キジカクシ科 Asparagaceae は別名クサスギカズラ科。多年草、木本、またはつる植物。根茎、または鱗茎をもちます。葉は互生、対生、輪生し、茎の基部に集まることもあります。末端の枝が葉状になることもあります(クサスギカズラ属、ナギイカダ属)。茎頂や葉腋に花を単生させるか、総状や散形の花序をもち、多様です。両性花をつけます。花被片は離生または合着し、外花被片と内花被片が各3個あり、同形のものも異形のものもあります。子房はふつう上位。液果をもつものも、蒴果をもつものもあります。世界に広く分布し153属約2,500種があります。日本に14属56種があります。クサスギカズラ科には、液果・根茎の特徴をもつキジカクシ亜科 Asparagoideae の大部分のほか、ヤブラン亜科 Ophiopogonoideae、ツルボ亜科 Scilloideae の全体と、ツルボラン亜科 Asphodeloideae とされていたギボウシ属が含まれます。ワスレグサ科 Asphodelaceae、ヒガンバナ科 Amaryllidaceae などとともにキジカクシ目(クサスギカズラ目)に含まれます。
本記事ではキジカクシ科(クサスギカズラ科)の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は塚本(1994)、神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
- No.0557 オオアマナ Ornithogalum umbellatum
- No.0557.a ニセカイソウ Albuca bracteata
- No.0558 ニシキユリ Hyacinthus orientalis
- No.0560 ツリガネズイセン Hyacinthoides hispanica
- No.0560.a フォルベシーユキゲユリ Scilla forbesii
- No.0561 ルリムスカリ Muscari botryoides
- No.0561.a ブドウムスカリ Muscari armeniacum
- No.0561.b ポレエバンシーホシオモト Eucomis pallidiflora subsp. pole–evansii
- No.0561.c オウトゥムナリスホシオモト Eucomis autumnalis
- No.0561.d タマツルクサ Bowiea volubilis
- No.0563 オリヅルラン Chlorophytum comosum
- No.0563.1 ソトフオリヅルラン Chlorophytum comosum ‘Variegatum’
- No.0564 アオノリュウゼツラン Agave americana
- No.0564.1 リュウゼツラン Agave americana ‘Marginata’
- No.0565.a フキアゲ Agave stricta
- No.0566 アツバキミガヨラン Yucca gloriosa var. gloriosa
- No.0567 キミガヨラン Yucca gloriosa var. recurvifolia
- No.0568 イトラン Yucca filamentosa
- No.0568.a センジュラン Yucca aloifolia
- No.0568.b フイリセンジュラン Yucca aloifolia ‘Marginata’
- No.0571.a ハルシオンギボウシ Hosta ‘Halcyon’
- No.0574 コバギボウシ Hosta sieboldii var. sieboldii f. spathulata
- No.0578 センネンボク Cordyline fruticosa
- No.0578.a ニオイシュロラン Cordyline australis
- No.0579 クサスギカズラ Asparagus cochinchinensis var. lucidus
- No.0582 オランダキジカクシ Asparagus officinalis
- No.0584 リュウケツジュ Dracaena draco
- No.0584.a ベニフクリンセンネンボク Dracaena concinna
- No.0584.b ニオイセンネンボク Dracaena fragrans
- No.0584.c ホシセンネンボク(フロリダビューティ) Dracaena surculosa ‘Florida Beauty’
- No.0584.d トックリラン Beaucarnea recurvata
- No.0586.1 フクリンチトセラン Dracaena trifasciata ‘Laurentii’
- No.0587 ハラン Aspidistra elatior
- No.0588 オモト Rohdea japonica
- No.0589 キチジョウソウ Reineckea carnea
- No.0590 ヤブラン Liriope muscari
- No.0590.1 フイリヤブラン Liriope muscari f. variegata
- No.0591 コヤブラン Liriope spicata
- No.0593 ジャノヒゲ Ophiopogon japonicus var. japonicus
- No.0593.1 タマリュウ Ophiopogon japonicus var. japonicus f. nanus
- No.0593.2 シロバナナガバジャノヒゲ Ophiopogon japonicus var. umbrosus f. leucanthus
- No.0594.a ノシラン Ophiopogon jaburan
- No.0597 アマドコロ Polygonatum odoratum var. pluriflorum
