【種子植物図鑑 #039】クスノキ科の種類は?写真一覧

種子植物図鑑
Cinnamomum camphora

クスノキ科 Lauraceae は常緑または落葉の木本。葉は互生まれに対生します。芳香のあるものが多いです。熱帯から温帯にかけて約31属2,000種が知られ、日本には9属29種が分布しています。数種が植栽されます。

本記事ではクスノキ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

基本情報は林(2014)、神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

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No.0140 クスノキ Cinnamomum camphora

常緑高木。葉は卵形から楕円形で、普通3行する脈の付け根に虫えい(ダニ室)があります。若葉は赤味のある橙色から山吹色。古い葉は紅葉します。花期は5~6月。花は円錐花序で腋生し、枝分かれして数花をつけます。萼は漏斗状で通常6裂するが裂片は花後に落ち、杯状の筒部だけが残ります。果実は液果で杯状の萼筒に包まれ、黒紫色に熟します。本州(関東地方以西)、四国、九州;台湾に分布していますが、日本のものは本来の自生ではなく、古くに中国から導入された可能性があるといわれます。古くから植栽され、巨木になっているものもあります。ダニ室は従来捕食性ダニ(ケボソナガヒシダニ)の住処になると考えられてきましたが、それだけではなく、弱い植食性ダニ(フシダニ)をあえて住まわせることで、捕食性ダニ(カブリダニ)を植物体全体に定着させ、その後発生する強い植食性ダニから身を守るという複雑な共生を行っていることが分かっています(Kasai et al., 2005; 笠井,2006)。

クスノキの葉上面
クスノキの葉上面
クスノキの葉下面
クスノキの葉下面
クスノキの樹皮
クスノキの樹皮
クスノキの花
クスノキの花
クスノキの果実
クスノキの果実

No.0141 ヤブニッケイ Cinnamomum tenuifolium

常緑高木。葉は狭卵形または長楕円形で先端は短く尖り、葉下面は灰白色。葉脈は基部から少し離れたところから3脈になりますが、途中で不鮮明になります。枝先の葉は水平に近くつくことが多く羽状葉のように見えます。果実はやや楕円形の液果で杯状の萼筒に包まれ、黒紫色に熟します。本州(関東地方以西)、四国、九州、琉球;台湾、中国に分布しています。低山~沿海地に多く見られます。

ヤブニッケイの葉上面
ヤブニッケイの葉上面
ヤブニッケイの葉下面
ヤブニッケイの葉下面
ヤブニッケイの樹皮
ヤブニッケイの樹皮

No.0143 マルバニッケイ Cinnamomum daphnoides

常緑小高木~低木。葉身長3~7cm、最大幅は先寄り。葉柄0.5~1cm。ヤブニッケイを小型にした印象で、葉は三行脈が目立ち、先が丸い倒卵形。樹高2~10m。福岡、長崎、鹿児島、沖縄の海岸に稀に自生。暖地で時に庭木、生垣。

マルバニッケイの葉
マルバニッケイの葉

No.0143.a セイロンニッケイ Cinnamomum verum

常緑高木。高さが10〜15m。葉は卵形で楕円形で、長さは7〜18cm。円錐花序に配置された花は、緑がかった色と独特の香りを持っています。果実は1つの種子を含む紫色の1cmの核果です。スリランカ原産。内樹皮は香辛料のシナモンを作るために使われます。

セイロンニッケイの葉
セイロンニッケイの葉

No.0144 タブノキ Machilus thunbergii

別名イヌグス。冬芽は瓦重ね状の鱗片に包まれ、芽鱗の縁に黄褐色で光沢のある毛があります。若葉は赤味を帯びます。葉は有柄で倒卵形または楕円形、葉脈は羽状脈で3行脈とはなりません。花期は4~5月。円錐花序は分枝し散房状に広がります。萼は深く6裂し、花時に裂片が展開します。雄しべは9個。液果は6~7月に紫黒色に熟し、萼片が下方に反り返って宿存します。果柄は赤い。本州、四国、九州、琉球;朝鮮半島(南部)に分布し、低地~低山地にかけて広く見られます。常緑広葉樹林の主要な構成樹種。

