ネコノヒゲ(クミスクチン)に似た種類は?見分け方を解説、花には蝶が専門に訪れていた!?クミスクチン茶の効果は?

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Orthosiphon aristatus

ネコノヒゲ(クミスクチン)は日本国内では雄しべが長い花が人気の観賞用の園芸種として知られています。また沖縄ではクミスクチンと呼ばれ、クミスクチン茶として利用されることがあります。近縁種は同属にいくつか知られていますがあまり似ていません。日本では観賞用での利用が主ですが、世界的には利尿剤・血圧降下剤として利用され、糖尿病や腎臓病に効くとして使用されていきました。これらは伝統医療での利用方法ですが、科学的にもそのような作用を促進する多種多様なフェノール酸・フラボノイド・トリテルペノイドを含むことが分かっており、生体内でもその効果は認められています。副作用は現在のところ確認されていません。現在は西洋医学では利用されていませんが、将来的な利用が期待されています。そんなネコノヒゲの花ですが、名前の由来の通り、雄しべと雌しべが長いのが最も大きな特徴です。このような形にはどのような昆虫が訪れるのでしょうか?まだ詳細な研究はなされていませんが、いくつかの観察で口吻が長いチョウや蛾が訪れることが分かっています。ネコノヒゲの花はこのような蜜を奪おうとする昆虫達に対抗するように長い形に進化しているのです。ガーデニングでチョウを呼びたい人にはおすすめできるでしょう。様々な花の色はやってくる昆虫が異なっている可能性があります。本記事ではネコノヒゲの分類・歴史・文化・薬用・送粉生態・種子散布について解説していきます。

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東南アジア原産で雄しべが長い花が人気の園芸種

ネコノヒゲ(猫の髭) Orthosiphon aristatus var. aristatus(シノニム:Orthosiphon stamineus) は別名オルトシフォン。東南アジア原産で中国中南部・中国東南部・台湾・インド・タイ・ベトナム・ラオス・カンボジア・ミャンマー・バングラデシュ・インドネシア・マレーシア・フィリピン・ニューギニア・オーストラリアに分布する多年草です。観賞用や薬用に栽培され、日本でも本土では観賞用に、沖縄では観賞用と薬用に栽培されています。シソ科。

他の別名として「クスクミン」と呼ばれることもありますが、これはマレー語で「ネコのヒゲ」という意味です。全くネコノヒゲの同じものであると考えて問題ありません。

また、医学分野では Orthosiphon stamineus の学名が使用されることが多いようですが、これはおそらく古い学名の間違いで、Suddee et al.(2005)によって整理された Orthosiphon aristatus var. aristatus が正しいと思われます。海外の論文などを調べる際は注意してください。

ネコノヒゲの葉
ネコノヒゲの花

ネコノヒゲ(クミスクチン)に似た種類は?

ネコノヒゲが含まれるOrthosiphon属はかなり多くの種類が含まれていますが、日本で見られるのは普通は本種とオルトシフォン・ラビアツス Orthosiphon labiatus・スイバタムラソウ Orthosiphon rubicundus に限られます。いずれも日本では園芸種で、自然分布していません。

ラビアツスやスイバタムラソウはネコノヒゲほど雄しべと雌しべが長く伸びないので見間違うことは殆どないでしょう。このことからネコノヒゲがOrthosiphon属の中でも特異な進化が起こしていることがうかがえます。

オルトシフォン・ラビアツスの葉|By Dinkum – Own work, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=24400166
オルトシフォン・ラビアツスの花|By SAplants – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=126645874
スイバタムラソウの葉|By Dinesh Valke from Thane, India – Orthosiphon rubicundus, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=51571041
スイバタムラソウの花|By Dinesh Valke from Thane, India – Orthosiphon rubicundus, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=51570744

ネコノヒゲはどのように利用されてきた?糖尿病や腎臓病に効く?

