ハキダメギクとコゴメギクの違いは?花にやってくるのはハナアブばかりだった!?種子は風に乗るだけでなく「引っ付き虫」でもあった!?

キク科
Galinsoga quadriradiata Ruiz & Pavon, 1798

ハキダメギクとコゴメギクはいずれもキク科コゴメギク属で、アメリカ大陸原産であるものの、現在の日本の撹乱地では極めて一般的な雑草となっています。これら2種の花の形の違いは遠目には微妙で、うろ覚えだと、区別が難しい場合があるかもしれません。しかし、この2種についてはしっかり観察すれば比較的分かりやすい部類だと思います。花弁のサイズと鋸歯の有無を確認するのが最も大事です。2種類の花が頭花を構成しており、ふつう5個の白い舌状花が頭花を縁取るように配列され、中央に黄色い筒状花が集まっています。自家受粉も可能ですがハナアブのようなハエ類が主に他家受粉を行います。果実は痩果で大きな冠毛で風散布されますが、それだけではなく、本体の剛毛によってヒトなどの動物に付着し、動物付着散布も行っていることが海外では指摘されています。本記事ではコゴメギク属の分類・形態・送粉生態・種子散布について解説していきます。

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ハキダメギク・コゴメギクとは?

ハキダメギク(掃溜菊) Galinsoga quadriradiata はアメリカ合衆国の文献ではメキシコ原産とされ(Flora of North America Committee, 2006)、大正時代に東京で見つかり、現在では関東地方以西の各地に分布し(林ら,2013)、畑、庭、路傍などの肥沃なところに生える一年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。日本の文献では「アメリカ原産」と曖昧ですが、アメリカの文献が正しいでしょう。南米に自然に広がり、中国でも見られます(Wu et al., 2011)。和名は東京の掃溜めで見つかったことに由来します。

コゴメギク(小米菊) Galinsoga parviflora は北アメリカ、西インド諸島、中央アメリカ、南アメリカ原産で、ヨーロッパ、アジア(中国含む)、アフリカ、オーストラリアに導入され、荒れた土壌、畑、果樹園、庭園、芝生、道端に生える一年草です(Flora of North America Committee, 2006)。日本では大正時代に入り、現在は全国に分布します(清水ら,2001)。

いずれもキク科コゴメギク属で、現在の日本の撹乱地では極めて一般的な雑草であると言えるでしょう。都市部でも植樹帯に生えているのをよく見かけます。

しかし、花の形の違いは遠目には微妙でうろ覚えだと、2種の区別が難しい場合があるかもしれません。

ハキダメギク・コゴメギクの違いは?

ただ、ハキダメギクとコゴメギクの違いはしっかり観察すれば比較的分かりやすいと思います(神奈川県植物誌調査会,2018)。

まず花に大きな違いがあります。ハキダメギクでは舌状花の花弁が大きく目立ち、花弁と花弁の間がかなり狭いのに対して、コゴメギクでは舌状花の花弁が小さく目立たず、花弁と花弁の間は明らかに空いています。

更にかなり細かい部分でいうと、ハキダメギクでは舌状花にも冠毛があり、筒状花の冠毛の先は刺状にとがるの対して、コゴメギクでは舌状花は冠毛を欠き、筒状花の冠毛の先には房状に毛があるという違いがあります。ただ、これを確かめるには解剖してルーペで観察する必要があるでしょう。

また図鑑ではあまり指摘されていませんが、コゴメギクの方が中央の黄色い筒状花の集まりが盛り上がってドーム状になっています。

葉にも違いがあります。ハキダメギクでは葉の鋸歯は明らかで、最大の鋸歯は長さ2mm以上であるのに対して、コゴメギクでは葉の鋸歯は不明確で、最大の鋸歯でも1mm以下となっています。

花と葉を見れば確実に判断できると思います。不思議なことに地域によってはコゴメギクの方がかなりレアな場合があるようで、例えば神奈川県では1個体しか見つかっていません。

ハキダメギクの全形
ハキダメギクの葉上面
ハキダメギクの葉下面
ハキダメギクの花
コゴメギクの葉
コゴメギクの花

花の構造は?

コゴメギク属は多くのキク科と同様に「頭花(頭状花序)」をつけます。頭花とはキク科に多く見られ、他の植物における花が集合している花序(=花の並び)のことです。その証拠にそれぞれの花に雄しべと雌しべの構造があり、特別に「小花」と呼ばれることもあります。普通の人は頭花のことを「花」と呼びますが、本来は異なります。

キク科の小花には花冠の先端が片方に大きく伸びて広がる「舌状花」と花冠が筒状になっている「筒状花(管状花)」の2種類があり、キク科の種類によって異なる組み合わさり方をしていますが、コゴメギク属ではどちらも存在します。

ハキダメギクは花期が6〜11月。上部の枝先に小さな頭花を1個ずつつけます。頭花は直径約5mmで、まわりに白色の舌状花がふつう5個並び、内側に黄色の筒状花が多数つきます。舌状花にも冠毛があり、筒状花の冠毛の先は刺状にとがります。総苞は半球形。総苞片と花柄には腺毛があります。

コゴメギクは花期が7~10月。花序柄を伸ばし、長さ1~40mm。舌状花は(3~)5(~8)個、花弁は普通、白色またはピンク色で、舌部は長さ0.5~1.8mm×幅0.7~1.5mmです。筒状花は15~50個あります。舌状花では冠毛を欠き、筒状花では冠毛の先に房状の毛があります。総苞は鐘形、直径2.5~5mm。

受粉方法は?