タブノキの葉上面
タブノキの葉上面
タブノキの葉下面
タブノキの葉下面
タブノキの樹皮
タブノキの樹皮
タブノキの花序
タブノキの花序
タブノキの花
タブノキの花

No.0145 アオガシ Machilus japonica

別名ホソバタブ。若葉は緑色で赤味を帯びません。花期は4~5月。円錐花序は長い柄があり、分枝は横に広がります。液果は径約10mmで紫黒色に熟し、硬化していない6個の萼片が下方に反り返って宿存します。果柄は赤い。本州(関東地方・中部地方以西)、四国、九州、朝鮮半島(南部)に分布。

アオガシの葉上面
アオガシの葉上面
アオガシの葉下面
アオガシの葉下面
アオガシの枝
アオガシの枝
アオガシの冬芽
アオガシの冬芽

No.0146.a オガサワラアオグス Machilus boninensis

別名ムニンイヌグス。常緑小高木~高木。当年枝は緑色で前年枝は赤褐色となります。葉は互生し、革質、長楕円形です。葉腋から出る有柄の円錐花序に淡黄緑色の小花を10個前後つけます。果実は球形で紫黒色に熟します。全株無毛。小笠原諸島の父島と母島にのみ自生する固有種。根沿いの明るい林内や林縁にはえる。

オガサワラアオグスの葉
オガサワラアオグスの葉

No.0147 ワニナシ Persea americana

別名アボカド。葉は長さ12~25cmで互生し、高さ20mになります。新芽や葉腋から、落葉性の苞葉をもつ花序を出します。花は目立たず、緑がかった黄色で幅5~10mm。外果皮が薄く、より大きく、より肉厚な果実を生産するための人間による選択圧のために変化しています。果実は果実の内皮が種子を覆っています。果実は長さ7~20cm、重さ100~1000gで、中央に長さ5~6.4cmの大きな種子を持ちます。メキシコ中南部からグアテマラまでの中央アメリカが原産。高地に自生しています。果実は良質な不飽和脂肪酸に富み「森のバター」と呼ばれ、元々は更新世のアメリカに居た地上性ナマケモノ Folivora や ゾウ Gomphotheriidae によって食べられることで種子散布されていましたが、絶滅後は散布者を失いました。現在はその代わりにヒトの手によって栽培され増えています(Janzen & Martin, 1982; Barlow, 2008)。ペットや家畜への毒物となるペルシンなどが含まれることもこのことに関連するとされます。紀元前5000年には栽培されています。

ワニナシの葉上面、アボカド
ワニナシの葉上面
ワニナシの葉下面、アボカド
ワニナシの葉下面
ワニナシの樹皮、アボカド
ワニナシの樹皮
ワニナシの果実、アボカド
ワニナシの果実
ワニナシの果実、アボカド
ワニナシの種子

No.0148 シロダモ Neolitsea sericea

常緑低木。冬芽はふく瓦状の鱗片に包まれます。葉は互生、枝の上部ではときに偽輪生になり、葉柄の長さ2~3cm、3行脈があり、下面は著しい白色、若葉は両面に黄金色の絹状毛があります。花期は10月。散形花序は葉腋から枝中間の落葉痕につきます。果実は液果で翌年の秋に赤色に熟し、雌株では花と果実が同時に見られます。本州、四国、九州、琉球;朝鮮半島(南部)に分布。シイ・カシ帯で見られます。

