コミカンソウ・ヒメミカンソウ・ナガエコミカンソウはいずれもコミカンソウ科コミカンソウ属に含まれ、畑や道端に生え、花よりも無数のミカンのような小さな緑色~赤色の果実をつけている様子が印象的な一年草です。これら3種はコミカンソウ属の中でも高頻度で見られますが区別するにはかなりよく観察する必要があります。具体的には花柄や果柄の長さが最も大事で、果実の表面や主茎からの葉も参考になるでしょう。本記事ではコミカンソウ属の分類について解説していきます。
コミカンソウ・ヒメコミカンソウ・ナガエコミカンソウとは?
コミカンソウ(小蜜柑草) Phyllanthus lepidocarpus は日本の本州、四国、九州、琉球;東アジア、東南アジアに分布し、畑や道端に生える一年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。『日本語版Wikipedia』では Phyllanthus urinaria とされていますが、シノニム(旧学名)です。
ヒメミカンソウ(姫蜜柑草) Phyllanthus ussuriensis は日本の本州、四国、九州、琉球;東アジアに分布し、畑や道端に生える一年草です。
ナガエコミカンソウ(長柄小蜜柑草) Phyllanthus tenellus はアフリカのマダガスカル東方沖のマスカリン諸島(フランス海外領とモーリシャス共和国)原産で、畑や道端に生える一年草です。近年急速に分布を広げ、日本の本州(関東地方以西)、九州、琉球;世界の熱帯に広く帰化しています。
いずれもコミカンソウ科コミカンソウ属に含まれ、畑や道端に生え、花よりも無数のミカンのような小さな緑色、熟すと赤色の果実をつけている様子が印象的な一年草です。
他にも葉が全縁で左右2列につくので羽状複葉のように見える点も大きな特徴で、一見マメ科のようにも思えます。しかしマメ科のように羽状複葉というわけではありません。
ミカンのような小さな緑色~赤色の果実は蒴果なので、乾燥すると裂けて種子を出し、種子は風や水によって運ばれます(Gavilán, 2022)。したがって、やはりミカンの液果のように実際に食べられるというわけではありません。
これらの共通点から遠目では区別がつかず、3種は混同されやすいです。
コミカンソウ・ヒメミカンソウ・ナガエコミカンソウの違いは?
コミカンソウ属は日本には16種が自生し、4種が帰化しているため、国内の全ての種類の区別方法をここで述べることはできませんが、本土で高頻度で見られる3種に限れば区別は簡単です(神奈川県植物誌調査会,2018)。
一番分かりやすい違いは、花柄(花と植物体を繋ぐ細い部分)および果柄(果実と植物体を繋ぐ細い部分)の状態です。
ヒメミカンソウとナガエコミカンソウでは花柄と果柄があるのに対して、ミカンソウでは花柄と果柄が殆どないという違いがあります。
したがって、ミカンソウでは花や果実が葉の腋にぴったりとついています。
ヒメミカンソウとナガエコミカンソウに関しては、ヒメミカンソウでは花柄が0.4〜1.8mmで、果柄が長さ1〜3.5mmと短いのに対して、ナガエコミカンソウでは花柄と果柄が長さ5~8mmとかなり長いという違いあります。
これはナガエコミカンソウ(長柄小蜜柑草)という和名の通りなので覚えやすいと思います。これほど長い花柄や果柄を持つ種類は他にいません。
以上で区別するには十分ですが、一応いくつか他の特徴も挙げておきます。
コミカンソウとナガエコミカンソウでは主茎には葉をつけないのに対して、ヒメミカンソウでは主茎は小枝とともに葉をつけます。
ヒメミカンソウとナガエコミカンソウでは果実の表面が平滑ですが、コミカンソウでは果実の表面に鱗状の突起が密生しています。
なお、キダチコミカンソウ Phyllanthus amarus という種類も九州~琉球で帰化しますが、主茎には葉をつけず、果実は有柄で平滑で、果実の柄は長さ0.8~1.2mmで、葉の基部は円形であることから他の種類から区別できます。
引用文献
Gavilán, J. V. 2022. CABI Compendium: Phyllanthus urinaria (chamber bitter). https://doi.org/10.1079/cabicompendium.46061
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726