オウバイ(黄梅)とオウバイモドキ(ウンナンオウバイ)はいずれもモクセイ科ソケイ属に含まれ、中国原産で観賞用に栽培される樹木です。冬にも咲かせる黄色い花が特徴的でこの点も人気である理由でしょう。しかし、似ている特徴がかなり多いため、混同する人は多いかもしれません。一番大きな特徴としてはオウバイが落葉樹で、オウバイモドキが常緑樹であるという点ですが、実用的には葉の毛の状態を確認するのが簡単かもしれません。ロウバイ(蝋梅)は名前や冬に黄色い花をつける点は同じですが、その他は全く異なっています。本記事ではオウバイとオウバイモドキの分類・形態について解説していきます。
オウバイ・オウバイモドキ(ウンナンオウバイ)とは?
オウバイ(黄梅) Jasminum nudiflorum は中国北西部・チベット原産で藪・渓谷・斜面に生える落葉低木です(Wu & Raven, 1996; 林,2019)。日本を含む世界中で観賞用に栽培され、庭木・鉢植えとして利用されます。
オウバイモドキ(黄梅擬き) Jasminum mesnyi は別名ウンナンオウバイ(雲南黄梅)。中国南部・ベトナム原産で渓谷・森に生える常緑低木です。日本を含む世界中で観賞用に栽培され、庭木・鉢植えとして利用されます。
いずれもモクセイ科ソケイ属に含まれ、中国原産で観賞用に栽培される樹木です。冬にも咲かせる黄色い花が特徴的でこの点も人気である理由でしょう。
ソケイ属はいわゆる「ジャスミン」と呼ばれる仲間で、ソケイ Jasminum grandiflorum に代表されるように花や精油(エッセンシャルオイル)はいい匂いであることが多いですが、オウバイやオウバイモドキではそのような匂いはありません。
また、葉の形についても、ソケイ属では奇数羽状複葉であることが多いですが、オウバイとオウバイモドキでは三出複葉で、1つだった葉が3枚に別れた状態になっています。
これらの特徴からオウバイとオウバイモドキは名前の通り非常に似ており、混同する人は多いかもしれません。
オウバイとオウバイモドキ(ウンナンオウバイ)の違いは?
2種はかなり似ていますが、よく観察することで区別することができます(Wu & Raven, 1996; 林,2019)。
まず、オウバイは落葉低木であるのに対して、オウバイモドキは常緑低木であるという違いがあります。
したがって、冬になるとオウバイでは葉を無くしてしまいますが、オウバイモドキでは葉がついたままです。葉もオウバイモドキでは常緑樹らしく、やや固い質感です。
オウバイでは花期が2~4月、オウバイモドキでは花期が3~5月であるため、オウバイでは冬~春にかけて花だけをつけている状態を観察できますが、オウバイモドキでは葉と花を同時に付けている様子を観察することができます。
葉に関しては他にも違いがあり、オウバイでは短毛が全面に多いためブツブツしたものがあるように見えますが、オウバイモドキでは短毛は少なく葉縁に微細なものがある程度です。
花に関しては、オウバイでは直径3cmほどの6裂になる花冠をつけるのに対して、オウバイモドキでは直径4cmほどの6~8裂または更に多い八重になる花冠をつけるという違いがあります。
以上で確実に区別することができます。なお、キソケイも黄色いソケイ属の仲間ですが、こちらは葉が奇数羽状複葉です。
オウバイ(黄梅)とロウバイ(蝋梅)の違いは?
オウバイと同じく冬に黄色い花をつけるロウバイとの違いが気になる人がいるかもしれません。
しかし、ロウバイはロウバイ科に含まれ、モクセイ科のオウバイとは大きく体の構造が異なります。
葉に関しては、オウバイでは三出複葉であるのに対して、ロウバイでは単葉であるという違いがあります。
花に関しては、オウバイでは花筒が長く横~斜め下に咲かせるのに対して、オウバイでは花筒がなく真下の地面方向に咲かせるという違いがあります。
果実に関しては、オウバイでは赤く熟す核果状液果(液状になる果実)をつけ、鳥が食べられるようになるのに対して、ロウバイでは壺のような大きな黒い偽果に包まれた果実をつけ、重力で落ちるのみという違いがあります。
引用文献
林将之. 2019. 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類. 山と溪谷社, 東京. 824pp. ISBN: 9784635070447
Wu, Z. Y., & Raven, P. H. 1996. Flora of China. Vol. 15 (Myrsinaceae through Loganiaceae). Science Press, Beijing, and Missouri Botanical Garden Press, St. Louis. 387pp. ISBN: 9780915279371