ダチュラ・チョウセンアサガオ・ケチョウセンアサガオ・キダチチョウセンアサガオの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Datura wrightii

チョウセンアサガオ・ケチョウセンアサガオ・キダチチョウセンアサガオはいずれもいずれもナス科に含まれ、観賞用に栽培される園芸植物である他、有毒・薬用植物としてもよく知られています。属名から「ダツラ」、「ダチュラ」とも総称されます。しかしこれらの種類はインターネットでは極めて混同されており誤解されることが多いです。まず、チョウセンアサガオ・ケチョウセンアサガオはチョウセンアサガオ属に含まれるのに対して、キダチチョウセンアサガオはキダチチョウセンアサガオ属に含まれるという大きな分類上の違いがあり、具体的には花の大きさや咲く方向に違いがあります。チョウセンアサガオ・ケチョウセンアサガオに関しては、毛の有無でおおよそ判断できますが、そもそも日本で本物のチョウセンアサガオを見ることは稀です。同属の別種も多いのでそちらとも区別しましょう。本記事ではチョウセンアサガオ属とキダチチョウセンアサガオ属の分類について解説していきます。

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チョウセンアサガオ・ケチョウセンアサガオ・キダチチョウセンアサガオとは?

チョウセンアサガオ(朝鮮朝顔) Datura metel は中央アメリカ~南アメリカ原産で、草が茂った日当たりの良い斜面に生える一年草です(神奈川県植物誌調査会,2018;RBG Kew, 2023)。古くからアジアに導入されアフリカなどにも帰化しています。日本では江戸時代に渡来し、薬用に栽培されましたが、今はほとんど見られません。

ケチョウセンアサガオ(毛朝鮮朝顔) Datura wrightii はアメリカ合衆国~メキシコ原産で、空き地などに生える多年草です。世界各地で栽培され、ときに帰化しています。日本には江戸時代末期に渡来し、鑑賞用に栽培され、ときに野生化しています。

キダチチョウセンアサガオ(木立朝鮮朝顔) Brugmansia suaveolens は別名エンゼルトランペット、エンジェルトランペット。ブラジル原産の常緑低木です。世界各地で栽培され、ときに帰化しています。日本でも同様です。

いずれもナス科に含まれ、観賞用に栽培される園芸植物である他、アトロピン、スコポラミン、ヒヨスチアミンなどのトロパンアルカロイドを含む有毒・薬用植物としてもよく知られています。属名から「ダツラ」、「ダチュラ」とも総称されます(ただしキダチチョウセンアサガオは現在Datura属に含まれていません)。

他の共通点としては、花が長さ5cm以上で単生する点、果実が蒴果である点などが挙げられます。これはナス科の中では少数派の特徴でしょう。花冠の先が尾状に伸びる点は「アサガオ」などの合弁花とは大きな違いです。

しかしこれらの種類は極めて混同されています。特にチョウセンアサガオとケチョウセンアサガオの違いについてはほとんどインターネット上で言及がなく本来はケチョウセンアサガオであるはずのものが、「チョウセンアサガオである」と誤解されていることが多いです。

チョウセンアサガオ属とキダチチョウセンアサガオ属の違いは?

これらの種類は全くの別種です(Editorial Committee of the Flora of Taiwan, 1998; Spencer, 2002)。

まず、チョウセンアサガオとケチョウセンアサガオはチョウセンアサガオ属 Datura に含まれるのに対して、キダチチョウセンアサガオはキダチチョウセンアサガオ属 Brugmansia に含まれるという大きな違いがあります。かつてはキダチチョウセンアサガオもチョウセンアサガオ属だったこともありますが、現在はこの分類です。

したがって、特徴に大きな違いがあることは予想されるでしょう。

具体的には、チョウセンアサガオ属では草本~亜低木であるのに対して、キダチチョウセンアサガオ属では常緑低木~高木と明らかに大型であるという違いがあります。これは「木立」という名前のとおりです。

また、チョウセンアサガオ属では花が20cm未満と小型で、多少は上方向に直立するのに対して、キダチチョウセンアサガオ属では花が20cm以上と大型で、下方向に垂れ下がっています。

この2点が大きな違いであると言えるでしょう。他にも細かい違いもありますがここでは省略します。

したがって、キダチチョウセンアサガオについてもこれらの特徴からチョウセンアサガオ・ケチョウセンアサガオと区別できます。

なお、キダチチョウセンアサガオが日本で見られる最もメジャーなキダチチョウセンアサガオ属の種類ですが、他にもコダチチョウセンアサガオ Brugmansia x candida などいくつかの種類にも和名が与えられ栽培されています。この区別方法はSpencer(2002)を参照してください。

キダチチョウセンアサガオの葉上面
キダチチョウセンアサガオの葉下面
キダチチョウセンアサガオの花:大型で下垂する
ピンクダチュラの全形

チョウセンアサガオとケチョウセンアサガオの違いは?

チョウセンアサガオとケチョウセンアサガオの区別点が書かれている資料はとても少ないでしょう。

チョウセンアサガオは名前が有名であり、身近でも見られると思われるかもしれません。

しかし、真のチョウセンアサガオは上述のようにかつては栽培されていましたが、現在はほとんど見かけることはなく、現在普通に見かけるのはケチョウセンアサガオです(神奈川県植物誌調査会,2018)。

違いとしては、チョウセンアサガオでは若い部分を除いて茎や葉はほとんど無毛で、蒴果は直立または斜上するのに対して、ケチョウセンアサガオでは茎や葉には細かい軟毛を密生し、蒴果は下を向くという点が挙げられます。

このようにケチョウセンアサガオは有毛なため、茎が白っぽくなっているので一目瞭然だと思います。

ただ、日本で見られるチョウセンアサガオ属は他にも知られています。

シロバナチョウセンアサガオ Datura stramonium var. stramonium は茎や葉はほとんど無毛で、果実には長さ1cm以下の刺があります。これはケチョウセンアサガオと同じかそれ以上にメジャーです。名前は「シロバナ」ですが、茎が淡緑色で花が白色の f. stramonium もありますが、茎が紫色を帯び花が淡紫色のヨウシュチョウセンアサガオ f. tatura も存在します。

トゲナシチョウセンアサガオ Datura stramonium var. inermis は茎や葉はほとんど無毛で、果実に刺がありません。

ツノミチョウセンアサガオ Datura ferox は茎や葉はほとんど無毛で、果実には長さ1~2cmの太い刺があります。

チョウセンアサガオの花|By Billjones94 – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=119857099
チョウセンアサガオの未熟果と茎:茎や葉は無毛|By Billjones94 – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=118543705
ケチョウセンアサガオの葉:毛は多く白っぽくなっている
ケチョウセンアサガオの花

引用文献

Editorial Committee of the Flora of Taiwan. 1998. Flora of Taiwan, Second edition. Volume 4, Taiwan University, Taipei. 1217pp. ISBN: 9789570231212, http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=100&taxon_id=10828

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

RBG Kew. 2023. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

Spencer, R. 2002. Solanaceae. In: Spencer, R. Horticultural Flora of South-eastern Australia. Volume 4. Flowering plants. Dicotyledons. Part 3. The identification of garden and cultivated plants. University of New South Wales Press, Sydney. ISBN: 9780868406848, https://hortflora.rbg.vic.gov.au/taxon/812e4f6e-edbc-42bc-b528-63c3ac4e14df/key, https://hortflora.rbg.vic.gov.au/taxon/ad9df2e0-5340-11e7-b82b-005056b0018f/key

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