ネコノヒゲはどのように人に利用されてきたのでしょうか?勿論観賞用としても利用されてきましたが、それだけではないのです。

ネコノヒゲは様々な国で伝統的に多くの病気に使用されてきた歴史があります(Adnyana et al., 2013)。主要な目的は利尿剤・血圧降下剤としての利用で、糖尿病や腎臓病に使用されてきました。

オランダ・フランス・イギリスなどのヨーロッパ諸国では、ハーブとして利用されています。

インドネシアでは、盛んに栽培されています。葉は利尿・リューマチの予防と治療・糖尿病・高血圧・扁桃炎・てんかん・月経障害・淋病・梅毒・腎結石・胆石・急性および慢性腎炎・痛風関節炎・解熱に使用されてきました。

ベトナムでは、地上部を尿石症・浮腫・発疹熱・インフルエンザ・肝炎・黄疸・胆道結石症などに使用されてきました。

マレーシアでは、葉を利尿剤・膀胱炎の治療に用いてきました。膀胱の結石除去には、この植物の煎じ薬を使用してきました。

ミャンマーでは、葉は抗糖尿病薬として用いており、風乾させた葉の煎じ薬は尿路および腎臓疾患の治療に使用されてきました。

タイでは、葉を利尿剤・腎臓強壮剤・膀胱強壮剤に用いてきました。

日本でも沖縄県では、クミスクチンはウコンやグァバと並ぶ沖縄の代表的な薬草として知られ、体の解毒を促進する健康茶という名目で飲用されています。一般的には「クミスクチン茶」の名で販売されています。

ネコノヒゲやクミスクチン茶の科学的効果は?

様々な国でネコノヒゲが利用されてきたのは確かなようですが科学的には効果は認められているのでしょうか?

様々な研究の結果、抗増殖・細胞傷害活性・抗炎症・鎮痛作用・抗酸化活性・抗菌活性・降圧作用・血糖降下作用・脂質低下作用・抗肥満作用・胃保護活性があることが実際に認められています(Ashraf et al., 2018)。

特に血糖降下作用については、抗酸化活性、抗炎症作用、脂質代謝の調節、α-アミラーゼとα-グルコシダーゼの活性を阻害、インスリン分泌の促進、 解糖の促進と糖新生を阻害、GLP-1のレベル低下といった多方面での作用があるということが分かっています(Wang et al. 2022)。

ただしこれらの多くはヒト以外の動物実験の結果であることは留意してください。

成分としては、50種類のフェノール酸が含まれ、フェルラ酸・カフェ酸メチル・バニリン酸・プロトカテク酸・ロスマリン酸は、生体内で血糖値を下げることで知られています。

また、20種類以上のフラボノイドが含まれ、イソクエルシトリン・バイカレイン・ナリンゲニンは、生体内で血糖値を低下させます。

更に、20種類のトリテルペノイドが含まれ、α, β-アミリン・アルジュノール酸・ベツリン酸・トルメンチン酸・オレアノール酸・ウルソール酸もやはり生体内で血糖値を低下させます。

副作用に関しても気になるかもしれませんが伝統的には安全であると認識され、無いと考えられています。科学的にはヒトではまだ良くわかっていませんが、ゼブラフィッシュやラットを用いた実験では特別な毒性は全く発見されていません。しかし、全ての薬は毒と隣合わせなので、過剰な摂取はおすすめできないでしょう。

現在の西洋医学での糖尿病治療でのご存知のようにネコノヒゲの処方はなく、経口血糖降下薬とインスリン注射で行われています。

しかし、これらの薬のほとんどは副作用も知られており、長期使用にもインスリン受容体の感度を低下させ、インスリン抵抗性をもたらす可能性が指摘されています。

そのため、グルコース低下薬とネコノヒゲの併用によって、副作用を低減することができないかという視点で、今後の医学での利用も期待され、研究が続けられています。

「猫の髭」のような花の構造は?

