カタバミ・オッタチカタバミ・オオキバナカタバミはいずれもカタバミ科カタバミ属に含まれ、膨大なカタバミ属の中でも花が黄色系統の仲間です。極めて普通種で都市部のコンクリートの隙間からでも平気で生えて生えてくる丈夫さから日本では家紋に選ばれるほど古くから注目されていますが、外来種の侵入により3種の区別がつかない人が増えているかもしれません。オオキバナカタバミは簡単に区別できるものの、カタバミとオッタチカタバミは慣れないとかなり難しく、カタバミには「タチカタバミ」というよく似た変種も含まれているので混乱します。違いは様々ありますが、葉の出方で区別できるのではないかと思います。本記事では花が黄色いカタバミ属の分類・形態について解説していきます。
カタバミ・オッタチカタバミ・オオキバナカタバミとは?
カタバミ Oxalis corniculata は日本の北海道・本州・四国・九州・琉球;熱帯~温帯に広く分布し、路傍・空き地・農耕地などに広く生える多年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。
オッタチカタバミ Oxalis dillenii は北アメリカ原産で、国内各地(関東地方以西)に帰化し、路傍・空き地などに生える多年草です。
オオキバナカタバミ Oxalis pes-caprae は別名キバナハナカタバミ。アフリカ原産で、熱帯~亜熱帯に広く帰化した多年草です。日本へは明治中期に観賞用に渡来し、1961年に九州南部に帰化しはじめ、その後、本州中部地方以南に帰化しました。
いずれもカタバミ科カタバミ属に含まれ、膨大なカタバミ属の中でも小葉が倒卵形で、角は円くて、花が黄色系統の仲間です。
野外では春になると一斉に、特に午前に開花し、極めて丈夫で、都市部のコンクリートの隙間からでも平気で生えてきます。
しかもカタバミの仲間はシュウ酸を含むため、酸味や結晶化をおこし、哺乳類や植食性の昆虫からの食害にも強い耐性があります(Mustapha, 2024)。そもそも、シュウ酸の英名である「oxalic acid」という名称は、カタバミ属の学名である Oxalis(オキサリス)に由来します。カタバミの葉からこの酸が初めて分離・抽出されたことにちなんで名付けられています。ただし、シュウ酸に耐性があるヤマトシジミ Zizeeria maha という蝶の食草としても有名です。
このほか、シュウ酸にはカルシウムの調整や貯蔵・細胞内イオンバランスやpH調整・光環境の調整・炭素循環への関与・毒物や重金属の解毒(ファイトレメディエーション)としての役割が指摘されています。
カタバミが都市部のコンクリートでも生えるのはシュウ酸はカドミウム(Cd)・鉛(Pb)・亜鉛(Zn)を結晶化して隔離し、都市環境や汚染土壌での生存に寄与していることも大きいでしょう。
ヒトの場合はシュウ酸の酸味を逆に珍重し、アジアを中心に食用・薬用として利用されてきました(Zhong et al., 2025)。
さらに、その丈夫さから子孫繁栄の象徴として日本では片喰紋・酢漿草紋として家紋に使用されてきました。戦国大名の長宗我部元親など、土佐長宗我部家の家紋はその代表です。時々シロツメクサ(クローバー)の葉と勘違いされます。
このように、非常に日本人にとっては身近で伝統的な植物ですが、カタバミの環境変異の多さや外来種の侵入もあり、識別に混乱があるグループでもあります。
カタバミ・オッタチカタバミ・オオキバナカタバミの違いは?
カタバミ・オッタチカタバミとオオキバナカタバミの違いは?
まず、オオキバナカタバミは比較的簡単に区別できます(神奈川県植物誌調査会,2018)。
カタバミとオッタチカタバミでは葉が互生する地上茎があり、花は径1cm以下であるのに対して、オオキバナカタバミでは地上茎がなく、花は径2cm以上という違いがあります。
ただし、カタバミでは成長しきっていない場合、茎が見当たらないことも普通です。
オオキバナカタバミは丈や葉もカタバミとオッタチカタバミに比べると、明らかに大型で立ち上がります。こちらの方が良い区別点でしょう。



