メギ科 Berberidaceae は多年草または低木。葉は互生し、単葉と複葉のものがあります。萼片は3個ずつが3~4輪、または2個ずつが4輪に並び、外側の1~2輪は小型で花時に早く落ち、内側の2輪は大型で花弁様になります。花弁は2個または3個ずつが2輪に並んでつきます。花弁の基部に蜜腺があります。子房は上位で1心皮よりなります。果実は液果または袋果。主として北半球の温帯に16属約650種が知られ、メギ属 Berberis には南アメリカ南端にまでおよぶものがあります。日本には7属14種が分布します。
本記事ではメギ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
- No.1166.a ハッカクレン Dysosma versipellis
- No.1169 メギ Berberis thunbergii
- No.1169.1 メギ(ローズグロー) Berberis thunbergii ‘Rose Glow’
- No.1173 ヒイラギナンテン Berberis japonica
- No.1174 ホソバヒイラギナンテン Berberis fortunei
- No.1174.a ナリヒラヒイラギナンテン Berberis eurybracteata subsp. eurybracteata
- No.1175 イカリソウ Epimedium grandiflorum var. thunbergianum f. violaceum
- No.1177 トキワイカリソウ Epimedium sempervirens
- No.1181 オオバイカイカリソウ Epimedium x setosum
- No.1183 ホザキノイカリソウ Epimedium sagittatum var. sagittatum
- No.1185 ナンテン Nandina domestica
- No.1185.1 オタフクナンテン Nandina domestica ‘Otafukunanten’
- 引用文献
No.1166.a ハッカクレン Dysosma versipellis
落葉多年草(Flora of China)。高さ40~150cm。地上茎は直立し、淡緑色で、枝分かれせず、つやがある。葉は互生し、下葉の葉柄は12〜25cm、上葉の葉柄は1〜3cm、葉身は準円形で直径30cm、薄い紙質で、外面は光沢があり、葉脈は明らかに隆起し、外面は光沢があり、4〜9裂し、小片は広三角、卵形または長楕円形-楕円形で2.5〜4cm、底面は5〜7cm、縁にはわずかに鋸歯があって頂部は急で裂け目がありません。花期は3~6月。花序は5〜8裂し、花弁は垂直に伸びます。花柄は下垂し、細長く、軟毛があります。花は葉身の基部近くにつき、赤色。萼片は長楕円形で0.6〜1.8cm、3〜8mm、外側は綿毛状、内側は光沢があり、先端は鋭く尖ります。花弁はへら状楕円形で、約2.5×0.8cm、光沢があります。雄しべは約1.8cmで、花糸は葯より短く、葯の結合部はやや長く、光沢があり、鋭く尖ります。子房は楕円形で光沢があり、雄しべは短く、盾状。果期は5~9月。果実は楕円形または卵形で、4×3.5cmほど。種子は多数。中国原産で、日本など各国で観賞用に栽培されます。森林、雑木林、小川の陰の湿った場所、竹林に生えます。
No.1169 メギ Berberis thunbergii
別名コトリノボラズ。落葉低木。幹には縦溝や稜が目立ち、葉が変形した刺針があります。樹皮の内皮と材は黄色。葉は束生し、倒卵形または楕円形で全縁、下面は白色を帯びます。花期は4~5月。花は黄色で、短枝の先から2~4個が垂れ下がります。果実は液果で赤く熟します。日本原産で本州(関東地方以西)、四国、九州に分布。日本及び海外でも観賞用に栽培され北米やヨーロッパでは帰化しています(CABI,2019)。丘陵の雑木林内や山地の風衝地に多い。赤い果実は鳥散布への適応で、少なくともヒヨドリ、ツグミ、オナガに食べられることが知られています(叶内,2021)。
No.1169.1 メギ(ローズグロー) Berberis thunbergii ‘Rose Glow’
は若葉には不規則な桃色の班があり、成熟すると葉が殆ど桃色と黒色(~赤紫色)の2色の葉色になるメギの園芸品種。