- No.0599 ナルコユリ Polygonatum falcatum
- No.0601 ミヤマナルコユリ Polygonatum lasianthum
- No.0603.1 ドイツスズラン Convallaria majalis
- 引用文献
No.0557 オオアマナ Ornithogalum umbellatum
多年草。ヨーロッパ、西南アジア原産で耐寒性があり、鱗茎は球形で径3cmくらいとやや小さいが、小球をよくつけ増殖は容易です。葉はやや広く、2~16mm。典型的な個体では、中肋が白くなります。12~20個の花を散状につけ、下部の花茎は長く10cmほどになります。花径は2.5cmで花色は白く、花被弁の外側は緑色に地に白色の線条が入ります。花は午前11時ごろ開き、午後3時ごろには閉じます。開花時期は4月。地中海沿岸地方原産の帰化植物。日本へは明治の始めに観賞用に入ってきました。花序が散房状で花数が6~10個のホソバノオオアマナと混同されてきました。
No.0557.a ニセカイソウ Albuca bracteata
多年草。径10cmになる鱗茎を持ちます。葉は根出し、長さ30~60cm、幅2~4cmの線形で、先が尾状にとがります。高さ30~80cmの花茎に50~100個ほどの花を散房~総状に密につけます。花は径2.5cmで花被片は6個あり、内側は白色地で中央に緑色の筋、外側は緑色の太い筋が目立ちます。果実は蒴果です。干ばつの時期に葉が枯れる地中植物です。南アフリカ(ケープ州とクワズール ナタール州)原産で、東アフリカの熱帯地方でも見られますが、導入された可能性があります。森林、林縁、閉ざされた森林地帯、保護された斜面に生息します。日本を含む各国で観賞用に栽培されます。
No.0558 ニシキユリ Hyacinthus orientalis
球根性多年草。別名ヒアシンス。鱗茎をもち、春先に肉質で幅2cmで長さ20cmほどの4~6個の葉を出し、その根出葉の中心部から太い花茎を立てます。4月に径3cmくらいの漏斗状の花を多数総状につけます。花被は6裂し、裂片が開出して反転します。雄しべは6個あり、花筒中部につきます。果実は3稜形の蒴果で3室からなり、3弁で裂開します。野生種の花色は青紫色ですが、桃、紅、白、黄色などの園芸品種があります。球根は層状鱗茎。母球は消耗することなしに残存肥大し、大球の場合は、3年にわたって形成された鱗片で構成されており、外側は紙状の薄い外皮でおおわれています。外皮の色は花色とほぼ同じ色をしているので、鱗茎を見ると花色がおおよそわかります。ギリシア、シリア、小アジアなどの地中海沿岸地域に分布します。16世紀にイタリアを経てヨーロッパに伝わり、オランダを中心にして改良がされたダッチ・ヒアシンスと、フランスで改良されたローマン・ヒアシンスとができました。後者は丈夫でつくりやすいですが、花も房も小さいので栽培は少なく、ダッチ・ヒアシンスのほうが一般に普及して、とくに18世紀になり人気を呼びました。日本に紹介されたのは江戸時代、安政年間(1854~60)でしたが、一般に栽培されるようになったのは大正時代(1912~26)に入ってからです。ヒアシンスは、かつて2000もの園芸品種があったといわれていますが、花色の多様性だけで、チューリップ属やスイセン属ほどには草姿や花形の変化がありません。これは野生種1種だけに由来し、種間雑種がつくられなかったためとされます。
No.0560 ツリガネズイセン Hyacinthoides hispanica
球根性多年草。葉は線状披針形から披針形。花期は4~5月。直立した花茎の先端に総状花序を伸ばし、やや細長い筒状で釣鐘形の先端が開いた可愛い小花を10輪ほど付けます。果実は蒴果。ポルトガルと西スペインを含むイベリア半島の西部(極端な北西部を除く)に自生していますが、日本を含む多くの国で栽培されています。多くのヨーロッパ諸国、北アメリカ、オーストラリアで帰化しています。
No.0560.a フォルベシーユキゲユリ Scilla forbesii
フォルベシーユキゲユリは筆者の仮称。園芸でチオノドクサと呼ばれる個体群の一部。多年草。球根は長さ12cm、幅2cmまでの2つの葉と、長さ10.5cmまでの1つの花茎を生成します。花は広いピラミッド型の総状花序で、1茎あたり最大12個の花をつけます。下のものは外向き、上のものは上向きです。各花は直径3cmまでで、個々の花弁の長さは1.3cmです。各花被片の基部は白く、白い「目」を作り出します。花被片の外側は濃い青色から紫青色です。雄しべの基部は平らで、花の中央に密集している点で同属の別種から区別されます。トルコ西部および南部原産です。日本を含む多くの国で観賞用に栽培されます。
No.0561 ルリムスカリ Muscari botryoides
多年草。高さは20(~30)cmまで。球根は卵形、1.5〜2.5 × 1〜2cm、側枝はなく、半透明〜淡褐色。葉は2~4(~5)枚。葉身は顕著な稜があり、線形~散形、15~35(~40)cm × 3~8(~12)mm、頂部は急に縮みます。花期は3~5月。花柄は20〜35(~40)cmで通常葉をわずかに越えます。総状花序は12~20個。花は花筒は空色、球形から卵形、2~4 × 2~3mm、縁は白色、花柄は広がり、1~3(~5)mm。果実は蒴果。4〜6 × 4〜6mmで3裂します。中央ヨーロッパと南東ヨーロッパが原産で、開けた森林地帯と山の牧草地で育ちます。日本を含む各国で観賞用に栽培され、アメリカでは逸出します(Flora of North America)。ムスカリ類の同定に関しては日本のインターネットでは情報が乏しいですが、『Flora of North America』で明確に記載されています。ルリムスカリはブドウムスカリと同じく花筒は空色であるものの、総状花序としてつく花がルリムスカリでは12~20個なのに対してブドウムスカリでは20~40個となっていることから区別できます。
