What are the differences between mustard greens, rapeseed, European rapeseed, and black mustard? How do their uses differ? Why did they evolve to be spicy? Brassica plants, essential for Japanese mustard and salad oil, have increased fruit production thanks to insect visits!

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Brassica juncea

カラシナ・アブラナ・セイヨウアブラナ・クロガラシは春に咲く黄色いアブラナ科の花4種で花の形は殆ど変わりません。生息環境もほぼ同じです。その上近い仲間が沢山いて、非常に混乱します。その複雑さから研究者ですら同定を間違うほどです。最近の研究で詳しい判別方法が分かってきました。最も大事な点は茎葉の茎の抱き方で、これを見れば大別できます。そこからは果実の長さや葉がロウ状物質の有無をチェックすることで4種を正確に区別できます。利用方法の違いとしては主にカラシナは和辛子として、アブラナは野菜として、セイヨウアブラナは菜種油として利用されます。クロガラシの利用は衰退してしまっています。アブラナ属の分類はややこしいのはアブラナ属の複雑な進化の歴史を反映しています。4種の十字花には主にミツバチが訪れますが、比較的ジェネラリストということができそうです。紫外線カメラで見るとヒトの目とは色が異なっています。長らく自家受粉が可能なセイヨウアブラナとカラシナでは昆虫の重要性は軽視されてきましたが、収量を増大させるにはやはり昆虫が必要であることが研究で分かっています。本記事ではアブラナ属の分類・歴史・送粉生態・種子散布について解説していきます。

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研究者ですら間違う春に咲く黄色いアブラナ科の花4種

カラシナ(芥子菜) Brassica juncea は一年草または越年草です(津田ら,2016)。現在も中近東地域にはカラシナの野生種が生育することから西アジア原産とするのが有力で、現在ではアジア・ヨーロッパ・北アフリカ・オーストラリア・南北アメリカに幅広く分布し、海岸低地、砂浜、高原地、1,150mかそれ以上の山地に存在し、砂の多い道路沿い・荒れ地・畑に野生化して生えます。日本では平安時代以前に渡来し、明治時代以降に帰化し、北海道・本州・四国・九州・南西諸島(範囲不明)に分布し、一部堤防上などに大群落をつくっています。明治時代以降に帰化した野生型はセイヨウカラシナと呼ばれることがありますが、現状学名は変わらず、具体的な違いが発見されない限り、不適切だと思われます。

アブラナ(油菜) Brassica rapa var. oleifera は一年草または越年草です(津田ら,2016)。ヨーロッパ原産であり、現在では北アフリカ・アジア・オセアニア・北アメリカの温帯に広く分布し、奈良時代に野菜として渡来し、路側・耕地・埠頭・街中・荒地・川堤で野生化して生えます。日本では本州・九州の一部に分布するとされます。しかし、実際の分布はセイヨウアブラナと混同され、良くわかっていません。日本では道端、草地、土手に生育しているとされますが、最近の研究では河川環境に多いとされます(中山ら,2022)。

セイヨウアブラナ(西洋油菜) Brassica napus は一年草または越年草です(津田ら,2016)。ヨーロッパ原産であり、現在ではヨーロッパ・アジア・アフリカ・オセアニア・南北アメリカの温帯に広く分布し、河原や線路沿いに野生化して生えます。日本では北海道・本州・四国・九州に分布するとされます。最近の研究では道路に多いとされます(中山ら,2022)。明治初期にヨーロッパから入り、種子から菜種油をとるため栽培されました。

クロガラシ(黒芥子) Brassica nigra は一年草です。ヨーロッパ~西アジア原産で荒れ地に生えます。日本でも帰化します。

いずれも春に咲く黄色いアブラナ科アブラナ属の花で、花の形は殆ど変わりません。生息環境もほぼ同じです。その上近い仲間が沢山いて、非常に混乱します。その複雑さから研究者ですら同定を間違うほどです(中山ら,2022)。

カラシナ・アブラナ・セイヨウアブラナ・クロガラシの違いは?