シロダモの葉上面
シロダモの葉上面
シロダモの葉下面
シロダモの葉下面
シロダモの花
シロダモの花
シロダモの果実
シロダモの果実

No.0148.a オガサワラシロダモ Neolitsea boninensis

常緑中高木。新葉は黄褐色の柔毛があり、完全に展葉すると長さ4~9cm、幅2~4cmになり、花も果実も小さいものが多いです。小笠原諸島の固有種。

オガサワラシロダモの葉
オガサワラシロダモの葉
オガサワラシロダモの未熟果
オガサワラシロダモの未熟果

No.0149 イヌガシ Neolitsea aciculata

常緑高木。葉は互生、枝の上部では輪生状になり、葉柄の長さ2~3cm、3行脈があり、下面はやや灰白色、若葉の両面は帯白色~黄金色の絹状毛に被われます。花期は3~4月。散形花序は葉腋から枝中間の落葉痕につきます。果実は液果でその年に黒く熟します。本州(関東地方南部以西)、四国、九州、琉球;朝鮮半島(南部)に分布。

イヌガシの葉上面
イヌガシの葉上面
イヌガシの葉下面
イヌガシの葉下面
イヌガシの花
イヌガシの花

No.0150 ハマビワ Litsea japonica

常緑小低木。葉は枝先にやや集まってつき、上面は光沢があり、下面は黄褐色の綿毛が目立ちます。本州(島根県、山口県)、四国、九州、沖縄;朝鮮半島南部に分布。沿海地の公園などに植栽されます。暖地性の樹木なので内陸部での生育は良くありません。

ハマビワの葉上面
ハマビワの葉上面
ハマビワの葉下面
ハマビワの葉下面
ハマビワの葉序
ハマビワの葉序
ハマビワの樹皮
ハマビワの樹皮

No.0152 カゴノキ Litsea coreana

常緑高木。幹の樹皮は鹿の子模様にはげ落ちます。枝は細く、前年枝は褐色。葉は互生し、枝先に車輪状に集まってつきます。花期は8~9月。花序は柄がなく、葉腋および葉の下から小枝の中央あたりまでに数個が散形状につき、花柄は短い。果実は倒卵状の球形で翌年の秋に赤く熟します。果柄の先端は肥大し、6裂した花被片が宿存します。本州(関東地方・福井県以西)、四国、九州、沖縄;済州島、朝鮮半島(南部)に分布。沿海部に多いです。

カゴノキの葉上面
カゴノキの葉上面
カゴノキの葉下面
カゴノキの葉下面
カゴノキの樹皮
カゴノキの樹皮

No.0153 バリバリノキ Actinodaphne acuminata

別名アオカゴノキ。小枝は太めで緑色、無毛。葉は互生し、枝の上部では車輪状に集まってつき、成葉になってもやや下垂します。花期は8月。花序は葉腋につきます。果実は長さ15mmくらいの楕円体で、翌年の6月に黒紫色に熟します。本州(千葉県以西)、四国、九州、琉球に分布。

バリバリノキの葉
バリバリノキの葉
バリバリノキの樹皮
バリバリノキの樹皮

No.0154 クロモジ Lindera umbellata

落葉低木。枝や葉に芳香があります。葉は倒卵状の長楕円形で、先は突出して鈍端になるか尖り、基部はくさび形になります。葉の上面は無毛で、幼葉の下面は毛に被われているが成葉になると無毛になります。花期は4月。花序は頂芽の基部の芽鱗の腋に単生し、数個の花を散形につけます。果実は球形の液果で黒く熟します。本州(東北地方~東海地方の太平洋側、近畿地方、中国地方)、四国(一部)、九州(北部);中国に分布。山地や丘陵地の林内に多いです。

