【種子植物図鑑 #003】イチョウ科の種類は?写真一覧

種子植物図鑑
Ginkgo biloba

イチョウ科 Ginkgoaceae は落葉高木。葉は偏平に広がり、葉脈は葉柄付け根から二叉分岐を繰り返し、平行脈となり上部葉縁に達します。雌雄異株・雄花は細い軸に多数の葯をつけます。雌花は花柄の先に多くは2個の胚珠を上向きにつけます。受精は精子によります。種子は球形、外種皮は肉質、内種皮は硬いです。1属1種のみ。

本記事ではイチョウ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

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No.0002 イチョウ Ginkgo biloba

落葉高木。大きいものは高さ30m、直径2.5mほどになります。老木の枝にはしばしば乳と呼ばれる気根の一種が見られます。樹皮は灰白色。粗く縦に裂けます。コルク層が発達し、押すとやや弾力があります。枝は長枝と短枝があります。葉は長枝では互生し、短枝では輪生状につきます。葉身は幅5〜7cmの扇形で、無毛。葉の切れ込み方は変化が多い。二又脈系をもつことは大きな特徴です。雌雄別株。歯の展開と同時に開花します。雄花も雌花も短枝に束生します。雄花は長さ2cmほどの円柱形。雌花は長さ2〜3cm、細長い柄の先に胚珠がふつう2個つく。風に運ばれた花粉が胚珠内に入り、花粉室で発芽して精子ができます。精子は8月下旬頃から放出され、卵細胞を受精させます。種子は銀杏(ぎんなん)と呼ばれます(果実ではありません)。10〜11月に熟すと外種皮は黄色くなり、悪臭がします。中種皮は白くてかたく、2〜3稜があります。直径約2.5cmの球形で9月頃成熟します(樹に咲く花)。イチョウは「生きている化石」で新生代のほとんどを通じて北半球に広く分布していましたが、新生代後期の気候の寒冷化と乾燥によって中国原産で浙江省西天目山、重慶特別市南州郡金佛山の2カ所でのみ生き延びていたものが植栽によって広がりました(Crane, 2019)。日本では一度絶滅しましたが、中国からの個体が文献記録では少なくとも鎌倉時代に渡来し室町時代から栽培され始めたといわれています(堀,2001)。しかし平安時代には仏教とともに渡来したという説もあります(片倉ら,2019)。日本での分布拡大は銀杏(種子)だけでなく挿し木によっても行われたため、クローン個体が見られます。秋の黄葉が美しく、土地を選ばず生育し、萌芽力がさかんで、病虫害が少なく、強い剪定にも耐えるため、庭園樹、公園樹、街路樹、防風樹、防火樹などとして植栽されます。神社や公園、街路に多く植栽され、ときに丘陵地や平地で逸出したと思われる幼木が見られます。また、街路樹として植栽されたイチョウの樹下には初夏に多数発芽していることがあり、ほとんどは消滅してしまいますが、ごく稀に幼木に育っているものがあります。銀杏は加熱し種皮の内表皮を外すことで胚乳が食用でき、茶碗蒸しやおこわなどの具に使われたり、煮物や鍋物、揚げ物、炒め物など広汎な料理に用いられ、酒の肴としても用いられます。一方で毒性があり、種皮の外表皮の乳白色の乳液にはギンコールやビロボールといったギンコール酸と呼ばれるアルキルフェノール類の脱炭酸化合物が含まれており、アレルギー性皮膚炎を誘発します。食用についても胚乳にビタミンB6の類縁体4′-O-メチルピリドキシンが含まれ小児では7個以上、大人では40個以上の摂取で食中毒になるとされていますが、経口摂取不良・偏食・アルコール多飲等ビタミンB6の摂取量の増減によって症状は異なります(宮崎ら,2010)。種子の臭いの元は酪酸で、肉質外層含まれています。酪酸は人間の嘔吐物の特徴的な臭いですが、クレイン氏は臭いが強いものを好む動物に食べられることを狙い、排出によって種子散布することを狙ってるとの仮説を提唱しています。イチョウについてはCrane(2013=2021)でとても詳しく学べます。

イチョウの樹形
イチョウの樹形
イチョウの葉
イチョウの葉
イチョウの樹皮
イチョウの樹皮
イチョウの種子=銀杏
イチョウの種子=銀杏

引用文献

Crane, P. R. 2013. Ginkgo: the tree that time forgot. Yale University Press, New Haven. 384pp.ISBN: 9780300187519[=2021. イチョウ奇跡の2億年史. 河出書房新社, 東京. 504pp. ISBN: 9784309467412]

Crane, P. R. 2019. An evolutionary and cultural biography of ginkgo. Plants, People, Planet 1(1): 32-37. https://doi.org/10.1002/ppp3.7

堀輝三. 2001. イチョウの伝来は何時か… 古典資料からの考察…. Plant Morphology 13(1): 31-40. https://doi.org/10.5685/plmorphol.13.31

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

片倉慶子・河上友宏・渡辺洋一・藤井英二郎・上原浩一. 2019. 日本のイチョウ巨木の遺伝的変異の地域的特性. 日本緑化工学会誌 44(4): 606-612. https://doi.org/10.7211/jjsrt.44.606

宮崎大・久保田哲史・林下浩士・鍜冶有登・小林大祐・吉村昭毅・和田啓爾. 2010. 健常成人に発症した銀杏中毒の1例. 日本救急医学会雑誌 21(12): 956-960. https://doi.org/10.3893/jjaam.21.956

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