No.0561.a ブドウムスカリ Muscari armeniacum
多年草。別名オオルリムスカリ。高さ15~22.5cm。球根は直径2.5cm以下(円周10cm)、わずかに長くなり、薄皮は褐色(灰色)。葉は秋に出て、花時まで残ります。葉は(3~)6~8個つき、線形、長さ30~40cm×幅3~8(~10)mm、凹凸、凸面は光沢のある緑色、凹面は鈍く、粉白色を帯び、常に、花茎より長い。花茎は球根に1~3本つき、約20(~30)cm。総状花序は花茎の上につき、円錐形、太く、長さ2~10cm、20~40個の花を密につけます。ブドウの房をひっくり返したように見えるため、grapeの名で呼ばれます。苞は小さく、白色。花はわずかに芳香があります。花柄は花よりわずかに短い。花冠はつぼ形~杯形(長楕円形~倒卵形)、口部はくびれ、長さ6~7mm、濃紫青色~明るい青色、歯は白色。不稔の花は総状花序の先に2~10(18以下)個つき、不稔の花は花柄がありません。全体に明るい青色。種子は長さ約2mm、黒色。花期は3~5月(南半球8~10月)。果期は南半球10~12月。
No.0561.b ポレエバンシーホシオモト Eucomis pallidiflora subsp. pole–evansii
ポレエバンシーホシオモトは筆者の仮称。多年草。園芸でユーコミスと呼ばれるものの一部。Eucomis pole-evansii ともされますが、最近の論文では亜種とされることが多いようです(例えばRasethe et al., 2019)。学術的経緯不明。非常に大きなロゼット葉があり、花期は夏。高さ1.3~1.5mに達する紫色の斑点のある太い花茎には、緑または緑がかった白い花が螺旋状に咲きます。開花後、花頭に沿って紫~黒の果実が形成します。南アフリカ原産で各国で観賞用に栽培されます。
No.0561.c オウトゥムナリスホシオモト Eucomis autumnalis
オウトゥムナリスホシオモトは筆者の仮称。多年草。園芸でユーコミスと呼ばれるものの一部。他のEucomis種と同様に、ロゼット葉があります。葉は長さ55cmまで、幅6~13cmで、波状の余白があります。夏の終わりにつくられる甘い香りの花序は密集した総状花序で、全体の高さは30~45cmに達します。個々の花には緑、黄緑、または白の花被片があり、長さ2~10mmの小花柄に生えています。雄しべの花糸は基部で結合して、わずかにカップ状の構造を形成します。花序の上部には、緑色の苞葉があり、最大65mm。全体に紫色はありません。マラウイから南アフリカのケープ州が原産で、各国で観賞用に栽培されます。
No.0561.d タマツルクサ Bowiea volubilis
多年草。多肉植物で、径20cmに及ぶタマネギにも似た鱗茎を持ちます。表面は平滑で淡緑色。鱗茎頂部より、1~2本の蔓性茎を伸ばします。この蔓性茎は1年性です。茎は途中で分枝を繰り返しながら上方へと伸びて行き、最長2~3mに及びます。春~夏にかけて淡緑色6弁の小花を付けるが目立ちません。葉は殆ど退化しています。ケニアからケープ州にかけての南アフリカが原産で、日本を含む各国で観賞用に栽培されます。
No.0563 オリヅルラン Chlorophytum comosum
常緑多年草。葉は細長く20~30cmになります。先端はとがります。根は多肉質で群生します。葉間からランナーを出し、その節に気根を伸ばした新植物(苗)を発生します。この数段にも垂れ下がった新植物の気根を出した姿から、オリズルランの名がつきました。花は白色で春にランナーのいくつかの節に小さな花をつけます。南アフリカのナタール原産で、日本では観賞用に栽培されます。ナカフオリズルラン ‘Vittatum’ は、葉が中斑となる園芸品種。
No.0563.1 ソトフオリヅルラン Chlorophytum comosum ‘Variegatum’
緑葉に白覆輪の入ったオリヅルランの園芸品種。
No.0564 アオノリュウゼツラン Agave americana
常緑性多年草。メキシコおよび米国テキサス州原産で、日本を含む世界中で観賞用に栽培され、一部の国で帰化します。暑い気候や干魃がおこる場所に生息します。寿命の長さから「世紀の植物」と呼ばれ、日本では50年以上生きるとされることもありますが、これはおそらく嘘で英語圏の情報を参照すると通常は10~30年生きるとされています(科学文献未発見)。約1.8~3.0mの広がりを持ち、長さ0.9~1.5mの灰緑色の葉があり、それぞれにとげのある縁があり、先端に深く突き刺すことができる重いスパイクがあります。一捻性植物に含まれ、寿命の終わり近くに、黄色い花をたくさんつけた背の高い枝分かれした茎を伸ばし、その高さは最大で8~9mに達することがあります。夜間はコウモリが蜜や花粉を食べにやってきて送粉されるコウモリ媒で、日中はハチドリがやってくるハチドリ媒を併用しています(Knudsen & Tollsten, 1995)。具体的な種類を記載した文献は確認できませんでした。一方、ウスバリュウゼツラン Agave angustifolia ではソーシュルハナナガコウモリ Leptonycteris curasoae がほぼ専門に蜜や花粉を食べにやってきて送粉されるコウモリ媒です(Molina-Freaner & Eguiarte, 2003)。Agave属の野生種および栽培種における受粉生態はまだほとんど調べられていないのが現状でその総説はTrejo-Salazar et al.(2016)で確認できます。開花後に枯れますが、根元から不定芽を出し、次世代として成長を続けます。一捻性植物で背の高い花序、より多くの花、蜜、複雑な炭水化物を生産する理由はすべて長距離送粉が可能なコウモリ媒への適応であると考えられています(Eguiarte et al., 2021)。