カタバミ(タチカタバミ)とオッタチカタバミの違いは?
一方、カタバミとオッタチカタバミにはかなりややこしい部分があります(神奈川県植物誌調査会,2018)。
特にカタバミの変種であるタチカタバミ Oxalis corniculata f. erecta との違いが分からないという人も多いでしょう。タチカタバミとオッタチカタバミというネーミングは発見の歴史的経緯を反映した結果ですが、一般の人にはかなり混乱を招きます。
まず、タチカタバミですが、これは単に林縁や樹林内に生えるカタバミの生態型の1つで、光合成のために光を求めた結果のささいな変化であり、茎が直立する以外に特にカタバミと変わった点が見当たりません。
一方、オッタチカタバミはカタバミとは種レベルで異なる外来種で、通常は交雑して種子を作らないと考えられています。
具体的な違いですが、カタバミとタチカタバミでは、葉は茎の全体にちらばってつき、茎は全体に細く、葉の縁の毛は長く立ち、種子の畝は白くならないのに対して、オッタチカタバミでは、葉は茎の2~3か所に集まり、茎は基部に向かって節ごとに太まり、葉の縁の毛は曲がり、種子の畝は白くなるという違いがあります。
この図鑑上の表現をわかりやすく言語化するのは難しいですが、1か所の葉の根本から1枚の葉のみが出ていればカタバミかタチカタバミ、1か所の葉の根本から複数の葉が出ていればオッタチカタバミと考えるのが良いのではないかと思います。
また、「茎が太まる」というのは、オッタチカタバミは茎がガッシリとしていて丈夫であるということを言っています。
葉縁の毛については参考にはなると思いますが、曲がり具合というのはかなり抽象的で、個人的にはあまりはっきりわかっていません。カタバミとタチカタバミでは毛が長く目立つということなのかもしれません。






アカカタバミとウスアカカタバミの違いは?アカカタバミが赤い理由は?
カタバミ Oxalis corniculata には上述のタチカタバミの他にアカカタバミとウスアカカタバミという変種があります。
アカカタバミ f. rubrifolia は全体が小型で、花の色は赤みのある黄色で、葉や茎が暗紅紫色で目立つものです。
ウスアカカタバミ f. atropurpurea はアカカタバミよりも茎や葉の色が薄く、くすんだ緑紅紫色のものです。花の色はカタバミとアカカタバミの中間で、濃淡の幅があるとされます。
しかし、この変異にはグラデーションがあり、どちらであるか判別しがたい個体がかなり多く見られます。私は完全に全身が真っ赤なカタバミを見たことがなく、部分的には緑色のものが多く、それをアカカタバミというのかウスアカカタバミというのかよく分かっていません。
このアカカタバミやウスアカカタバミは赤色になる理由は、近年の研究によって、都市部のヒートアイランド現象による熱ストレスに適応するためであることが分かっています(Fukano et al., 2023)。つまり、アントシアニンという赤色色素によって光を遮断したり、抗酸化作用として働くことで熱によるダメージを防いでいるのです。
このことを踏まえると「アカカタバミなのかウスアカカタバミなのか」という2分割で頭を悩ませるのはあまり本質的ではないでしょう。



他に似た種類はいる?
カタバミ Oxalis corniculata には他にも多数の変種が知られています。
ホシザキカタバミ Oxalis corniculata f. plena は萼片も花弁も10個の二重咲きのものです。
ケカタバミ Oxalis corniculata var. trichocaulon は全草多毛で、葉の上面にも毛があるものです。ふつう海岸に点在するが,内陸部でも採られ,毛の量もさまざまで,カタバミとの境界は引きにくいです。
ヤエノケカタバミ Oxalis corniculata f. pleiopetala はケカタバミの特徴を持った個体のうち、八重咲きのものです。
全く別種としてエゾタチカタバミ Oxalis stricta も知られ、北海道・本州(中部);東アジア~ヨーロッパ・北アメリカに分布し、山間部の路傍・草地・林縁などに生えます。非常にタチカタバミと似ていますが、托葉がはっきりしない、花数が少ない、葉の上面に毛がある、小花柄が斜め下向きにならない、種子のうねが多いという違いがあります。
花が赤系統のカタバミ属は別記事をご覧ください。

引用文献
Fukano, Y., Yamori, W., Misu, H., Sato, M. P., Shirasawa, K., Tachiki, Y., & Uchida, K. (2023). From green to red: Urban heat stress drives leaf color evolution. Science Advances, 9(42), eabq3542. https://doi.org/10.1126/sciadv.abq3542
神奈川県植物誌調査会. (2018). 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会. ISBN: 9784991053726, https://flora-kanagawa2.sakura.ne.jp/efloraofkanagawa.html
Mustapha, A. R. (2024). Role of oxalate in plants: a literature review. [Preprint]. ResearchGate. https://doi.org/10.13140/RG.2.2.12530.31687
Zhong, T., He, J., Zhao, H., Tan, C., Zhou, W., Wu, C., & Kang, J. (2025). Oxalis corniculata L. As a Source of Natural Antioxidants: Phytochemistry, Bioactivities, and Application Potential. Antioxidants, 14(11), 1352. https://doi.org/10.3390/antiox14111352
