ソテツ科 Cycadaceae は、ソテツ綱ソテツ目に属する植物の科。現生種はいずれも常緑木本。葉は羽状複葉で、小葉は細長くとがります。茎先に多数つき、基部は茎に残ります。雌雄異株で、花は茎に頂生または側生します。雄蕊(小胞子葉)は鱗片状で、下面に多数の小胞子嚢(葯胞)がつきます。雌蕊(大胞子葉)は葉に似た形で、ふちに胚珠が数個つきます。花粉は前葉体細胞を1個含みます。胚珠内の花粉室で発芽し花粉管で固着し精子を放出します。胚嚢中には造卵器が数個あり、そのうち1個の卵細胞が受精します。根には藍藻が共生し窒素固定を行っています。現生種は100種ほどで、東南アジアを中心とする熱帯・亜熱帯に分布します。日本にはソテツだけが南西諸島などに自生します。
本記事ではソテツ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
No.0001 ソテツ Cycas revoluta
常緑低木。漢字では「蘇鉄」で、鉄を肥料にすると樹勢が増すため枯れかかった時に鉄の釘を打ち込むと蘇ることに由来します。根に珊瑚状の根粒があります。幹は高さ3(~8)m、幅45(~95)cm、基部とときに先で多くの、不規則な側枝または珠芽をつけ、先は綿毛があります。樹皮は灰黒色、鱗片状。葉は40~100個またはそれ以上、羽状複葉、長さ0.7~1.4(~1.8)m、幅20~25(~28)cm。葉柄は断面でほぼ四角形、長さ10~20cm、両側面に6~18個の刺があります。葉身は長楕円状披針形~楕円状披針形、横断面で強くV形になり、反曲し、幼時、褐色の綿毛があります。小葉は60~150対つき、中軸の上に水平から45度の角度でつきます。成熟すると粉白色でなく、直線形~類かま形、長さ10~20cm、幅4~7mm、革質、葉裏にまばらに短毛があり、基部は沿下し、縁は強く反曲し、先は尖鋭形。低出葉は三角形、長さ4~5cm、幅1.5~2.3cm。風媒花。花粉錘は淡黄色、卵状円柱形、長さ30~60㎝、幅8~15㎝、小胞子葉は狭い楔形、長さ3.5~6cm、幅1.7~2.5cm、先は円状切形、先端が鋭く堅くなります。大胞子葉は黄色~淡褐色、長さ14~22cm、密に綿毛があります。柄は長さ7~12㎝。不稔の葉身部分は卵形~狭卵形、長さ6~11cm、幅4~7cm、深く切れ込んだ鋸歯状、裂片は21~35個、長さ1~3cm。胚珠は柄の両側に2~3個、淡褐色の綿毛が密集してつきます。種子は2(~5)個、橙色~赤色、倒卵形~楕円形、やや扁平、長さ(3~)4~5cm、幅2.5~3.5cm、まばらに毛があります。木質の硬果皮(sclerotesta)は両側に溝がありません。種子が熟すのは9月~10月。ソテツの根の珊瑚状の根粒には藍藻類を共生させており、それらが窒素固定能を持つため、窒素分の乏しい土地でも生育できます。全草にサイカシンが含まれ摂取した場合、体内でホルムアルデヒドに変化して急性中毒症状を起こします。日本列島の九州南端、南西諸島;台湾、中国大陸南部に分布し、主として海岸近くの岩場に生育します。日本を中心に観賞用に盛んに様々な国で栽培されます。中国では福建省東部に広く分布していましたが、業者による過剰な収集と生息地の破壊により、現在では大幅に減少しています(Flora of China)。毒性があるものの、サイカシンは水溶性があるため、水に晒し発酵させ、乾燥させることで食用とされ、沖縄県の琉球王国時代には「ナリガイ」、奄美群島や沖縄県粟国島では「蘇鉄味噌」といった救荒食になっていました。しかし、加工処理が上手くいかないと当然中毒になり、大正末期から昭和初期に南西諸島ではモノカルチャー経済などが原因で経済が行き詰まり、更に追い打ちをかけるように飢饉が起こったことで、「ソテツ地獄」と呼ばれる経済恐慌が起きた時には加工処理を行う余裕もなく食用してしまい、中毒による死傷が発生しました。