No.1173 ヒイラギナンテン Berberis japonica
常緑低木。羽状複葉は長さ30~40cm、小葉は無柄で長さ4~9cm、幅2.5~5cm、鋭く尖った粗い大きな鋸歯あり、革質で上面は光沢があります。花は黄色、総状花序にややまばらにつき、多くは垂れ下がります。液果は楕円形またはほぼ球形で黒紫色に熟します。ヒマラヤから中国、台湾原産で江戸時代初期に渡来したとされます。日本で公園・庭園などに植栽されているものは本種が多く、ときに平野部の樹林内に逸出したものをみられますが、開花していない若い株が多い。中国原産の B. lomariifolia との雑種で、花序がやや直立しヒイラギナンテンより早く(1~2月)に開花する園芸品があり、植栽数が増えているので混在している可能性があります。ミツバチが蜜を吸おうとして雄しべに触れると雄しべが動く反射運動が起こり送粉します(田中・平野,2000)。
No.1174 ホソバヒイラギナンテン Berberis fortunei
常緑低木。羽状複葉は長さ15~30cm、小葉は無柄で長さ7~14cm、幅1~2cm、低い鋸歯がまばらにあり、革質で上面はやや光沢があります。総状花序は斜上するものが多く、花は黄色でやや密につきます。液果はほぼ球形で黒紫色に熟します。中国原産で明治時代初期に渡来しました。公園や個人庭などに植栽されています。
No.1174.a ナリヒラヒイラギナンテン Berberis eurybracteata subsp. eurybracteata
常緑低木(林,2014)。長さ20~40cmの奇数羽状複葉。小葉は5~10対、長さ5~15cm。ホソバヒイラギナンテンに似ますが、小葉がより細長く、普通5対以上あることが違います。小葉の幅はかなり変異がありますが、subsp. eurybracteata では2cm以上の幅。花は晩夏~初冬に咲きます。subsp. eurybracteata では小花柄は3~5mm。樹高1~2m。中国原産で、日本で観賞用に栽培され庭木、公園樹で見られます。常緑広葉樹林、竹林、林縁、雑木林、雑草の生い茂る斜面、開けた岩場などに自生します(Flora of China)。subsp. ganpinensis では小葉の幅が1.5cm以下で小花柄は1.5~2mm。
No.1175 イカリソウ Epimedium grandiflorum var. thunbergianum f. violaceum
落葉多年草。葉は2回3出複葉で、冬季にはほとんどが枯れます。小葉は基部が不揃いな心形、縁には針状の鋸歯があり、下面に開出する短毛あります。花は紅紫色で下を向いて咲き、花弁には長い距があります。北海道(渡島半島)、本州(多くは太平洋側)に分布。丘陵の林縁や明るい雑木林に生えます。基本変種 var. grandiflorum はヤチマタイカリソウで近畿地方と四国に分布します。
No.1177 トキワイカリソウ Epimedium sempervirens
常緑多年草(山に咲く花)。高さ30〜60cmになります。葉は2回3出複葉。小葉はかたく、ゆがんだ卵形で先が尾状にのび、基部は深い心形、長さ5〜10cm、ふちに刺毛があります。花期は4〜5月。花は直径3〜4cm、白色〜紅紫色。花弁は4個、距があります。萼は花弁状で8個。内側の4個が大きく、外側4個は早落性。本州(東北地方〜山陰地方の日本海側)の多雪地の山野の林内に生えます。
No.1181 オオバイカイカリソウ Epimedium x setosum
多年草(山に咲く花)。草丈25~40cm。葉は1~2回2出複葉、小葉は卵状楕円形で長さ6~10cm、縁に刺毛があります。花は白色で距がありません。本州(中部地方)に分布し、山地の林内に生えます。
No.1183 ホザキノイカリソウ Epimedium sagittatum var. sagittatum