ハキダメギクとコゴメギクは自家受粉が可能なため、訪花昆虫なしに結実することができます(Warwick & Sweet, 1983)。

しかし、一定の昆虫による他家受粉も行っています。これは自然環境の変化や寄生生物に対抗するためでしょう。

原産地のメキシコでの研究によるとハキダメギクとコゴメギクどちらも日中の間、1時間毎に、0~15個体の昆虫が訪れています(Hernández-Villa, 2020)。その種類は殆どがハエ目で、ハチ目がほんのわずかという構成です。

具体的にどのようなハエの仲間なのかは記録がありませんが、ハナアブ科が多いと思われます。

日本ではまとまった記録はありませんが、ハキダメギクについては文献ではアシブトムカシハナバチ、アカガネコハナバチ、フタモンカタコハナバチ、シロスジカタコハナバチという小型ハナバチがやってきた記録がある他(松村,2007)、『Google画像検索』を利用すると、フタホシヒラタアブの例、ホソヒラタアブの例、セイヨウミツバチの例をそれぞれ1枚ずつ確認できました。

コゴメギク属の小さく、平らで短い頭花は口の短い昆虫のグループには最適であるといえ、白い花弁もハエの仲間が比較的好む色として知られています。多くの地域でハナアブ科や小型ハナバチが受粉に貢献しているのかもしれません。これらのグループは町中でも頻繁に見られるので、コゴメギク属の2種にとってはとても都合がいいでしょう。また最悪、昆虫が居なくても結実できるのも都市部で有利な点でしょう。

2種の花の微妙な違いが訪花昆虫に与える影響はよく分かっていません。

果実の構造は?

果実はコゴメギク属共通で多くのキク科のように痩果です。痩果は果皮が堅い膜質で、熟すと乾燥し、一室に1個の種子を持ちます。この痩果を「種」と呼ぶことがありますが、厳密にはこれは果実です。この痩果の内部に「種」、すなわち「種子」があります。

ハキダメギクの痩果は白い鱗片状の冠毛がついています。本体は長さ約1mm、黒色、光沢があり、表面には剛毛が生えます。

コゴメギクの舌状花の痩果は長さ1.5~2.5mm。冠毛は無いか、5~10個の不規則に切れ込んだ長さ0.5~1mmの鱗片があります。筒状花の痩果は長さ1.3~2.5mm、無毛または剛毛があり、冠毛は無いか、15~20個の鱗片があります。

種子散布方法は?

キク科の痩果の多くはタンポポに代表されるように、冠毛をつけ、風に乗って飛ばされる「風散布」を行います。

コゴメギク属も冠毛の存在から風散布を行っていることは間違いないでしょう。

しかし、コゴメギク属は他の方法でも種子散布を行っていることが海外の文献では指摘されています(Warwick & Sweet, 1983)。痩果の表面には剛毛も存在しており、これによって横を通る動物の毛やヒトの衣服に付着することが可能なようです。つまり「引っ付き虫」であり、「動物付着散布」を行っているということです。

種子の長距離はむしろ、ヒトの衣服に付くことによる動物付着散布が主であると考えられていて、風散布は局所的な短い距離の移動に適していると考えられています。

室内観察ではハキダメギクは1頭花あたり平均29種子、1株あたり平均334個の頭花をつけ、コゴメギクは1頭花あたり平均26種子、1株あたり平均283個の頭花をつけていた記録があります。また、コゴメギクの1株が一生の間に生産する頭状花数は13,400個で、種子は合計400,000粒であると推定されています。

2つの種子散布方法とこの種子生産力もまた繁殖力の強さに繋がっていると言えるでしょう。

引用文献

Flora of Northa America Committee. 2006. Flora of North America, Volume 19 Magnoliophyta: Asteridae, Part 6: Asteraceae, Part 1. Oxford University Press, Oxford. 579pp. ISBN: 9780195305630

林弥栄・門田裕一・平野隆久. 2013. 山溪ハンディ図鑑 1 野に咲く花 増補改訂新版. 山と渓谷社, 東京. 664pp. ISBN: 9784635070195

Hernández-Villa, V., Vibrans, H., Uscanga-Mortera, E., & Aguirre-Jaimes, A. 2020. Floral visitors and pollinator dependence are related to floral display size and plant height in native weeds of central Mexico. Flora 262: 151505. https://doi.org/10.1016/j.flora.2019.151505

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

松村雄. 2007. ハナバチ類の生態 ―千本松牧場のハナバチ類調査を軸として―. 那須野が原博物館紀要 3(1): 1-18. https://doi.org/10.34372/nasunogahara.3.1_1

清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. 日本帰化植物写真図鑑 plant invader 600種 改訂. 全国農村教育協会, 東京. 553pp. ISBN: 9784881370858

Warwick, S. I., & Sweet, R. D. 1983. The biology of Canadian weeds: 58. Galinsoga parviflora and G. uadriradiata (= G. ciliata). Canadian Journal of Plant Science 63(3): 695-709. https://doi.org/10.4141/cjps83-087

Wu, Z. Y., Raven, P. H., & Hong, D. Y., eds. 2011. Flora of China Volume 20-21 (Asteraceae). Science Press, Beijing & Missouri Botanical Garden Press, St. Louis. 993pp. ISBN: 9781935641070

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