ケイトウとノゲイトウはいずれもヒユ科ケイトウ属で食用・園芸で観賞用に栽培される一年草です。穂状花序は燃え盛る炎にも例えられます。花序が大きくなるとトサカ状になるものもあることから「鶏頭」という和名が与えられています。しかし、ケイトウとノゲイトウの区別点についてはインターネットでは不正確な記述が目立ちます。ケイトウとノゲイトウは日本でははっきり区分され、花序の柄や花被片の大きさで区別できます。ケイトウには花序が大きくなるとトサカ状になるものがある他、ヤリゲイトウやウモウゲイトウといった変種も知られており、花序の形で区別できます。本記事ではケイトウ属の分類について解説していきます。
ケイトウ・ノゲイトウとは?
ケイトウ(鶏頭) Celosia cristata は熱帯アジア原産とされる一年草です。世界中で栽培され帰化し、日本でも古くから栽培され、さまざまな品種があります。元々花と葉は食用とされており、アフリカと東南アジアでは現在でも食用ですが、日本では現在は観賞用です。
ノゲイトウ(野鶏頭) Celosia argentea は熱帯アメリカ原産あるいはインド原産ともいわれる一年草です。世界の熱帯~温帯に栽培されていたものが広く帰化し、日本でも古くに渡来し、本州、四国、九州、琉球などに帰化しています。
いずれもヒユ科ケイトウ属で園芸で観賞用に栽培される一年草です。属名から「セロシア」とも呼ばれます。5枚の赤っぽい花被片(花弁と萼の区別がつかないもの)から構成され、穂状花序は燃え盛る炎にも例えられます。花序が大きくなるとトサカ状になるものもあることから「鶏頭」という和名が与えられています。これらが共通する大きな特徴であると言えるでしょう。
他にもヒユ属 Amaranthus に対して、ケイトウ属では胞果に数個の種子を入れるという特徴もあります。
しかし、この2種の区別についてはインターネットで明言されているものは少なく、誤った記述も多数見られます。学名と和名の関係についても混乱が見られるようです。
特にケイトウの変種であるヤリゲイトウ var. childsii は一見ノゲイトウと形が似ているため混同されやすいです。
ケイトウとノゲイトウの違いは?
ケイトウとノゲイトウの違いは日本国内でははっきり定義されています(神奈川県植物誌調査会,2018)。その違いは花序と花にあります。
花序に関しては、ケイトウでは花序の柄が短いのに対して、ノゲイトウでは花序の柄が長いという違いがあります。
具体的な長さの指定があるわけではありませんが、以下の写真を比較すると花序の柄の長さが全く異なることが分かるでしょう。結果としてケイトウは花を小さくまとまってつけているように見えます。これが決定的な違いです。
花に関しては、ケイトウでは花被片が長さ4~6mmと小さいのに対して、ノゲイトウでは花被片が長さ7~10mmと大きいという違いがあります。
これは細かいようにも思えますが、ノゲイトウの方が花序が大きく見えるという点で判断できるでしょう。
なお、野生化についてはインターネットではノゲイトウのみが野生化するという記述も見られます。しかしこれは間違いでどちらも野生化しています。神奈川県ではむしろケイトウの野生化個体の方が多いという結果が出ています。
これらの特徴から今のところ日本ではケイトウとノゲイトウをはっきり別種として扱いますが、海外では特別に区別しない考えもあります(RBG Kew, 2023)。その場合、学名は Celosia argentea が優先されます。ケイトウの学名がこれだった場合は区別しない考えを採用している可能性があります。
ケイトウの変種は?
ケイトウにはいくつか変種が知られています。
ケイトウ(狭義) var. cristata は別名トサカゲイトウ。花序が大きくなるとトサカ状になる変種で、真の「鶏頭」はこの変種だけであると言えるでしょう。
ヤリゲイトウ var. childsii は穂状花序が枝別れせず、花序の先が尖る変種です。
ウモウゲイトウ var. plumosa は狭いピラミッド形で、蕾が羽毛のようになっている頭状花序を持つ変種です。ヤリゲイトウとやや似ますが、ヤリゲイトウより明らかに花が密についています。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726
RBG Kew. 2023. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/