しかし最近の研究でようやく区別方法が分かってきました(神奈川県植物誌調査会,2018;中山ら,2022)。

最も大事な点は茎葉の茎の抱き方で、これを見れば大別できます。

カラシナとクロガラシでは茎葉の基部が細まり茎を抱かないのに対して、アブラナとセイヨウアブラナでは茎葉の基部は明らかに茎を抱きます。

またアブラナとセイヨウアブラナは、アブラナでは基部は少し~やや大きく広がり茎を抱き(多くは耳たぶ状)、葉身はやや幅狭いのに対して、セイヨウアブラナでは基部はやや大きく広がり茎を完全に抱き(~ときに抱かないものもあり)、葉身は幅広いです。

カラシナとクロガラシでは茎葉の基部では(おそらく)区別がつきません。

カラシナ・クロガラシとアブラナ・セイヨウアブラナの区別はまた別の部分を見るのが確実です。

カラシナとクロガラシの違いとしては、カラシナでは小果柄は果柄(中軸)から広角に離れて、果序全体は開いて見え、果実は長く、30mm以上であるのに対して、クロガラシは小果柄は果柄(中軸)に狭角につき接近して、果序全体は密着し纏まって見え、果実は短く、12~20mmであるという点が挙げられます。果実の長さを確認するのが手っ取り早いでしょう。

アブラナとセイヨウアブラナの別の違いとしては、アブラナでは葉はロウ状物質に覆われて裏面は白っぽく見える場合が多い(表面は脱落しやすく、葉裏のロウ状物質は指で擦ると取れる)のに対して、セイヨウアブラナではロウ状物質はない~少ないという点が挙げられます。

アブラナとセイヨウアブラナの違いについては代表的なもの挙げましたが、この他にも花序、萼片、結莢状況、長角果などに差があります。判断に迷う場合は元論文(中山ら,2022)も確認してみてください。

なお、「ナノハナ(菜の花)」はアブラナ属の花の総称で、特にアブラナまたはセイヨウアブラナの別名としても用いられますが、生物学的文脈ではこの呼称は適切ではありません。

カラシナ・セイヨウカラシナ・アブラナの茎葉基部|中山ら(2022): 第7図より引用
カラシナの外観
カラシナの茎葉:葉は茎を抱いていない。
カラシナの花
カラシナの果実、果実は長く開いている
カラシナの果実:果実は長く、果序は開いている。
セイヨウアブラナの茎葉
セイヨウアブラナの花
セイヨウアブラナの果実:果柄と果実の間の曲がりは大きい。

カラシナ・アブラナ・セイヨウアブラナ・クロガラシの利用方法の違いは?

人間による利用方法にはどのような違いがあるでしょうか?

カラシナは名の通り、種子を和からし(オリエンタルマスタード)として利用します。また野菜や薬草でもあり、用途によって形態が変化しています。チリメンカラシ var. sabellica は葉先がちりめん状に縮れた丸葉で生で料理の付け合わせにしたり、漬物などにします。タカナ var. integrifolia は日本で漬物にして発酵させた高菜漬けとして食されます。ザーサイ var. tumida はこぶのように膨らんだ茎を漬物にされ中華料理に用いられています。セツリコ(雪裡紅) var. multiceps は高菜漬に似て漬物にされ中華料理に用いられています。その他にニンスーカ var. multisecta(銀糸芥)、ネカラシナ var. napiformis なども知られます。

なお、洋からしは シロガラシ Sinapis alba の種子から生産され、和からしより辛さがマイルドだとされます。

アブラナは種子を菜種油やキャノーラ油の生産に用いられることがありますが、野菜としての利用が主で、世界中で品種改良が繰り返され沢山の変種が生まれています。日本でも著名なカブ var. rapa、ハクサイ var. glabra ‘Pe-tsai’、コマツナ var. perviridis(東京都江戸川区小松川原産)、ミズナ var. nipposinica(京都西南部原産)、ノザワナ var. hakabura(野沢菜、長野県野沢温泉村原産ともされる)、タイサイ var. chinensis(チンゲンサイ、中国原産)の他、ヒノナ var. akana(日野菜)は滋賀県日野町原産の伝統野菜でカブに近いです。キサラギナ var. narinosa(如月菜、ターサイ)は葉は濃緑色で厚く縮緬状のシワの特徴をもつ中国の冬野菜です。スグキナ var. neosuguki(酸茎菜)は京の伝統野菜のひとつで、発酵させたすぐき漬として食されます。サントウサイ var. pekinensis ‘Dentata’(山東菜)は中国の山東省が原産とされ主に埼玉県で栽培され山東菜漬けとして食されます。アキザキナタネ var. dichotoma は種子を油料にします。カンザキハナナ var. amplexicaulis は観賞用です。

セイヨウアブラナは種子を菜種油・キャノーラ油(エルカ酸とグルコシノレートを含まないキャノーラ種から作った菜種油)・サラダ油(キャノーラ油に他植物の油を調合したもの)の生産に用いられるのが主な用途です。また菜種油の絞り粕である菜種粕は大豆に匹敵する高タンパクの動物飼料になり、ウシやブタの飼料になります。またナタネ油は食用としてだけではなく、バイオディーゼルにもなります。野菜としてはスウェーデンカブ var. napobrassica が知られます。

