イチイ科 Taxaceae は常緑の高木または低木。葉は線形~線状披針形で、らせん状に互生しますが、葉身は水平に2列に並びます。普通は雌雄異株だがまれに同種もあります。雄花は葉腋に単生または小さな穂状花序につけ、雌花は前年枝の先につくか、葉腋につく鱗片葉に包まれた短枝に頂生します。花後、胚珠の基部がしだいに発達して肉質の仮種皮に一部または全部包まれるか、仮種皮がなく裸出します。北半球の温帯およびニューカレドニアに6属28種が知られ、日本には3属3種が分布しています。イチイやキャラボクが植栽されています。
本記事ではイチイ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
No.0060 イヌガヤ Cephalotaxus harringtonia var. harringtonia
常緑小高木。樹皮は暗灰褐色で浅く縦裂します。葉は長さ2~4cm、幅2.5~4mm。花は3~4月。雄花序は直径6~7mmの球状。雌花序は直径3~4mmの球形。種子は肥厚した外種皮に包まれた核果状になり、長さ20~25mmの楕円体で、10月頃に紫褐色に熟します。本州(岩手県以南)、四国、九州(屋久島まで);朝鮮、中国(東北部)に分布しています。樹林内で見られます。日本海側多雪地にハイイヌガヤ var. nana が分布します。園芸品種にチョウセンマキ ‘Fastigiana’ があり、側枝でも葉はらせん状につき、ときに公園や個人庭などに植えられてます。
No.0062 イチイ Taxus cuspidata
常緑高木。樹皮は赤褐色で浅く縦裂します。葉はらせん状に互生、側枝では2列に並び、線形で長さ約20mm、幅1.5~3mm。仮種皮は熟すと赤色の液質になり、種子を覆うような壺形になります。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国(東北部)千島、樺太、シベリアに分布。植栽されます。ヨーロッパ原産のものにセイヨウイチイ T. baccata があり、葉長が約30mmと長いことや、液果上の種子がより丸味があることなどの違いはありますが、イチイとの区別は難しいです。樹形や葉色の違いによる園芸品種も多くあり、ゴールドやシルバーの斑入り葉、ペンシル型や枝垂れ樹形などのものはセイヨウイチイと思われ、稀に公園や個人庭に植栽されています。イチイ属 Taxus は北半球に7~8種が知られ、日本にはイチイ1種のみがあります。
No.0063 キャラボク Taxus cuspidata var. nana
イチイの変種で葉は長さ1~2cmで枝にらせん状につき、樹高1~2m。本州日本海側の深山の風衝地に生える(林,2014)。植栽されます。
No.0064 カヤ Torreya nucifera
常緑高木~低木。樹皮は灰褐色で縦に裂けます。葉はほぼ水平に2列に並び、長さ18~25mm、幅約3mm、革質で硬く、上面は光沢があって中肋ははっきりせず、下面は中肋が明らかで両側に狭い白色の気孔帯があり、先端は鋭く尖り触ると痛いです。花期は5月。種子は翌年の9~10月に熟し、長さ20~30mmの楕円形で、仮種皮は緑色のまま落下し、裂開すると褐色の種子が現れます。本州(宮城県以南)、四国、九州(屋久島まで)に分布。
引用文献
林将之. 2014. 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類. 山と溪谷社, 東京. 759pp. ISBN: 9784635070324
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726