めったに開花しないのはおそらくこれらの生産にとても長い時間がかかるからだとに思われます。花が咲く前に花茎を切ると、アグアミエル(蜂蜜の水)と呼ばれる甘い液体が植物の中空の中心部に集まります。コロンブス以前のメキシコではこれを発酵させて、プルケまたはオクトリと呼ばれるアルコール飲料を製造していました。これを蒸留酒にしたものがメスカルです。アオノリュウゼツランはメスカルに使用されるリュウゼツランの一種です。なお、アオノリュウゼツランがメスカルのうち著名なテキーラの原材料とされることもありますが、これも嘘でテキーラはテキーラ町で製造され、テキーラーリュウゼツラン Agave tequilana が主成分として用いられるものを指すので、本種とは異なります。同じくテキーラーリュウゼツランもコウモリによって花粉が媒介され保全にはコウモリとセットで考える必要があります(Trejo-Salazar et al., 2016)。葉はピタと呼ばれる繊維にもなっていました。
No.0564.1 リュウゼツラン Agave americana ‘Marginata’
各葉の縁に沿って黄色の縞模様があるアオノリュウゼツランの品種。和名と学名の関係が逆になっていることに注意。
No.0565.a フキアゲ Agave stricta
常緑性多年草。高さ50cmに成長する常緑の多肉植物で、ロゼットの直径は50~60cm、狭いとげのある細長い葉が放射状に伸びます。夏に、長さ2mの直立した総状花序を生成し、赤みがかった紫色の花を咲かせます。夏に葉が赤みを帯びることがあります。メキシコ南部のプエブラとオアハカに自生します。日本では観賞用に栽培されます。コウモリ媒やハチドリ媒の可能性がありますが、研究した文献は確認できませんでした。
No.0566 アツバキミガヨラン Yucca gloriosa var. gloriosa
常緑低木。別名ユッカ(同属総称でもあります)。高さ50~250cmで分枝します。葉は長さ60~75cmで幅5cm内外で、質はかたくぶ厚く濃緑色から後に灰緑色となり、先端は針状にとがります。花は直立し、高さ1~2mで円錐花序となり、多数の白色の花をつけます。個々の花は鐘状で大きく、径10cm近くにもなります。開花時期は、6月で秋にもう一度咲くことがあります。果実は革のような細長い果実です。アメリカ合衆国南部原産で海岸沿いの露出した砂丘と防波島に生育します。日本でもっとも多く植栽されている種です。本種を含むYucca属は蛾の仲間であるユッカガ類 Tegeticula や Parategeticula と絶対送粉共生の関係にあることが分かっています(川北,2012;石井,2020)。メスのユッカガは雌しべに産卵することを目的にYucca属にやってきます。このユッカガは特殊化した触角で別のYucca属個体の花粉をかき集めて持ってきているため、Yucca属は受粉します。一方、ユッカガが産み付けられた卵は雌しべが成熟し種子になる頃孵化し、幼虫は種子を食べることで成長を完結させます。Yucca属はユッカガに種子を食べられすぎないように一定以上雌しべへの産卵があると果実への成熟を停止させる、という生理現象を発現させることでユッカガの行動を調整しています。ユッカガが居ないので日本で果実は殆ど出来ません。アツバキミガヨランは Tegeticula yuccasella によって送粉され、極稀に導入されたセイヨウミツバチも訪れます(Heyduk et al., 2021)。薄い果実は風によって運ばれます(川北,2012)。Yucca属とユッカガの共生関係は米国とメキシコの本土でしか見られません。
No.0567 キミガヨラン Yucca gloriosa var. recurvifolia
キミガヨランはより背が高く、葉が少し柔らかいため下部の葉が半ばで折れるアツバキミガヨランの変種。米国南東部である海岸沿いのバージニア南東部から南はフロリダ、西はテキサスまで原産。
No.0568 イトラン Yucca filamentosa
常緑低木。『Ylist』では Yucca flaccida となっています。Yucca flaccida は Yucca filamentosa に含まれるという考えがあります(NCBI,Flora of North America)。Yucca filamentosa の方が記載年は古く『Ylist』で Yucca flaccida としている経緯は分かりません。通常は幹がなく、長さ75cm、糸状、青緑色、ひも状の葉を持ち、多吸盤です。葉の縁に沿った白い糸状のフィラメントがあることによって、他のユッカ種と容易に区別されます。花茎は高さ3mにもなり、初夏に垂れ下がったクリーム色の花が咲きます。バージニア州南東部からフロリダ州まで、西はテキサス州南部および南東部に自生しています。砂質土壌、特に海岸の低木や砂丘で最も一般的に見られます。日本では観賞用に栽培されます。Yucca filamentosa はユッカガの仲間の Tegeticula cassandra や北部の個体群は遠縁の T. yuccasellaによって受粉されて(Svensson et al., 2005)、Yucca flaccida は Tegeticula intermedia に受粉され(Pellmyr, 1999)、絶対送粉共生の関係にあります。
No.0568.a センジュラン Yucca aloifolia