ネコノヒゲの花は同時に輪生して2~6個咲き、輪散花序をなしています(塚本,1994)。これが多段について下部から開花し、全体としては長さ8~12cmの密穂花序となります。

花の構造はシソ科なので唇形花です。唇形花とは筒状の花冠の先が上下の二片に分かれ、唇のような形をしたものです。花冠は白~紫色で、雄しべは4個あります。

基本構造は他のシソ科と同じですが、面白いことに、雄しべが雌しべとともに上向きに反りながら長く花弁外に突出しています。この点が他のシソ科と異なっています。「ネコノヒゲ」の和名はこの雄しべと雌しべを猫の髭に例えたことに由来しています。

さらに花冠の下部にある「花筒」と呼ばれる細く長い管状の部分が、ネコノヒゲでは特別に長くなっている点も他のシソ科の花とは異なります。

ネコノヒゲの花

「猫の髭」のような花は蝶のために進化していた!?

このような「猫の髭」のような花の形にはどのような目的があるのでしょうか?花は勿論、普通は昆虫が訪れるように進化していますが、このような花の形では小さな昆虫ではすり抜けて上手く花粉を運んで貰えない気がします。

残念ながらこの花に訪れる昆虫の種類について本格的に調査した研究はないようですが、花の生態に詳しい研究者によって、チョウや蛾が訪れると考えられています(Van der Pijl, 1972)。

その理由は、蜜の分泌が多いことと、独特の花冠から考察されています。

大きなチョウや蛾の仲間では下唇(シソ科の花弁の下の部分)を着陸台として降り立ち、チョウ側は長い口吻を伸ばすことで遠くから蜜を吸おうとします。このような長い口吻を持つチョウや蛾は基本的には盗蜜者として知られており、普通の花の場合、雄しべや雌しべに触れること無く、蜜だけを飲んで逃げ去ってしまうことが多いのです。

しかし、その分、ネコノヒゲの花筒(花の管状になっている部分)も長くなっているので、チョウや蛾も十分近づかないと、内部の蜜を吸うことはできません。また、ネコノヒゲ側の雄しべと雌しべも十分長いので、これらを避けて蜜を吸うことは出来ません。こうして、チョウの頭・胸・脚の付け根などには強制的に花粉が付くことになります。

身近な例ではヒガンバナとよく似た方法で花粉を運んでいると考えて良さそうです(ただし、日本のヒガンバナは受粉せず球根でのみ増えます)。

花筒(花の管状になっている部分)は長くて細いので小さな訪問者は割って入ったとしても蜜が吸いにくいのかも知れません。

したがって、ネコノヒゲの「猫の髭」はチョウや蛾に特化したためにできた構造であると言えるでしょう。

『Google画像検索』を行うと日本でもジャコウアゲハやアゲハチョウがネコノヒゲに訪れている様子を確認することができました。

耐寒性が低いので、秋に気温が下がってきたら室内の日当たりがよい場所に移動する必要がありますが、ガーデニングでチョウを呼びたいと考えている方にはおすすめできる植物です。

Why are there types with long stamens and types with long pistils?

ネコノヒゲには雄しべが長いタイプの個体と雌しべが長いタイプの個体があります(Febjislami et al., 2019)。なぜこのようなことになっているのでしょうか?

This is thought to be a means of preventing self-pollination.This arrangement ensures that when insects visit the flowers, pollen from flowers with long stamens lands on the stigmas of flowers with long pistils, and vice versa.

This might be a little difficult to understand, but essentially, it means that the male and female sexes are spatially separated, and pollination occurs between plants with long stamens and plants with long pistils, but not between plants with long stamens or between plants with long pistils.

This characteristic is called "heterostyly" and can be found in a variety of plants.

The formation of heterostylicity is considered a rare phenomenon because it is genetically extremely complex (Watanabe, 2022). Furthermore, since it results in two distinct types, it effectively means that only half of the population can crossbreed. This is a significant disadvantage. Therefore, while it effectively prevents self-pollination, it remains a strategy for a minority group.

ネコノヒゲでは自家受粉が起こっているかは詳しくは不明ですが、普通は昆虫によって異なる花での受粉を促す他家受粉の花が持つ特徴なので、他家受粉の役割が大きいと考えられます(Febjislami et al., 2019)。

花の色によってやってくる昆虫は異なるのか?

ネコノヒゲには様々な品種が存在します。花の色は、白~紫色とかなり多様です。このような花の色の違いは訪れる昆虫に影響しているのでしょうか?

