997)、兵庫県(井手,1928)、宮崎県(湯川ら,2012の整理)、大分県(湯川・桝田,1996)、鹿児島県(湯川,1979;湯川,1988;中渡瀬,1992)で記録を確認した。
付記(筆者の兵庫県における記録)
本稿執筆後、本虫こぶを2017年5月5日18時頃に兵庫県神戸市西区井吹台西町井吹台谷口公園のフジの葉下面で撮影していたことが明らかになったので、追加して報告する(図 5)。
1虫こぶ, 兵庫県神戸市西区井吹台西町井吹台谷口公園, 5.V.2017, 筆者撮影
県内では上記の通り井手(1928)で神戸市の記録があるが、詳細地点不明で虫こぶ名はない記録でかなり古いものである。
引用文献
井手清治,1928.鹿児島県及び神戸產虫癭目録.博物同志會會報,1: 54-57.
池田健一,投稿中.井吹台谷口公園の昆虫類と虫こぶ(付録:神戸市の虫こぶの文献記録).きべりはむし ISSN: 1884-9377, https://www.konchukan.net/pdf/kiberihamushi/Vol44_1/kiberihamushi_44_1_36-43.pdf
門前弘多,1929.蟲癭の研究.齋藤報恩會事業年報,5: 295-368. https://doi.org/10.11501/1120468
中渡瀬亜紀,1992.ヤマフジの葉に形成されるタマバエの虫えい.鹿児島県立博物館研究報告,11: 5-8. ISSN: 0915-9010
巣瀬司,1986.北本市石戸宿の虫えい.寄せ蛾記,48: 743-744.ISSN: 0917-5695
牛山欽司・高橋和弘・ 深山陽子,1997. 神奈川県におけるフジ (Wisteria floribunda (Willd.) DC.) を寄主とするタマバエ 2 種の発生生態.関東東山病害虫研究会年報,44: 291-294. ISSN: 0388-8258
湯川淳一,1979.高隈演習林および佐多地方で採集されたタマバエのゴール.鹿児島大学農学部演習林報告,7: 85-89. ISSN: 0389-9454
湯川淳一,1988.鹿児島県のタマバエゴール(双翅目:タマバエ科).Satsuma,37: 175-205. ISSN: 0910-5131
湯川淳一・笹富広一郎・佐藤信輔・松尾和典・藤井智久,2012.宮崎県小林市岩瀬川渓谷で採集された虫えい形成タマバエ類.まくなぎ,24: 1-12. ISSN: 0917-4710
湯川淳一・桝田長,1996.日本原色虫えい図鑑,826pp. 全国農村教育協会.東京.ISBN: 9784881370612