常緑低木。直立した幹を持ち、直径7.6~12.7cmで、上部が重くなり倒れる前では高さ1.5~6.1mに達します。倒れると、先端は上向きになり、成長し続けます。幹はそれぞれ約0.61mの長さの細かい鋸歯のある鋭く尖った帯状の葉で武装しています。成長している先端近くの若い葉は直立しています。古いものは下向きに曲がり、古いものは枯れて茶色になり、下の幹にぶら下がっています。最終的に幹の先端には、長さ0.61mの白い紫がかった花の穂状花序が発達し、それぞれの花の直径は約12.7cmになります。開花後、幹は成長を止めますが、すぐに1つまたは複数の側芽が形成され、最上部が新しい頂芽になります。幹の基部近くに新しい芽、または分枝を生成します。米国南東部であるバージニア南部から南はフロリダ、西はテキサス湾岸、ユカタン海岸沿いのメキシコ、バミューダ、およびカリブ海の一部まで、米国の大西洋および湾岸に自生し、乾燥した砂浜や低木の海岸地域に生息し、茂みを形成します。日本を含む多くの国で観賞用に栽培されます。メキシコで自生するメキシコチモラン Y. elephantipes が初期のヨーロッパ人入植者によって導入され選択された変種とする仮説があります。米国南部ではユッカガの仲間の Tegeticula yuccasella や T. cassandra によって受粉され、絶対送粉共生の関係にあります(Rentsch & Leebens-Mack, 2014)。
No.0568.b フイリセンジュラン Yucca aloifolia ‘Marginata’
葉に黄色い斑が入るセンジュランの品種。
No.0571.a ハルシオンギボウシ Hosta ‘Halcyon’
グレーみがかった青緑の葉色のギボウシの品種。原種は筆者の調査では不明。雑種ともされています。
No.0574 コバギボウシ Hosta sieboldii var. sieboldii f. spathulata
多年草。高さ40~50cm。葉身は狭卵形または楕円形、卵状楕円形など葉形や大きさに変化が多く、鋭頭または鋭尖頭で、基部はしだいに狭くなって翼となって葉柄に流れ、脈は片側で3~6個あります。苞は緑色、狭卵形、鋭尖頭。花は淡紫色、長さ4~5cm。花期は7~8月。北海道、本州、四国、九州;サハリン、千島、ウスリーに分布します。草原や疎林内に生えます。葉身が特に狭いコギボウシ var. intermedia の型もありますが、両者に決定的な分類形質は見られないようです。
No.0578 センネンボク Cordyline fruticosa
常緑低木。直立で高さは約100~450cm、幅は約100~250cmまで成長します。葉色は緑色や紫色、赤色や桃色、黒色があり、新葉は鮮やかな赤色や黄色を帯び、葉が古くなると暗色に落ち着いてきます。葉身は楕円形(長さ約30~75cm、幅は約5~10cm)で、葉序は互生葉序につきます。花期は11月~次年3月、暖地では周年。長い花序を伸ばし芳香のする小さな黄色~赤い花を咲かせます。花後に球形の小さな果実が成り、赤熟します。バングラデシュから東南アジア本土、中国南部、台湾、東南アジアの島々、ニューギニア、オーストラリア北部に分布し、台湾から東南アジア島嶼部、太平洋の島々、マダガスカルに広がるオーストロネシア語族の話者であるオーストロネシア人によってオセアニア全体に運ばれ、ハワイ、ニュージーランド(ケルマデック諸島を含む)、そしてイースター島の最も遠い範囲にまで達しました。日本を含む他国でも観葉植物として栽培されます。東ポリネシアでは食用根茎として利用するために大きな緑の葉の品種となっており、不稔で挿し木によってのみ繁殖するよう人為選択されています。オーストロネシア人共通でアニミズム宗教と深く関係しており、魂を保持できるため、魂の喪失を癒すのに役立つとされています。最も日本人に身近な使用例としてはハワイのフラの踊り手のスカート(ライー・スカート)が挙げられます。葉は料理にも使われ、カヌーの綱、衣服としても利用されています。
No.0578.a ニオイシュロラン Cordyline australis
常緑高木。最大で20mに達します。幹は太く、直径1.5~2m。開花前には細く分岐しない茎を持ちますが、最初の開花後には、先端に葉の房のついた多くの分岐した枝からなる樹冠を形成します。各枝は花序の形成後にさらに分岐することもあります。樹皮は明灰色から暗灰色のコルク質、表面に亀裂はあるが自然には剥がれず、触るとスポンジ状です。葉は細長く剣状に直立し、明緑色から暗緑色。長さ40~100cm、基部の幅は3~7cm。多数の平行脈を持ちます。枝の先端に塊状につき、葉の先端や、古くなった葉では基部も垂れ下がることがあります。葉は厚く、中肋ははっきりせず、細かい脈がある程度均一に平行に走ります。葉の表と裏にあまり差はありません。春から初夏に甘い香りの花を、60~100cmの大きな総状花序につけます。花と花序は無柄かほぼ無柄で、花は花序に沿って密集して並びます。各花は直径5~6mm、6枚の花被片は基部近くで分離し、反り返っています。雄蘂の長さは花被片とほぼ同じ。雌蘂は短く、柱頭は3裂します。果実は白い液果で直径5~7mm。ニュージーランドの固有種で、先駆植物で森林・岩海岸・低湿地・湖や川の周辺・孤立した岩の上まであらゆる場所で見られます。日本・欧米などでは観賞用に栽培されます。花の甘い香りは多くの昆虫を引き寄せるが、花の蜜にはエステルとテルペンを中心とした芳香族化合物が含まれ、特に蛾を誘引します。果実が熟すには約2ヶ月かかり、夏の終わりには鳥によって散布されるようになります。花序の構造は頑丈であるため、かつては主要な種子散布者であったニュージーランドバトのような重い鳥も花序に掴まることができます。各果実は3~6個の光沢のある黒い種子を含み、各種子は木炭に似た物質(phytomelan)に覆われ、鳥の消化管内で種子を保護する役割があります。マオリ人によって茎を食用したり、葉を繊維として用いられてきました。
No.0579 クサスギカズラ Asparagus cochinchinensis var. lucidus