やはり実際に野外で研究されたわけではありませんが、一説では、赤色・青色・紫色の花にはチョウがメインとなって訪れ、白色の花には蛾がメインとなって訪れているのではないかと考えられています(Mohamad et al., 2018)。

チョウは一般に色覚が発達し、他の多くの昆虫が見えない赤系統が見えるように進化しています。そのため、赤・青・紫などの明るい色に訪れることができるのです。ネコノヒゲの赤色・青色・紫色の花でも同様である可能性があります。

一方で白色の花は蛾、特に夜行性のスズメガが好むことはよく知られています。ネコノヒゲの白色の花でも同様なのかもしれません。インターネットでもハワイの植物園のサイト内でスズメガが訪れているという記述もあります(Hawaii Tropical Botanical Garden, 2020)。そのため、実証があるといえます。

このように花の色による違いがあるのだとすると非常に興味深い現象でしょう。

ところで、ここまでチョウや蛾のみが花に訪れると説明してきましたが、私が調査を行った所、インターネットではクマバチが訪れている様子も確認できました。それぞれの色で訪れる昆虫の正確な割合や種類などはまだまだ分かっていませんが、このことを踏まえると、ここまで説明してきたこととは異なり、大型の口の長いハナバチにも頼っている可能性もありそうです。

果実は分離果

果実は分離果で、複数室をもつ1個の雌しべに由来し、これが複数の単位に縦に分かれる果実となっています。それぞれの小堅果は暗褐色、長さ約2mmです。重力や小さな風によって散布されるものと思われます。

References

Adnyana, I. K., Setiawan, F., & Insanu, M. 2013. From ethnopharmacology to clinical study of Orthosiphon stamineus Benth. International Journal of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences 5(3): 66-73. ISSN: 0975-1491, https://www.researchgate.net/publication/286487506

Ashraf, K., Sultan, S., & Adam, A. 2018. Orthosiphon stamineus Benth. is an outstanding food medicine: Review of phytochemical and pharmacological activities. Journal of Pharmacy & Bioallied Sciences 10(3): 109-118. https://doi.org/10.4103%2Fjpbs.JPBS_253_17

Febjislami, S., Kurniawati, A., Melati, M., & Wahyu, Y. 2019. Morphological characters, flowering and seed germination of the Indonesian medicinal plant Orthosiphon aristatus. Biodiversitas: Journal of Biological Diversity 20(2): 328-337. ISSN: 1412-033X, https://doi.org/10.13057/biodiv/d200204

Hawaii Tropical Botanical Garden. 2020. Orthosiphon aristatus. https://htbg.com/cats-whiskers/

Mohamad, N.K., Yeo, F.K.S., See, W.S., Lay, W.H., & Tawan, C.S. 2018. A preliminary study of floral development and breeding system of Orthosiphon aristatus (Blume) Miq. Borneo Science 39(2): 57-71. ISSN: 1394-4339, https://www.researchgate.net/publication/334129540

Suddee, S., Paton, A. J., & Parnell, J. A. N. 2005. Taxonomic revision of tribe Ocimeae Dumort.(Lamiaceae) in continental South East Asia III. Ociminae. Kew Bulletin 60(1): 3-75. https://www.jstor.org/stable/4110885

塚本洋太郎. 1994. 園芸植物大事典 コンパクト版. 小学館, 東京. 3710pp. ISBN: 9784093051118

Van der Pijl, L. 1972. Functional considerations and observations on the flowers of some Labiatae. Blumea: Biodiversity, Evolution and Biogeography of Plants 20(1): 93-103. ISSN: 0006-5196, https://repository.naturalis.nl/pub/525734

Wang, Q., Wang, J., Li, N., Liu, J., Zhou, J., Zhuang, P., & Chen, H. 2022. A systematic review of Orthosiphon stamineus Benth. in the treatment of diabetes and its complications. Molecules 27(2): 444. https://doi.org/10.3390/molecules27020444

Watanabe, Kenta. 2022. Current Ecological and Evolutionary Biological Perspectives on "Heterostyle." Okinawa National College of Technology Bulletin 16: 31-45. https://doi.org/10.51104/nitokinawacollege.16.0_31

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