草本(Flora of China)。高さ30~50cm。根茎は短く、丈夫で、節があり、多数の繊維状の根を持ちます。葉は基部と葉柄があり、三出複葉で、卵形から卵状披針形、5~19×3~8cm、革質、下面にまばらに縞模様があり、基部が深くまたは浅くへこみ、先端が尖るか尖り、頂小葉は均等な丸さの裂片か長円形、側小葉は斜めで外葉は大きく三角形で尖り、内葉は小さく丸く、縁には密接な紡錘形の下棘があります。花期は4〜5月。花茎には2枚の対生する3出複葉の葉があります。花柄は10〜20(~30)×2〜4cm、20〜60輪、下部の花柄は3輪のこともあり、通常は光沢があり、ときに乏しい腺毛をもちます。花柄は約1cmで光沢があります。花は白色で、直径約8mmまたはそれ以下。外側の萼片は4個で、紫色の斑点があり、先端は鈍く、外側の対は狭卵形で約3.5×1.5mm、内側の対は長楕円形で約4.5×2mm、内側の萼片は白色の卵円形で約4×2mm、先端は鋭角。花弁は褐黄色で、袋状、1.5〜4mm、鈍い。雄しべは長く、3〜5mm、葯は2〜3mm。雌しべは約3mmで、雄しべは子房より長い。果期は5〜7月。蒴果は約1cm、果柄は約6mm。var. glabratum では小葉下面は無毛、頂小葉は長楕円、花は黄色となっています。
No.1185 ナンテン Nandina domestica
常緑低木。高さ約3mほどになります。樹皮は褐色。縦の溝があり、上部に枯れた葉の基部が残ります。葉は互生。3回奇数羽状複葉。小葉は長さ3〜7cm、幅1〜2.5cmの披針形。先は鋭くとがり、縁は全縁。革質で、表面は光沢があります。花期は5〜6月。枝先に大形の円錐花序を出し、直径6〜7mmの白い花を多数つけます。花被片は3個ずつ輪状に多数並び、内側のものほど大きく、もっとも内側の6個は花弁状になります。雄しべは6個で、花糸は短い。果実は液果。直径6〜7mmの球形、10〜11月に赤く熟します。種子は直径5〜6mmのほぼ球形。1個の果実にふつう2個入っています。茨城県以西〜九州の暖地の山野に自生もありますが、庭木として植えられているものが多い。日本、中国、インドに分布し、北アメリカ南東部、西インド諸島、南アメリカ(ペルー)に移入されています(Flora of China)。山野に生育するものはほとんどが逸出品で、元々中国からの渡来で、国内の自生は疑問とする意見もあります。ナンテンは音が「難転」、すなわち「難を転ずる」に通ずることから、縁起の良い木とされ特に厄除け、清め、火災除けを目的に鬼門、裏鬼門、便所のそば、正月用の鉢植えに利用されています。文献上ではミツバチが花に訪れたとする記録がある他(根来,2009)、インターネットではニホンミツバチの訪花した写真がいくつか確認できます。植物形態学的には液果ではあるものの比較的乾燥した赤い果実は鳥散布への適応で、少なくともムクドリに食べられることが知られています(上田,1999)。
No.1185.1 オタフクナンテン Nandina domestica ‘Otafukunanten’
樹高約30cm、葉幅がナンテンよりやや広く丸みがあるナンテンの矮生園芸品種。紅葉が美しいことから街路や花壇に広く植栽されます。
引用文献
CABI. 2019. Invasive Species Compendium: Berberis thunbergii (Japanese barberry). https://www.cabi.org/isc/datasheet/8808
林将之. 2014. 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類. 山と溪谷社, 東京. 759pp. ISBN: 9784635070324
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726
叶内拓哉. 2021. 野鳥と木の実ハンドブック 増補改訂版. 文一総合出版, 東京. 104pp. ISBN: 9784829981672
根来尚. 2009. 高岡市古城公園での訪花昆虫調査、および富山県内11ヵ所での調査結果比較. 富山市科学博物館研究報告 32: 39-60.
田中肇・平野隆久. 2000. 花の顔 実を結ぶための知恵. 山と渓谷社, 東京. 191pp. ISBN: 9784635063043
上田恵介. 1999. 意外な鳥の意外な好み 目立たない“乾果”を誰が食べる?. pp.64-75. In: 上田恵介編. 種子散布 助けあいの進化論 1 鳥が運ぶ種子. 築地書館, 東京. ISBN: 9784806711926