タンキリマメ・トキリマメ・ノササゲはいずれもマメ科に含まれ、日本の林縁では一般的なつる性多年草です。葉は三出複葉である点、花が夏~秋に咲き蝶形花である点、花色が黄色である点が共通しており、区別に迷うことがあるかもしれません。しかし、これら3種は葉・花・果実にそれぞれ明確な違いが出ているので、いずれかを観察すれば簡単に判別できるでしょう。本記事ではタンキリマメ・トキリマメ・ノササゲの分類について解説していきます。
タンキリマメ・トキリマメ・ノササゲとは?
タンキリマメ(痰切豆) Rhynchosia volubilis は日本の本州(関東地方以西)、四国、九州、琉球;朝鮮、中国、フィリピンに分布し、林縁に生えるつる性多年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。
トキリマメ(吐切豆) Rhynchosia acuminatifolia は別名オオバタンキリマメ。日本の本州、九州;朝鮮に分布し、林縁や土堤に生えるつる性多年草です。
ノササゲ(野大角豆) Dumasia truncata は日本の本州、四国、九州に分布し、明るい樹林内や林縁に生えるつる性多年草です。
いずれもマメ科に含まれ、日本の林縁では一般的なつる性多年草です。
形態的には、マメ科らしく葉は三出複葉である点、花が夏~秋に咲き蝶形花である点が共通している他、これら3種では花色が黄色である点も共有しています。果実は熟すと莢が裂開し、種子を剥き出しにします。
タンキリマメとトキリマメでは更に似ていて、花や果実はほとんどそっくりです。
そのため、野外で見かけた時区別がつかない人がいるかもしれません。
タンキリマメ・トキリマメとノササゲの違いは?
しかし、これら3種の葉や花の形はかなり異なっています。
まず、タンキリマメとトキリマメはタンキリマメ属に含まれ、ノササゲはノササゲ属に含まれるため、大きな違いがあることが予想できるでしょう。
具体的な違いとしては、タンキリマメ属では葉下面に腺点があるのに対して、ノササゲ属では葉下面に腺点がありません。
これは非常に細かいですが、タンキリマメとトキリマメでは葉下面を肉眼やルーペで見ると、非常に細かい黄色い玉のようなものが無数に確認できるでしょう。
タンキリマメ属の中のタンキリマメとトキリマメに限れば、他にも違いがあります。
葉に関しては、タンキリマメとトキリマメでは上面の毛と皺が多く、下面はやや薄い緑色程度であるのに対して、ノササゲでは上面の毛と皺が少なく、下面は明らかに白っぽいです。これはどの季節でも確認しやすいでしょう。
花に関しては、タンキリマメとトキリマメでは萼片(花を包んでいる緑色の萼から伸びて尖っている部分)があるのに対して、ノササゲでは萼片が殆どありません。
果実に関しては、タンキリマメとトキリマメでは種子(豆)が2個しか入っておらず、果皮(莢)は赤く熟すのに対して、ノササゲでは種子が3〜5個も入っており、果皮は紫色に熟します。
いずれかを確認すれば簡単に区別できるでしょう。
タンキリマメとトキリマメの違いは?
同じ属に含まれるタンキリマメとトキリマメの違いに関しては難しいと思われるかもしれませんが、葉を確認すれば簡単に区別することができます。
具体的には、タンキリマメでは頂小葉は倒卵形で中央より上方でもっとも幅広く、先は鈍頭で、葉は厚く、下面に軟毛を密生するのに対して、トキリマメでは頂小葉は卵形で中央より下方でもっとも幅広く、先は細く尖り、葉はやや薄く、下面の毛は少ないという違いがあります。
要素が多いですが、タンキリマメとトキリマメの2種類で迷っている場合は、葉の先が丸ければタンキリマメ、尾状に尖っていればトキリマメという判断で十分だと思います。
また花にも違いがあり、タンキリマメでは最下の萼裂片が萼筒より長いのに対して、トキリマメでは萼裂片は萼筒より短いという違いがあります。中々確認しづらいですが花を見かけたら記録しておきましょう。
これらの要素を確認すればこちらも簡単に区別できるでしょう。
他に似た種類はいる?
同じくマメ科の野生つる性植物で、花が紫色の種類の区別方法は別記事を御覧ください。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726