クロガラシは種子をかつては香辛料として利用するために栽培され、葉菜としての利用もありますが、あまり品種分化は進んでいません。他種に比べると利用は衰退していると言えそうです。その理由は草丈が高く種子が落ちやすいため機械収穫に向かず、工業化できないためだとされています。

カブの葉
コマツナの葉
コマツナの花
ミズナの葉
ミズナの花
ハクサイの外観
タイサイ(チンゲンサイ)の葉
カンザキハナナの花

カラシナはなぜ辛く進化した?自然界での効果

アブラナ科野菜は一般に特徴的に持つアレロパシー物質として、カラシ油配糖体(グルコシノレート)を持っていることが知られています(津田ら,2016)。アレロパシーとは殺菌・殺虫や他の植物の成長を抑制する作用のことです。

元々揮発性のイソチオシアネートという物質を細胞内に持っており、細胞組織が破壊されると、酵素ミロシナーゼが加水分解反応を起こして、グルコシノレートを作り出します。

このグルコシノレートはアブラナ科野菜の人間にとって味に関係する重要な化学成分ですが、抗菌活性、抗寄生虫活性等の強い生理活性作用があることが知られています。自然界では寄生する真菌・細菌・昆虫に対抗する目的で利用されているのでしょう。

また、イソチオシアネート類の中でも特にアリルイソチオシアネートは、クロガラシとカラシナが持っており、辛みの主成分と知られています。

つまり辛みは他の菌や植物と戦うために進化したのです。

実際、アリルイソチオシアネートはホウレンソウの萎凋病菌 Fusarium oxysporum の生育を抑制し、殺菌作用を示すことが報告されています。

また、カラシナの生葉を圃場にすき込むことで、雑草種子の発芽抑制効果の可能性が示されています。

なぜクロガラシとカラシナでだけ辛みを進化させたのかは今のところ詳しく分かっていないようですが、何らかの理由で祖先の環境では特に寄生生物との戦いが激しかったのかもしれません。

アブラナ属の分類はなぜややこしい?複雑なカラシナ・セイヨウアブラナの進化の歴史

なぜこんなにアブラナ属の分類はややこしいのでしょうか?

これは「禹の三角形(U’s triangle)」と呼ばれる複雑な進化の歴史があります(津田ら,2016;中山ら,2022)。元々世界にはヨーロッパ~中近東のアブラナ属はアブラナ・クロガラシ・カンラン Brassica oleracea (キャベツやブロッコリーなどの原種)しか生息していませんでした。

しかし、アブラナとクロガラシが中近東地域で交雑することによりカラシナが、アブラナとカンランがヨーロッパで交雑することによりセイヨウアブラナが、クロガラシとカンランが交雑することによりアビシニアガラシ Brassica carinata が誕生したのです。

つまり既存3種がかけ合わさって、新たに新規の3種が生まれたのです。これはゲノム構成から推察されており、遺伝子の調査でも確認されています。

アブラナ属の関係を示す「禹の三角形」|中山ら(2022): 第4図より引用

一般的には動物の場合は交雑によって代々子孫を残すことは難しいですが、植物にはそれを可能にする場合があります。

カラシナはクロガラシの性質を受け継いでいるので、辛みがあります。

セイヨウアブラナはカンランの性質を受け継いでいるので、葉の厚さやロウ状物質を持っています。これはキャベツを想像すればわかりやすいでしょう。

カラシナ・アブラナ・セイヨウアブラナ・クロガラシの類似性はそもそも近い仲間である上に、交雑から生まれた種も混じって中間的な特徴を持った種もあるので、当然であると言えるでしょう。

十字花を紫外線カメラで見るとヒトの目とは異なった特徴が分かる?

カラシナ・アブラナ・セイヨウアブラナの花期は3〜4月で、クロガラシの日本での花期は不明ですが、いずれも春に咲くものと思われます。いずれも黄色く、アブラナ科の特徴である十字形をしています。これは十字花と呼ばれるものです。このような花にはどのような昆虫が訪れるのでしょうか?