クサスギカズラは雌雄異株の多年草。別名テンモンドウ。蔓性の多年草。茎は長さ2mくらいになります。花は5月、淡黄緑色、直径は6mmほどの小花を1~4個ずつつけます。花柄は2~5mm。果実は白く熟します。本州、四国、九州、琉球;朝鮮、台湾~東南アジアに分布します。海岸の林縁や岩場に生えます。
No.0582 オランダキジカクシ Asparagus officinalis
雌雄異株の多年草。別名アスパラガス。果実は赤く熟します。草丈は約1.5mになり、茎の先に茂る細長い葉のようなものは茎が変形したもので、光合成を行うことから擬葉(葉状枝)と呼ばれます。植物形態学的に本来の葉とされるのは、茎にへばりついている三角形の俗に袴(はかま)と呼ばれる部分です。5~7月ころに黄白色の小さな花を咲かせます。繁殖は実生によります。キジカクシに似ていますが、まっすぐで細い葉状枝が5~8個が束生し、花柄は長さ約1cmであることなどで区別できます。ヨーロッパの西海岸(スペイン北部からドイツ北西部、北アイルランド、英国まで)が原産。日本を含む各国で野菜、ときに観賞用として栽培されます。日本では沖積地を中心に逸出して野生化することがあります。基本的に苗を植えてから3年目以降に出る若芽を食用にします。独特の風味から野菜として、また利尿作用と媚薬としての機能から薬として使用されてきました。アスパラギン酸(名前はアスパラガスに由来、うま味成分のひとつ、ヒトでは中枢神経系の興奮性神経伝達物質として作用)のほか、ビタミン類、葉酸、ルチンなど注目すべき栄養素を含む野菜です。歴史的には紀元前3000年のエジプトのフリーズ(建造物の装飾の一部)に既に供物として描かれています。古代にはシリアやイベリア半島でも知られていました。ギリシア人とローマ人は、旬の時期には新鮮なアスパラガスを食べ、冬に使用するために乾燥させ保存させていました。現在では世界中で茹でる、蒸す、炒めるなどされてから食されます。日本へは江戸時代(1781年以降)にオランダ船によって渡来し、観賞用として栽培されましたが、食用としては明治時代(1871年)に北海道開拓使によって導入されてからです。ホワイトアスパラガスのような品種も知られています。アスパラガスは消化するとアスパラガス酸から揮発性硫黄含有化合物が発生するため、ヒトの尿に臭気を発生させますが、臭いには個人差があります。これは消化の個人差ではなく一塩基多型(SNP)による嗅覚遺伝子側の個人差であることが分かっています。しかしこの適応的意義やオランダキジカクシにとってアスパラガス酸を多く含むことの適応的意義は分かっていないようです。
No.0584 リュウケツジュ Dracaena draco
常緑高木。高さが最大15m以上、幹の周囲が5m以上の長命の木で、滑らかな樹皮から始まり、年をとるにつれてより粗い質感に変化します。葉は平らで皮質、青緑色で剣形をしており、枝先端に束生します。6月ごろに枝先から大きな円錐花序を伸ばし、白いユリのような香りのする小さな白緑色の筒状花が咲き、丸い橙色の実がなります。若い時は茎が一本で、約10~15歳になると、茎の成長が止まり、頂芽が現れ、植物は枝分かれを始めます。各枝は約10〜15年成長し、再枝分かれするため、成熟したリュウケツジュは傘のような樹形になります。成長はゆっくりで、高さ1.2mに達するまでに約10年かかります。樹皮や葉を切ると、赤みを帯びた樹脂が分泌されることが「龍血樹」の由来です。アフリカのカナリア諸島、カーボベルデ、マデイラ島、モロッコ西部原産で、アゾレス諸島に導入されたと考えられています。その変わった樹形を求めて日本を含む各国で観賞用に栽培されます。
No.0584.a ベニフクリンセンネンボク Dracaena concinna
常緑低木。樹高は2~4.5mですが、室内では0.5~2m程となります。茎の先に30~50cmの細長い葉が密生します。葉は緑色で縁が赤い覆輪となります。マダガスカル~モーリシャス諸島が原産で、日本を含む各国で観葉植物として栽培されます。
No.0584.b ニオイセンネンボク Dracaena fragrans
常緑低木~高木。自生地では高さ6m以上、ときに15mにもなります。多肉質の根茎はもちません。若い株では単一の分岐していない幹となりますが、成長した先端に開花するか損傷を受けると、その部分が枝分かれして2本以上の新しい幹となります。枝はふつう細長く、直立し、狭い樹冠となります。葉は幹先や枝先に密に叢生し、光沢のある緑色で縁は波状にうねりを見せます。長さ20~150cm、幅2~12cmの披針形で、大きな葉は自重で垂れ下がります。成長につれ下葉が落ち、幹がむき出しになります。葉腋から長さ15~160cmの円錐花序を出し、小さな6弁花が丸い頭状にまとまって多数つきます。花はつぼみがピンク色を帯び、夜に開花すると白~クリーム色になり、各花被片の中央に赤や紫の細い線がはいります。花には芳香があります。花の基部には苞がありません。子房は3室に分かれ、各室に1個の胚珠があります。果実は径1~2cmの橙赤色に熟す液果です。熱帯アフリカ原産でスーダン南部からモザンビークまで、西はコートジボワールまで、南西はアンゴラまで分布します。日本を含む各国で観葉植物として栽培されます。コウフクノキとされることもありますが、全くの別種で本来センネンボクのことを指すとされます。
No.0584.c ホシセンネンボク(フロリダビューティ) Dracaena surculosa ‘Florida Beauty’
常緑低木。葉は先の尖った卵形で、葉質は薄く柔らかく、葉縁は全縁です。穂状花序に細長い筒状の小さな白花を多数咲かせます。フロリダビューティでは葉は緑色地に黄色い斑点が多数入るのが特徴です。黄色い斑は古くなると白斑になります。花冠は先端で5裂します。ギニアからコンゴ共和国までの熱帯アフリカ西部および中央西部に原産で、日本を含む各国で観賞用に栽培されます。