クロモジの葉上面
クロモジの葉上面
クロモジの葉下面
クロモジの葉下面
クロモジの花
クロモジの花

No.0155 オオバクロモジ Lindera umbellata var. membranacea

葉身長が7~14cmと大きいクロモジの変種。北海道、東北~近畿の日本海側に分布します。

オオバクロモジの葉上面
オオバクロモジの葉上面
オオバクロモジの葉下面
オオバクロモジの葉下面
オオバクロモジの樹皮
オオバクロモジの樹皮

No.0158 ダンコウバイ Lindera obtusiloba

落葉低木。枝は太い。葉は広卵形~卵円形で普通3裂し、基部は切形ないし浅い心形。葉柄は長さ5~30mmで赤味を帯びます。花期は3~4月。花は散形につき、黄色で小さく、葉に先だって咲きます。果実は赤~暗紫色に熟します。本州(関東地方・新潟県以西)、四国、九州;朝鮮半島、中国(東北部)に分布。山地(クリ帯~ブナ帯)林内で見られます。

ダンコウバイの葉上面
ダンコウバイの葉上面
ダンコウバイの葉下面
ダンコウバイの葉下面

No.0160 テンダイウヤク Lindera aggregata

常緑低木。葉身長4~8cm、最大幅は中央。葉柄0.4~1cm。葉はほぼ円形~梢円形で、シロダモのように基部で分岐する三行脈が目立ち、葉先がつまみのように突き出ることが特徴。葉が小型なので見分けやすいです。樹高2~5m。春に葉腋に小さな黄色の花が集まって咲きます。果実は径7~8mmのほぼ球体で、秋に黒く熟します。中国原産。18世紀前半に薬用として持ち込まれ、庭木として栽培されます。西日本の暖地に稀に野生化。

テンダイウヤクの葉上面
テンダイウヤクの葉上面
テンダイウヤクの葉下面
テンダイウヤクの葉下面

No.0162 アブラチャン Lindera praecox

落葉低木。枝は細い。葉は狭卵形または楕円形で鋭尖頭をなし、多くは無毛ですがときに下面脈状に軟毛があります。花期は3~4月。花は小型で黄色く、葉に先立って咲きます。果実は径約15mmの球形で黄褐色に熟したあと、果皮は乾燥して数片に割れ、球形の種子を落とします。本州、四国、九州に分布。山地や丘陵地の谷部林内で普通に見られます。

アブラチャンの葉上面
アブラチャンの葉上面
アブラチャンの葉下面
アブラチャンの葉下面
アブラチャンの雄花
アブラチャンの雄花

No.0164 ゲッケイジュ Laurus nobilis

別名ローレル(英)、ローリエ(仏)。常緑高木。小枝は緑色。葉は互生し、長楕円形の革質で、全縁で波打っていることが多いです。芳香があり、葉はハーブとして肉料理に利用されます。雌雄異株。花期は4月。果実はほぼ円形で黒く熟します。明治時代に渡来し個人庭や公園などに広く植栽されていますが、雄株に比べ雌株は極端に少なくごく稀にしか見られません。栽培放置されたものも多く見られますが、逸出している可能性もあります。

ゲッケイジュの葉上面
ゲッケイジュの葉上面
ゲッケイジュの葉下面
ゲッケイジュの葉下面
ゲッケイジュの樹皮
ゲッケイジュの樹皮
ゲッケイジュの雄花
ゲッケイジュの雄花

引用文献

Barlow, C. 2008. The ghosts of evolution: nonsensical fruit, missing partners, and other ecological anachronisms. Basic Books. New York. 304pp. ISBN: 9780465005512

林将之. 2014. 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類. 山と溪谷社, 東京. 759pp. ISBN: 9784635070324

Janzen, D. H., & Martin, P. S. 1982. Neotropical anachronisms: the fruits the gomphotheres ate. Science 215(4528): 19-27. https://doi.org/10.1126/science.215.4528.19

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

笠井敦. 2006. クスノキとそのダニ室内外で観察されるダニ類の相互作用に関する研究. Doctoral dissertation, 京都大学. http://hdl.handle.net/2433/144106

Kasai, A., Yano, S., & Takafuji, A. 2005. Prey–predator mutualism in a tritrophic system on a camphor tree. Ecological research 20(2): 163-166. https://doi.org/10.1007/s11284-004-0030-9

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