カラシナではミツバチが主で、他にハナバチ類・ハナアブ科・ハエ類が訪れていることが確認されています(津田ら,2016)。

アブラナではセイヨウミツバチ Apis melliferaとマルハナバチ類 Bombus spp. が訪れていることが確認されており、花粉の長距離散布を担う主要な送粉者であると考えられています(津田ら,2016)。

総じて十字花は平らなため、ハナバチが最も重要そうですが、多くの昆虫が利用でき、ジェネラリストとして進化しているのかもしれません。

それにしても、このシンプルな花には特にこれ以上特徴がないように感じてしまうかもしれません。

しかしアブラナでは、紫外線がみえるカメラで撮ると中央部が黒くなることが分かっています(山岡,2009;田中,2009)。中央部が「紫外線色」になって虫には見えていて、これに引き寄せられるようです。カラシナ・セイヨウアブラナ・クロガラシでも同様に色がついている可能性があります。ヒトから見ると黄色い花でしかありませんが、昆虫達にとっては意外に色彩豊かなのかもしれません。

カラシナの花

カラシナは自家受粉もできるが昆虫による他家受粉は不可欠だった!

ところで、アブラナは自家不和合性を持つため、他家受粉が必須です(津田ら,2016)。ですから上述のように昆虫による送粉は必須です。

一方、カラシナやセイヨウアブラナは自家和合性を持つため、自家受粉が可能です。そのため、昆虫による送粉は必須ではありません。そのため長い間、カラシナに昆虫は不要であると考えられてきました。

しかし、その後のノザワナ(アブラナの変種)とカラシナを用いた日本の研究ではそうではないことが分かってきました(大沢・生井,1987)。この研究ではシマハナアブという昆虫が居る環境と居ない環境を作り出し、シマハナアブが花に訪れた場合、結実率がどう変化するのか実験しました。

その結果、シマハナアブが居ない環境では結実率がノザワナでは0%、カラシナでは56%であったのに対して、シマハナアブが居る環境ではノザワナでは75%、カラシナでは90%に上昇したのです。

この結果は自家受粉が可能なカラシナであっても昆虫がいると結実する可能性が高くなることを示しています。カラシナを育てるには、野生の昆虫たちが収量増大には不可欠だったと考えることができるでしょう。

セイヨウアブラナについても圃場条件では隣接個体間の物理的接触や訪花昆虫によって他家受粉も約30%程度行われていると考えられています。

このように知らず知らずのうちに、野生生物から恩恵を受けていることを「生態系サービス」と言います。皆さんも和辛子を楽しんだり、サラダ油で料理をすることが好きなら、そのような昆虫の生息環境を守る自然保全にも注意を向けてみてください。

果実は角果で自動散布

果実はいずれも蒴果でアブラナ科の蒴果は特に角果と呼ばれます。

角果は種類によって長さには違いがありますが、2心皮から構成され間に隔膜があり、心皮が弁(valve)となって外れることで裂開します。熟すと刺激で、瞬間的に果皮が2枚に分かれて丸まり、種子をはじき飛ばす自動散布を行います(小林,2007)。

References

Kanagawa Prefecture Flora Survey Association. 2018. Kanagawa Prefecture Flora 2018 (Electronic Edition). Kanagawa Prefecture Flora Survey Association, Odawara. 1803pp. ISBN: 9784991053726

Kobayashi, Masaaki. 2007. From Flower to Seed: The Science of Seed Dispersal. National Rural Education Association, Tokyo. 247pp. ISBN: 9784881371251

中山祐一郎・郷原匡史・浅井元朗. 2022. 河川環境に自生するアブラナ属植物の識別について. 雑草研究 67(1): 31-43. https://doi.org/10.3719/weed.67.31

大沢良・生井兵治. 1987. ノザワナ(Brassica campestris)とキカラシナ(B. juncea)の受粉・結実に果たす花粉媒介昆虫の役割. 育種学雑誌 37(4): 453-463. ISSN: 0536-3683, https://doi.org/10.1270/jsbbs1951.37.453

田中肇. 2009. 昆虫の集まる花ハンドブック. 文一総合出版, 東京. 80pp. ISBN: 9784829901397

津田麻衣・田部井豊・大澤良・下野綾子・吉田康子・吉村泰幸. 2016. 遺伝子組換えセイヨウアブラナの生物多様性影響評価に必要なカラシナ(Brassica juncea)、アブラナ(B. rapa)、セイヨウアブラナ(B. napus)の生物情報集. 農業環境技術研究所報告 36: 1-45. ISSN: 0911-9450, https://doi.org/10.24514/00003021

山岡景行. 2009. 文系学生のための生物学教材の改良(4) 被子植物の蜜標(その2)蜜標の疑似紫外線カラー画像. 東洋大学紀要 自然科学篇 53: 69-87. ISSN: 1346-8987, http://id.nii.ac.jp/1060/00006086

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This article is a significantly expanded version of a piece originally published in the following book.

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