ヒイラギナンテン・ホソバヒイラギナンテン・ナリヒラヒイラギナンテンの違いは?似た種類の見分け方を解説!

植物
Berberis japonica

ヒイラギナンテン・ホソバヒイラギナンテン・ナリヒラヒイラギナンテンはいずれもメギ科メギ属に含まれ、針状の粗い鋸歯がある奇数羽状複葉を持ち、育てやすいことから頻繁に観賞用に栽培されています。しかし、3種をきちんと区別できている人は少ないかもしれません。特にホソバヒイラギナンテンとナリヒラヒイラギナンテンは混同されています。3種は葉の大きさに加えて、小葉や小葉の鋸歯の数を確認することで正しく区別することができます。本記事ではメギ属の分類・形態について解説していきます。

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ヒイラギナンテン・ホソバヒイラギナンテン・ナリヒラヒイラギナンテンとは?

ヒイラギナンテン(柊南天) Berberis japonica (シノニム:Mahonia japonica)は別名トウナンテン・チクシヒイラギナンテン。ヒマラヤから中国・台湾原産で、日本では江戸時代初期に渡来したとされ、公園・庭園などに植栽され、ときに平野部の樹林内に逸出する常緑低木です。

ホソバヒイラギナンテン(細葉柊南天) Berberis fortunei (シノニム:Mahonia fortunei)は中国原産で、日本では明治時代初期に渡来し、公園や個人庭などに植栽されている常緑低木です。

ナリヒラヒイラギナンテン(業平柊南天) Berberis eurybracteata subsp. eurybracteata (シノニム:Mahonia eurybracteataMahonia confusa)は別名マホニア・コンフューサ、マホニア・コンフーサ。中国原産で、日本では近年庭や公園などに植栽されている常緑低木です。園芸ではマホニアコンフューサ、マホニアコンフーサという古い学名で販売されています。

いずれもメギ科メギ属に含まれ、針状の粗い鋸歯がある奇数羽状複葉をつけ、黄色い花を咲かし、粉白を帯びた黒紫色に熟す球形の液果をつける点で共通しています。なお、古い分類ではヒイラギナンテン属 Mahonia に含まれていたこともあります。

和名は針状の粗い鋸歯がヒイラギに似ており、奇数羽状複葉が分類的にも近いナンテンに似ていることに由来しています。

常緑であることから日陰に強く、食害も少なく、更に冬には日向の葉が紅葉することから見た目もよく公園や庭に頻繁に植栽されているのを見かけます。

ヒイラギナンテンの花は主にミツバチによって送粉され、ミツバチが蜜を吸おうとして雄しべに触れると雄しべが動く反射運動が起こるという面白い現象も確認されています(田中・平野,2000)。

また、果実は鳥によって捕食され種子を散布する鳥散布で、日本ではヒヨドリが食べている様子が確認されています(藤田・篠原,2001)。

しかし、3種は混同されていることが多く、特にホソバヒイラギナンテンとナリヒラヒイラギナンテンは近年ナリヒラヒイラギナンテンが導入されたこともあり、正しく区別している人は少ないです。

ヒイラギナンテン・ホソバヒイラギナンテン・ナリヒラヒイラギナンテンの違いは?

3種は葉によって比較的簡単に区別できます(Wu et al., 2011; 神奈川県植物誌調査会,2018;林,2019)。

まず、ヒイラギナンテンでは小葉が太いのに対して、ホソバヒイラギナンテンとナリヒラヒイラギナンテンでは小葉が細いです。これは一目瞭然で「ホソバヒイラギナンテン」という和名からも予測できるでしょう。

また、ヒイラギナンテンでは花期が3~4月で、果実は秋に熟すのに対して、ホソバヒイラギナンテンとナリヒラヒイラギナンテンでは花期が9~11月で、果実は春に熟すという違いもあります。

少し難しいのはホソバヒイラギナンテンとナリヒラヒイラギナンテンです。遠くから見るとかなり似ています。

しかし、ホソバヒイラギナンテンでは小葉が3~4対で、鋭い鋸歯が多めにあるのに対して、ナリヒラヒイラギナンテンでは小葉が5~10対で、鈍い鋸歯が少なめにあるという違いがあります。

一応、ホソバヒイラギナンテンでは花柄が苞とほぼ同じ長さで、ナリヒラヒイラギナンテンでは花柄は苞葉よりはるかに長いという違いもありますが、花期以外確認は難しいです。

図鑑では指摘されていませんが私の認識では基本的にはホソバヒイラギナンテンでは小葉柄(小葉を繋いでいる部分)が緑色で、ナリヒラヒイラギナンテンでは紫色だと考えています。

ヒイラギナンテンの全形
ヒイラギナンテンの葉上面
ヒイラギナンテンの花
ヒイラギナンテンの果実
ホソバヒイラギナンテンの葉上面
ホソバヒイラギナンテンの葉下面
ホソバヒイラギナンテンの花
ナリヒラヒイラギナンテンの葉上面
ナリヒラヒイラギナンテンの花
ナリヒラヒイラギナンテンの果実

他に似た種類はある?

基本的に日本で栽培されているのは以上3種ですが、中国原産の Berberis lomariifolia との雑種で、花序がやや直立しヒイラギナンテンより早く(1~2月)に開花する園芸品があるという指摘もあります。筆者はこの品種についてよく分かっていません。

ナンテンはヒイラギナンテンの名前の由来になった種類ですが果実は赤く、葉に鋸歯はありません。

ヒイラギもヒイラギナンテンの名前の由来になった種類ですが全く分類が異なり、奇数羽状複葉ではなく単葉です。詳しくは別記事を御覧ください。

引用文献

藤田薫・篠原由紀子. 2001. 鳥類や哺乳類による植栽樹の自然林内への分散. Strix 19: 103-113. ISSN: 0910-6901, https://mobile.wbsj.org/nature/public/strix/19/Strix19_12.pdf

林将之. 2019. 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類. 山と溪谷社, 東京. 824pp. ISBN: 9784635070447

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

田中肇・平野隆久. 2000. 花の顔 実を結ぶための知恵. 山と渓谷社, 東京. 191pp. ISBN: 9784635063043

Wu, Z. Y., Raven, P. H., & Hong, D. Y. eds. 2011. Flora of China. Vol. 19 (Cucurbitaceae through Valerianaceae, with Annonaceae and Berberidaceae). Science Press, Beijing, and Missouri Botanical Garden Press, St. Louis. ISBN: 9781935641049

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