No.0584.d トックリラン Beaucarnea recurvata
常緑高木。4.72mまで成長し、一本のヤシのような茎には緑色の線状で薄く、平らであるか、わずかにうねがある葉がつきます。葉は房を生成し、植物が10年以上になると、時折小さな白い花の円錐花序が付きます。基部だけが大きく膨らんだ幹は、上部でわずかに枝分かれしています。水を蓄えるために塊根が大きくなっています。若い段階のほぼ球状の塊根は、後に長さ4〜6mになり、基部で最大50cm以上の直径に達します。樹皮は滑らか。メキシコ東部が原産で多くの州に自生していましたが、現在はベラクルス州に限定されています。日本を含む各国で観賞用に栽培されています。人為的活動により個体数を減らしています。
No.0586.1 フクリンチトセラン Dracaena trifasciata ‘Laurentii’
常緑多年草。従来用いられた Sansevieria trifasciata はMabberley(2017)によって Dracaena trifasciata のシノニムであるとされました。『NCBI Taxonomy』では現在も Sansevieria trifasciata。茎は地下にあって横に這い、葉だけを地上に出します。横に這う茎から、少しずつ間を開けて葉をつけ、それが地上に長く直立するので、板のような葉だけが立ち並んだ姿となります。葉に緑色の濃淡による横縞模様があるのが虎の尾蘭とも呼ばれる由来です。葉の間から花茎が出て目立たない小さな花が咲きます。花・蕾の細い茎の基部には蜜腺があり、透明な小さな蜜の玉が下がります。CAM植物に含まれ、CAM型光合成という特殊な光合成を使用して日中の光合成を抑えることで水分蒸発を防ぎ、干ばつに耐えることができます。涼しい夜間は気孔を開き二酸化炭素を濃縮します。アフリカ(ナイジェリア・コンゴ民主共和国)原産で、日本を含む各国で観賞用に栽培されます。日本に持ち込まれたのは明治の中程から末までの頃とされ、長く本属では本種のみが栽培されてきました。フクリンチトセランは葉が黄色覆輪となっているアツバチトセランの品種で、昭和初年に日本に導入され、多く普及しています。
No.0587 ハラン Aspidistra elatior
常緑多年草。葉身は長楕円状披針形、深緑色、長さ20~50cm、長い柄があります。花茎は高さ2~7cm、花は2~5月、褐紫色。多肉質で地上近くに咲くので葉に隠れ、注意深く観察しないと容易に見ることができません。日本の九州南部の宇治群島、黒島、諏訪之瀬島が原産地で、丘陵地に点在し、屋敷林や竹林などの下に群生します。世界中で観賞用に栽培され逸出します。かつてカタツムリやナメクジによって受粉するとする仮説やヨコエビ類によって受粉するという仮説もありましたが、現在はこれらの種は殆ど訪れず、Cordyla属やBradysia属のキノコバエによって受粉することが分かっています(Suetsugu & Sueyoshi, 2018)。花はキノコに擬態しています。日本では和食の料理の盛りつけの際、飾りとして使われてきました。寿司などの食品に付属する緑色のプラスチック装飾品「バラン」は、ハランの旧名、または「人造バラン」の略で、ハランを真似て作られた物です。
No.0588 オモト Rohdea japonica
常緑多年草(北村ら,1957)。地下茎は太く斜または横にのび、丈夫な多数の根があります。葉は根出葉が叢生します。披針形で先は次第に尖り、下部は次第に狭くなります。質厚く、両面無毛で光沢があり、長さ30〜50cm。花茎は8〜18cm、無毛、葉はありません。長楕円状の穂状花序に花を密につけます。苞は広卵形、膜質、鈍頭、長さ2〜3mm。花は互いに接し横向きにつき、半球形で、花被片は中部以上まで合生して筒となり、裂片は内に曲がり円頭。雄しべは6、花被に包まれ、花糸は花筒と合生、葯は卵形。子房は球形、3室で各室に2個の胚珠があります。花柱は甚だ短く、柱頭は3浅裂します。液果は球形、直径1cm、赤色、まれに黄色、中に1種子があります。花期は5〜7月。本州(関東地方以西)、四国、九州;中国の暖地の林の中に生えます。しばしば石灰岩地帯にあります。人家の周辺の林内にも生え、逸出します。観賞用に栽培され、多数の園芸品種が知られています。古典的にはカタツムリ媒(malacophily)とされ、ナメクジやカタツムリによって花粉媒介するとされてきましたが、追加実験によるとナメクジが受粉した花には結実が観察されず(Suetsugu, 2019)、受粉に貢献するのかは怪しくなっています。アリによって受粉する可能性も示されています。
No.0589 キチジョウソウ Reineckea carnea
常緑の多年草(北村ら,1957)。液果は地下茎はよく発達し、長くはい、所々に多数の根を出し、葉と花茎を出します。葉はそう生し、線形で鋭尖頭、無柄、長さ8〜30cm、両面無毛。花期は8~11(~12)月。淡紅紫色の花茎は葉がなく、高さ5〜13cm、直立し、無毛。穂状花穂は長さ4.5〜7cm、苞は卵形、長さ5〜7mm。花被は長さ1cm内外、無毛、中部まで合成して筒となり、6深裂し、裂片は狭長楕円形、鈍頭、そり返る。雄ずいは6、花被より少し短く、花筒に合生し、離生部は無毛、葯は長さ2mm。花柱は花被より長く無毛、柱頭は頭状で3浅裂。漿果は球形、直径6〜9mm、赤く熟します。種子は卵形、長さ4mm。本州(関東地方以西)、四国、九州;中国に分布し、丘陵地の照葉樹やスギの植林内などに群生します。関東地方以西〜九州の山林に生えます。
No.0590 ヤブラン Liriope muscari
常緑多年草。高さ20~60cm。葉は11~15脈があります。花は(7~)8~9月、紫色。種子は球形、径6~8mm、黒く熟します。本州(関東地方以西)、四国、九州、琉球;朝鮮、中国、台湾に分布し、シイ・カシ帯の全域にやや普通で、照葉樹やスギ植林の林内に生えます。白花の品種をシロバナヤブラン f. albiflora といいます。
