サルトリイバラ科 Smilacaceae は別名シオデ科。多年草か半低木。多くはつる植物。ふつうは短い根茎を持ちます。葉は互生し、葉柄に巻ひげを持ちます。花序はふつう散形。花被片はふつう離生し、外花被片と内花被片は同形同質で、各3個。子房は上位。液果を持ちます。世界に4属370種以上があり北半球の熱帯~亜熱帯に多いです。日本に2属9種がいます。本記事ではサルトリイバラ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
No.0318 サルトリイバラ Smilax china var. china
夏緑の蔓性低木。茎は硬く、ジグザグに伸び、まばらに刺があります。葉身は卵円形。花は3~4月、葉の展開とともに、黄緑色の小花を球形状の花序に開きます。果実は球形、径8~10mm、赤く熟します。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国、インドシナに分布します。海岸から山地の林縁や林内に生えます。
No.0318.1 トゲナシサルトリイバラ Smilax china var. yanagitai
茎にほとんど刺のないサルトリイバラの変種。別名トキワサルトリイバラ。刺がないほか、果実はやや大きく、葉身は大型で幅広く、卵円形~腎円形、直径6~12cm。葉身の両端は円いかあるいは凹み、翌年の2月ごろに落葉します。本州(関東地方以西)、四国、九州、小笠原;台湾、インドシナに分布します。
No.0320 ヒメカカラ Smilax biflora
つる性落葉低木。高さ20~35cm。茎はよく分枝し、ややつる状になり、刺が多いです。葉は互生し、楕円形で、長さ5~15mm。縁は波打ち、巻きひげはないか、あってもごく短いです。花は散形状に1~3個つき、黄緑色で径約3mm。花期は4~5月。花柄は短い。果実(液果)は球形で径4~5mm、赤熟する。九州(屋久島)固有種、山地林縁に生息します。
No.0323 シオデ Smilax riparia
つる性草本。茎や葉は草質で柔らかい、葉身は卵状長楕円形、基部は心形、花は6~7月、淡緑色。果実は黒く熟します。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国、ウスリーに分布する。県内全域に普通に見られ、林縁や林内に生えます。若い芽を食用にします。葉身の下面がざらつく1型をザラツキシオデ f. maximowiczii といい、基本種に混生します。
No.0324.a サツマサンキライ Smilax bracteata
つる性半低木。草丈は10m位にもなる。茎は太くて分枝し、滑らかで疎らに刺があるかない。葉は互生し、葉身は卵形~長楕円形、長さ5~10cm、幅3~13cm。先は急鋭尖頭で、厚くてややツヤがあります。花期は12~2月、花は雌雄異株で、葉腋から長さ5~8cmの花序枝を出し、散状花序に多数の花をつけ、時には分枝して2~3個の花序をつける場合もあります。花は黄橙色~帯黄色、雄花の花被片は線状長楕円形で、長さ約5mm、開花時には著しく反り返ります。雌花の花被片は卵形長楕円形で、長さ約2.5mmと小さいです。果実(液果)は楕円形で長さ5~7mm、黒熟します。九州(南部)~沖縄;台湾、インドシナ、フィリピン、ミクロネシアに分布、山地の林縁に生息します。
サルトリイバラ科の検索表
神奈川県を中心とした付近では以下の検索で区別できます。
- 草本、茎は冬に枯れる。茎には刺がない
- 茎はつる性で長く伸び、葉の下面は淡緑色で光沢がある。花は6~7月に咲き、葯は長楕円形で長さ1mm → シオデ
- 茎は花期には直立し、葉の下面は緑白色で光沢はない。花は5~6月に咲き、葯は線形で長さ1.5mm → タチシオデ
- 半低木のつる植物、茎は冬に枯れない。茎に刺があるか、またはない
- 茎は著しい刺をつける。葉身は硬く、薄い。果実は藍黒色に熟す → ヤマカシュウ
- 茎はまばらに刺があるかない。葉身は革質。果実は赤く熟す
- 茎はまばらに刺がある。葉身は卵形から長楕円形 → サルトリイバラ
- 茎はほとんど刺がない。葉身は円形~腎円形 → トゲナシサルトリイバラ
サツマサンキライはサルトリイバラに似ていますが、散状花序をつける点が異なります。
またヒメカカラは明らかに葉が他の種より小型です。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726