No.0590.1 フイリヤブラン Liriope muscari f. variegata
緑の細葉に薄い黄色や白い線が入るヤブランの品種。
No.0591 コヤブラン Liriope spicata
No.0593 ジャノヒゲ Ophiopogon japonicus var. japonicus
常緑多年草。別名リュウノヒゲ。高さ7~12cm。葉は幅2~4mm、縁辺はざらつく。ナガバジャノヒゲにくらべ、葉は短いですが、葉の幅は広く、陽地によく群生します。花は6~7月、淡紫色。種子は碧色に熟します。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国、台湾に分布し、シイ・カシ帯にやや普通で、おもに照葉樹林の下や草地に生えます。白花の品種をシロバナジャノヒゲ f. leucanthus といいます。また叢生して匐枝を出さない1型をカブダチジャノヒゲ var. caespitosus といい、しばしば栽培品として確認されます。
No.0593.1 タマリュウ Ophiopogon japonicus var. japonicus f. nanus
草丈が5~8cmと小さく密に繁るジャノヒゲの品種。高い浸水及び冠水への耐性があり、根が水に浸された状況や水中などでも生存が可能とされ、庭のグランドカバーとして栽培されます。
No.0593.2 シロバナナガバジャノヒゲ Ophiopogon japonicus var. umbrosus f. leucanthus
常緑の多年草。花茎は高さ10~30cm。葉は幅1.5~2.5mm。花は6~7月、淡紫色。本州、四国、九州;朝鮮(南部)、中国に分布し、シイ・カシ帯に普通で、林床や林縁に生えます。シロバナナガバジャノヒゲ f. leucanthus は白花の品種。
No.0594.a ノシラン Ophiopogon jaburan
常緑多年草。根茎は垂直、分枝します。ストロンを欠きます。根の中部に細い紡錘状肥厚が見られることもあります。葉は常緑で厚く、長さ40〜130cm、幅(7〜)10〜18mm、先は鋭形〜鋭先形、葉縁下部に膜質の狭い翼が出ることがあり、葉縁上部には細鋸歯があります。花茎は弓状に曲がり、長さ25〜75cm、幅4〜8mm、扁平な2稜形狭い翼があります。花序は長さ7〜13cm、1つの節に3〜8花をつけます。苞は狭披針形〜披針形、もっとも下のもので長さ1.5〜9cm、淡緑色、縁は膜質、先は漸先形。花は下向きに開きます。花柄(花被鞘状部に包まれた部分を含む)は長さ10〜22mmで、ふつう花被(鞘状部を除く)の2倍より長い。花被(鞘状部を除く)はふつう花被鞘状部より短く、白色〜淡紫色、裂片は卵状長楕円形、長さ5〜7mm、やや反り返ります。葯は披針形、長さ4〜5mm。種子は紺色。成熟種子は楕円形、長さ8〜14mm、幅6〜10mm。花期は7〜9月。本州(東海以西)、四国、九州;朝鮮(済州島)に分布し、海に近い林の下に生えます。海岸近くを中心に逸出します。
No.0597 アマドコロ Polygonatum odoratum var. pluriflorum
多年草。高さ30~60cm。葉は長楕円形、下面は粉白緑色。花は4~5月、白色で花被片は淡緑色。花糸に微細な突起があります。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国に分布します。丘陵から山麓に普通に見られ、草地や明るい林内に生えます。
No.0599 ナルコユリ Polygonatum falcatum
多年草。高さ30~60cm。根茎は太く、節間はつまり、数珠状です。葉は13~17個つき、広披針形、顕著な3主脈があり、下面の脈上には突起状の毛があります。しばしば葉の上面の中央に白い線が入り、ことに若い葉に顕著です。5~6月、淡黄緑色、筒状の花が葉腋に3~4個ずつ垂れ下がります。本州、四国、九州;朝鮮、中国(東北)に分布します。林内や草地に生えます。
No.0601 ミヤマナルコユリ Polygonatum lasianthum
多年草。高さ30~60cm。葉は約8個つき、広長楕円形、縁辺は波うち、顕著な3主脈があります。5~6月、花柄は葉腋につき、葉の下面にそって開出し、白い筒状花を1~3個ずつ下垂し、花被片の先は平開しない個体が多い。北海道、本州、四国、九州;朝鮮に分布します。おもに明るい雑木林内に生えます。北海道ではエゾトラマルハナバチ Bombus diversus tersatusが訪花した記録がある(赤羽ら,2016)。
No.0603.1 ドイツスズラン Convallaria majalis
多年草。根茎をもつ長さ15cmで幅5cmほどの長楕円形の葉を2枚もち、長い葉柄は抱き合ってその下部は膜質の梢状葉に包まれてます。晩春この梢状葉腋から30cmほどの花茎を伸ばし、通常葉と同じ高さになります。長さ7mmほどの芳香のある釣鐘状の小さな白花を10花ほど下向きに総状につけます。花冠は6裂して裂片は反曲し、雄しべは6個あります。雄しべは6個あり、果実は赤色の液果。全草にコンバラマリン、コンバラリン、コンバラトキシンなどの配糖体を含み、有毒であるが強心、瀉下の作用をもちます。園芸店で売られているのは本種で、日本のスズランより花が大きく、香りも強く、葉に光沢があり、早出し栽培にも適しています。ヨーロッパでは5月祭に欠かすことのできない花です。ヨーロッパ原産で北アメリカ東部に野生化し、日本では観賞用に栽培されます。園芸品種として、八重咲き、桃色花、紅色花、斑入り葉などが知られています。
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